投稿日:2025年7月30日

JISB99601Ed4NFPA79の解説IOとマンマシンインターフェイス予測できるトラブル原因対策機械装置のリスクアセスメント表現

はじめに

JISB9960-1 Ed.4やNFPA79は、製造業における機械装置の安全性・信頼性を確保するためのグローバルスタンダードです。

2020年代に入り、これら規格の重要性はさらに増しています。

その背景には、工場自動化の進展による人と機械の接点の急増、グローバル展開の加速、そして安全意識の高まりがあります。

本記事では、IO(入力出力)とマンマシンインターフェイス(HMI)に焦点を当て、現場で起こりがちなトラブルとその予防策、そしてリスクアセスメントの実践的な表現方法までを、現場目線でわかりやすく解説します。

バイヤー・サプライヤー双方に役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

JISB9960-1 Ed.4およびNFPA79とは

JISB9960-1 Ed.4の概要

JISB9960-1 Ed.4は、機械類の電気装置設計・構築におけるJIS規格の最新版です。

ISO 13849やIEC60204-1をベースとし、日本国内工場の標準と位置付けられています。

特に以下のポイントが強化されています。

– 安全回路設計と機能安全(リレー冗長化、カテゴリ設計、PFHd計算等)
– IO機器(センサ・アクチュエータ等)やHMIに関する最新の安全要求事項
– 欧州CEや米国NFPAとの相互互換性

NFPA79の概要

NFPA79は北米市場向けの「産業機械の電気的安全規格」です。

特にコントロールパネル内の設計や、IOの絶縁・配線・信号保護、緊急停止(HMI含む)の構成に重点を置いています。

海外進出メーカーにとっては、この規格への準拠が不可欠となっています。

IO設計とHMI(マンマシンインターフェイス)における注意点

昭和版設計と最新設計の差異

従来の昭和型アナログ設計では、IOには大きな余裕(想定外の誤配線対策や予備接点の多用)、HMIにはラベルシールで手書き追記、電気図面は紙のみ…といったカルチャーが根強く残っています。

一方で近年は、全ての信号と接点に明確な「機能定義」を与え、異常動作時の安全リレー切替やログ取得(HMI経由)の仕組みを義務付ける設計へと進化しています。

これによってトラブルを未然に防ぐサイクルが強化されています。

IO周りで予測されるトラブル事例

– センサ未検出、ノイズ混入による誤検出
– 入力端子のルーズな管理によるショート
– 出力機器過負荷によるコントローラ故障
– GNDループ等アース不良
– メーカーミックス時の信号レベル不一致

これらは一点でも発生すると、生産ライン停止、品質不良、長期ダウンタイムにつながる深刻な要因です。

HMIで想定される人為的リスク

– 操作パネルの誤操作(非常停止と通常停止の混同など)
– 多言語切り替え時の誤表示
– シーケンス異常発生時のアラート遅延
– 操作履歴の記録抜け/消失

特に自動化が進み現場の多能工化が進展するほど、こうしたヒューマンファクター由来のトラブルが顕在化します。

トラブル予兆の検知と対策

予知保全への第一歩–IOモニタリング

近年は、PLCやIIoT端末でIOステータスの常時モニタリングが一般的となりました。

デジタル信号の異常波形検地や、入力頻度の統計分析により「普段と違う」を即時検出できる仕掛けが各社導入されています。

たとえばセンサ信号のエラー頻度が僅かに増えた場合、その回線の物理チェックや端子台の増し締めを自動指示する、といった定型運用が可能です。

これは、アナログな「音を聞いて異常を見つける」職人技から、データドリブンな予兆検知への進化でもあります。

HMIを活用したトラブルシューティング支援

HMIにはメッセージ表示・履歴記録などさまざまなトラブルヘルプ機能があります。

トラブル発生時に、作業員自身で「何が」「どこで」「いつ起きたか」をその場で確認できる仕組みによって、現場レベルの初期対応力が向上しています。

また、アラートレベル・警告点灯・対応手順のマニュアル連携など、管理職や保全担当者との連携を効率化する設計がスタンダードです。

リスクアセスメントとその表現の実例

リスクアセスメントの基本ステップ

1. 危険源の洗い出し(例:IOの異常検知不可、操作ミス等)
2. 危険イベントと発生確率・影響度をスコア評価
3. リスク低減策の検討(設計、設備、マニュアルによる対策)
4. 対策の有効性レビューと継続的改善

表現方法は、簡易なマトリクス(発生頻度×影響度)をエクセル等で可視化するのが定番です。

ポイントは「現場で実際に起こる具体的な状況」を用いて表現し、対策前後の変化を評価することです。

リスクアセスメントの現場表現例

| 危険源 | 危険イベント | 発生確率 | 影響度 | リスク順位 | 対策例 | 改善後リスク |
|—————-|————————|——–|——–|———|————————————————|———-|
| IO入力誤接続 | 誤作動でライン停止 | 2 | 4 | 高 | 端子台で色分け/機能記号表示、誤挿入防止シール | 低 |
| HMI誤表示 | 誤警告で緊急停止 | 3 | 3 | 中 | 操作権限によるメニュー表示切替、事前警告メッセージ表示 | 低 |
| センサノイズ混入 | 異常検知で停止し品質不良 | 3 | 5 | 非常に高 | シールド線、外部ノイズモニタ設置、ノイズ検知時のアラート | 中 |

このように現場の日々の運用をベースに具体的な「なぜ、そのリスクが起きるのか」に迫ることが、アナログ職人文化にも評価されるポイントです。

昭和的アナログ文化が根付く現場で求められる新しい価値観

平成・令和のいまも、現場には「昔ながらのやり方」「口伝・職人技術」への信頼が色濃く残っています。

しかし、グローバル規格では「データで語る安全、設計根拠を示すエビデンス」が不可欠です。

リスクアセスメント表現も、「懸念を紙に書くだけ」から、対策後の効果測定・可視化へと進化させる必要があります。

たとえば、
– ベテラン保全員の「経験値」をマニュアルやデータベースに落とし込む
– 予兆保全と連動させて、異常傾向を早期共有できるサイクルを作る
– 改善の度合いを“数値”や“スコア”で見せる

こうしたアップデートこそが、令和時代の強い製造現場の土台なのです。

バイヤーやサプライヤーが知っておきたい動向・ポイント

バイヤー視点での注意点

– 独自仕様での要求はリスク増大
– メーカーミックス時のIO/HMI整合性チェックが必須
– 品質監査・安全監査でリスクアセスメント手法の現代化が問われる

サプライヤー視点での対応策

– JIS/NFPA対応実績や手順書を用意して安心感を伝える
– IO配線・設計思想・HMIガイダンスに「コモンセンス化」を
– 技術伝承・トラブル記録を独自の知見としてバイヤーと共有する

相手の立場—「バイヤーはどんなリスクを恐れるか」「逆にサプライヤーはどこで詰まりやすいか」といった“相互の視点”を持つことが、商流の信頼構築のカギです。

まとめ

JISB9960-1 Ed.4およびNFPA79の要求水準は年々上昇し、IOおよびHMI設計の現場品質がグローバルで問われています。

昭和型のアナログ文化も大切にしながら、「現場経験」と「データ・規格・リスクアセスメント」を高次元で融合させることが、これからの製造業における競争力のポイントです。

この記事が、現場の皆さま、これからバイヤー・サプライヤーを志す皆さまにとって、確かなヒントとなれば幸いです。

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