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OEMトレーナーの仕様書を作るときに押さえるべき記載項目一覧

目次
はじめに:OEMトレーナーとは何か?
OEMトレーナーという言葉を初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。
OEM(Original Equipment Manufacturer)は、他社ブランド製品の設計・生産を受託するビジネスモデルのことです。
トレーナーはアパレル分野での「トレーニングウェア」「スウェットシャツ」などを指すことが一般的ですが、本記事ではアパレル製品の一種としてのトレーナーを想定しています。
OEMでトレーナーを作る場合、発注側(バイヤー)と受注側(サプライヤー)間で正確な意図と要望の齟齬なく製品化するために「仕様書」を作成することが不可欠です。
仕様書は、文字通り“製品の設計図”であり、良いものづくりの起点となります。
本記事では、現場で数々のOEM案件を経験してきた筆者の実体験を交え、OEMトレーナー仕様書に盛り込むべき必須事項と、その理由について深掘りします。
OEMトレーナー仕様書に記載すべき項目とは
OEM案件では、細部の決めごとの抜け漏れが、納期遅延や品質クレーム、不良在庫の山といったトラブルの初歩原因となります。
ここでは、製造現場目線で最低限・必須レベルの記載事項を列挙します。
1. 製品概要(デザイン・品番・企画意図)
最初に記載すべきは、製品の全体像、その目的やコンセプト、ターゲット層などです。
– 製品品番・名称
– シーズン(例:2024年秋冬)
– デザイン画やCAD図
– 企画意図(どんな顧客にどのような用途で使ってもらいたいか)
ここがふわっとしていると、現場の認識もあやふやなままになり、ミスマッチの製品につながる恐れがあります。
2. サイズスペック表
OEMトレーナーで絶対に外せないのが、サイズスペックです。
– 寸法(着丈、身幅、肩幅、袖丈など)
– 各部位の測定基準点
– 号数展開ごとのサイズ
最近ではデジタルパターンを共有するケースが増えていますが、現場では一目でチェックできる一覧表も依然求められています。
3. 生地・副資材の詳細指定
原材料の品質・仕様も重要です。
– メイン生地の種類、番手、組成(例:裏毛コットン100%、T/C天竺、混率、目付)
– 副資材(リブ、糸、ボタン、ファスナーなど)
– 生地サンプルや色番の添付
特にサステナビリティや環境配慮の観点から、近年は「再生素材○%以上」など指定されるケースも増えています。
この部分を曖昧にすると、製品の風合いやコストに影響が直結します。
4. カラー展開・色指定方法
OEM製品は色バリエーションもビジネスの命です。
「白」「黒」などの表記ではなく、できるだけ具体的な指定が重要です。
– カラーナンバー(Pantone、DIC、C/#など)
– 生地見本(色見本帳、ラボダイの添付)
– 染色方法(先染、後染、製品染め)
発注側・受注側・素材メーカーの三者ですべてが同じ色認識をしているのか、繰り返し確認するのが肝心です。
5. 加工・縫製仕様
昭和から続く工場の「クセ」や「流派」によるやり方違いが顕著に出やすいのが縫製仕様です。
– ミシンの種類、縫い糸の番手、ピッチ指定
– 特殊縫製(フラットシーマ、二本針カバー、袋縫い等)
– 裾・袖・襟のリブ仕様
– オーバーロック有無
– 縫い代(割り、押さえ、ロック幅)
日本国内では“きれいめ”仕上げを好む傾向が根強く、コストや生産地にあわせた柔軟な規定・妥協点も重要となります。
6. 表示ネーム・ラベル・タグ類
商品のブランドネーム、副資材の配置、洗濯表示タグなど、コンプライアンス対応も含めた明示が必要です。
– ネームタグの種類・位置・デザイン(ブランドロゴネーム、品質表示ネームなど)
– 取り付け方法(縫い付け、熱圧着など)
– 洗濯ラベルの記載内容(家庭用品品質表示法対応)
OEM先によって印字ミスやタグ忘れなどが多発しやすいので、明確な記載・サンプルの提示が有効です。
7. 検品基準・品質要件
「基準」は最もトラブルになりやすい要素です。
– 検針・異物混入対策
– 汚れ・キズ・ピリング基準
– 寸法公差(±cm)
– 色落ち・移染・摩擦試験(試験方法・基準値も明記)
品質クレームは数値で客観的基準を作り、事前に合意を取ることが必須です。
8. 納期・納品形態
完成品の納品スケジュール・形態や輸送方法も必ず記載します。
– 試作サンプル・量産納期
– ダンボール梱包単位、梱包資材、納品ラベル内容
– 納品先住所・時間帯指定・配送業者指定
– 輸送時の指定条件(たたみ方、防水対策など)
納期睨みで現場との信頼関係を築けるかどうか分かれ道となります。
9. その他特記事項・注意事項
商標・知的財産対応、リピート生産時の注意点、海外規格(REACH、CPSIA等)など、個別事項も追記スペースを設けるのが推奨されます。
製造現場での「抜け漏れ」事例と教訓
ここで、実際にOEM仕様書が不十分だったために起きたトラブル事例を紹介します。
筆者が長年バイヤー・サプライヤー両方の立場で見てきた典型例です。
曖昧な“色指定”で全量再生産コスト発生
「ネイビー」を指定し、色見本番号も添付、「この通りに染めて欲しい」と依頼。
しかしサプライヤー側では「現場にある既存カラー材料で近似色でいける」と独断。
量産後に仕上がった製品が「理想より暗い」とNG判定、すべてやり直し。
社内外に大きな損失とブランドイメージ毀損を発生させてしまいました。
教訓:色指定は“番号”と“見本布”ダブルで提出、量産前に必ずラボサンプル確認後承認の手順を定めておきましょう。
サイズ基準の“測り方”の違いで返品の山
サイズ表を渡して量産したところ、「肩幅の起点」定義が発注・受注で違い、全量リテイク。
測定基準点・測り方イラスト・動画を添付するだけで数千枚の返品を防げました。
教訓:サイズの定義・イラストも添えて、実測方法まで明確に指定することが重要です。
現場が求める仕様書作成の工夫と新潮流
“現物サンプル&動画”で意識合わせを図る
昭和文化の名残とデジタル時代のギャップが最も広がっているのが、現場の“伝達精度”です。
ベテラン世代ほど「口頭」「手書き指示」「ノリ」で通じがち、Z世代・D2Cバイヤーはクラウド・動画を駆使します。
必ず、物・図・動画の三点セットで仕様イメージを固めましょう。
DX化:BOM管理・PLMツール導入事例
先進工場や大手アパレル企業では、BOM(部品表)やPLM(製品ライフサイクル管理)ツールでクラウド上に仕様書を登録・管理する流れが加速しています。
ドラスティックな昭和型“紙で回し、改版が錯綜”からの脱却が進んでいます。
– バージョン管理
– 変更履歴の追跡
– モバイル対応
などのメリットを享受しつつ、工場側でも積極的なシステム活用が進めばミスや伝言ゲームが激減します。
まとめ:製造業発展のために仕様書“道場破り”精神を
OEMトレーナー仕様書は、発注側・受注側の間の“翻訳”作業とも言えます。
担当者がそろぞれの当たり前基準をぶつけ合うだけでなく、一度自分の仕様書を第三者視点で読み直し、「どこまで具体的に伝わるか」「現場を迷わせず作れるか」を徹底検証する姿勢が求められます。
これまで昭和的“行間読め文化”が染み付いていた現場にも、ゆるぎないプロフェッショナリズムを定着させ、一歩進んだ“仕様書道場破り”のチャレンジ精神で、製造業の品質・信頼性向上に貢献していきましょう。
メーカー、バイヤー、サプライヤーすべての立場の方々に、この記事が現場力アップへ役立つ一助となることを願っています。
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