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JIS G 3101が示す一般構造用圧延鋼材の使い分け

目次
JIS G 3101とは何か?現場での基礎的知識
JIS G 3101は、一般構造用圧延鋼材(Rolled Steels for General Structure)に関する日本工業規格です。
この規格がカバーする鋼材は、建築物、橋梁、機械構造など幅広い現場で利用されており、私たち製造業従事者にとって非常に身近な存在です。
鋼材と聞くと「強度があればどれでも同じ」と思われがちですが、実際は現場の用途や要求特性に合わせて正しく使い分ける知識が必要です。
昭和から続く「とりあえずSS400」という文化も根強いですが、現代の多様なニーズに応えるためには、JIS G 3101を正しく理解し、最適な鋼材を選択・提案できる力が求められています。
この記事では、20年以上の現場経験を踏まえて、バイヤーやサプライヤーの視点も盛り込みながらJIS G 3101のポイントと実践的な使い分けについてわかりやすく解説します。
JIS G 3101が対象とする鋼材の種類
JIS G 3101で規定されている主な鋼材のグレードは、次の3つに大別されます。
- SS330
- SS400
- SS490
この「SS」は「Steel Structure(構造用鋼)」を意味し、続く数字は引張強さ(N/mm2)のおおよその下限値を表しています。
現場では「とりあえずSS400を指定」というケースが特に多いですが、実態としては各グレードに個性があり、用途によって使い分けることでコストダウンやトラブル回避につながるのです。
SS330の特徴と使いどころ
SS330は、比較的強度が低く、加工性に優れています。
曲げ加工や絞り加工、溶接など複雑な二次加工を行う部品に向いており、見かけの強度だけでなく「加工のしやすさ」が重視される現場で愛用されています。
ただし、近年は流通量が減少傾向にあり、調達リードタイムやコストがSS400と比較して若干上がる場合もあります。
必要以上の高強度を求めない部材かつ加工性が求められる場合、SS330の選定をバイヤーや設計担当者に提案することで、全体最適につながる場面が増えています。
SS400の特徴と現場での「汎用性」
SS400は、最も広く流通している汎用鋼材です。
その理由は、引張強さ・溶接性・加工性・価格・納期のバランスが非常に取れているためです。
あらゆる構造物や機械部品のベースとして「とにかく迷ったらSS400」とされた歴史があり、今も「安心・安定の選択肢」として支持され続けています。
ただし、現場で「何でもSS400」と指定し続けているのは、コスト最適化や材料在庫スリム化の観点では再考の余地があります。
強度が不要な部分にはSS330を、さらなる強度が必要な部位にはSS490を選ぶことで、無駄なく材料コストを抑える提案も可能になるのです。
SS490の特徴と近年のニーズ
近年注目が高まっているのが、SS490です。
高層ビルや大型橋梁など「より強い鋼材」が求められる分野では、SS490が指定されるケースが増えています。
引張強さが高いため、耐久性や耐荷重性を確実に確保したい設計に適しています。
一方で、加工性はSS400よりやや劣るため、施工性や溶接性に関しては注意が必要です。
設計変更やVE(Value Engineering:価値工学)活動で「この部分をSS490、ここはSS400」という使い分け提案が現場バイヤーや生産技術者に評価される流れは、今後ますます重要性を増すと考えられます。
JIS G 3101の圧延鋼材と他JIS規格鋼材との違い
JIS G 3101がカバーするのは「一般構造用」圧延鋼材です。
一方で、構造用鋼材にはこの他にも
- JIS G 3106(溶接構造用鋼材)
- JIS G 4051(構造用炭素鋼鋼材)
- JIS G 3131(熱間圧延軟鋼板)
など多種多様な規格が存在します。
その中で「JIS G 3101ならでは」の特徴は何かというと、比較的安価で取り回しがしやすく、溶接・切断・曲げ全てで平均点を確保できる「万能選手」である点です。
溶接構造用(JIS G 3106)は溶接性・靭性が重視されるため、造船や橋梁など安全度が高い構造体に指定されます。
一方、JIS G 3101はコストパフォーマンスと入手性を重視し、かつ中小規模の現場やアセンブリ部品などでその真価を発揮します。
バイヤーや調達担当者としては、設計要求に対しJISのどの規格を選ぶのかの眼利き力が非常に大切になります。
現場で「うまく使い分ける」ためのバイヤー・サプライヤー視点
1. 材料選定で重要となる設計要求との照合
設計部門から「SS400」と指定が来た場合も、その要求の本質を確認することが大切です。
- 強度は本当にSS400レベルが必要なのか?
- 加工や溶接が多い部位ではないか?
- 納期・コスト・サプライチェーンの安定供給性は?
これらを設計者とすり合わせ、必要な場面ではあえて「SS330」や「SS490」にリプレイスを提案することもバイヤー、調達の腕の見せ所です。
サプライヤーにとっても、用途を具体的に伝えることで最適な鋼材提案を受けやすくなり、パートナーシップの強化や品質安定にも寄与します。
2. 材料手配と在庫スリム化の最適化
グローバルサプライチェーンの不安定化や原料価格の乱高下が続く昨今、材料の安定調達や有効在庫の最適化はますます重要です。
特にJIS G 3101材は流通量が多い反面、「どれも同じ」に見えてしまいやすく、在庫のダブつきを生みやすい傾向があります。
一部の用途でSS490にシフトしたり、逆に安価なSS330を有効活用したりすることで、全体の在庫バランスを平準化し、トータルコスト削減につなげる事例が現場では増えています。
難しいのは、なまじ「昭和の経験則」が根強いために、変化を嫌う傾向もある点です。
現場で実際にコスト低減やサプライチェーン強化につながった事例を示しながら、計画的な材料切替えを粘り強く推進することが重要となります。
JIS G 3101を取り巻く業界動向と今後の展望
製造業界では、近年「SDGs」や「カーボンニュートラル」が叫ばれる中、材料選定・調達の観点にも変化が生まれています。
サステナビリティ志向の高まりから
- 高強度材へのシフトで鋼材使用量の削減
- トレーサビリティ確保が容易なJIS規格採用拡大
- 材料歩留まりやリサイクル性重視
という新たなニーズも台頭しています。
また、データを活用した「材料最適化」や「需給予測の高度化」も、昭和型の現場技能からIT時代の生産現場へとシフトする大きな潮流です。
JIS G 3101材はアナログ現場で依然高いシェアを占めつつも、こうしたデジタル革新と現場知管理(ナレッジマネジメント)の架け橋となる素材でもあります。
まとめ:現場目線で「選ばれる」バイヤー・サプライヤーになるために
JIS G 3101がカバーする一般構造用圧延鋼材は、古くから日本のものづくりを支えてきた「主役級の材料」です。
しかし、その正しい使い分けや業界動向の理解は、変化の時代においてこそ現場力および調達・供給力の差異化ポイントとなります。
単なる「SS400至上主義」から脱却し、設計要求や現場ニーズに最適な材料を選定・提案できる知見を磨くことが、製造業バイヤー・サプライヤー両方に強く求められています。
知識と経験、そして「現場を見る目」を武器に、これからの日本のものづくりの進化に貢献していきましょう。