投稿日:2025年6月5日

潜水艦の自律走行、バッテリー、推進装置に関する共同開発のアプローチ

はじめに:製造業と異分野連携がもたらす新時代

日本の製造業は長年にわたり、工場の現場力と職人技を武器に世界に名を轟かせてきました。

しかし今、AIやIoT、カーボンニュートラルといった新技術の潮流が押し寄せています。

その最前線に立っているのが、水中ロボットや潜水艦分野の自律走行技術、バッテリー、推進装置の共同開発です。

この分野は従来のアナログな製造現場とは全く異なる思考が求められますが、日本の「モノづくりDNA」と新たなラテラルシンキングの融合が新地平を切り開こうとしています。

この記事では、調達・設計・開発・生産・品質管理など現場目線の知見を活かしつつ、共同開発における実践的アプローチとその最新動向を紐解きます。

バイヤー志望者や、サプライヤーとしてバイヤーの眼差しを学びたい方にも、現状打破のヒントを提供します。

潜水艦の自律走行技術――新時代の要求と壁

アナログ分野からデジタル・AI連携への進化

自律走行型潜水艦(AUV、UUV)は、従来の有人運用とは異なり「自分で考え、判断し、目標を達成するロボット」です。

これには高度なセンシング、自己位置推定、航路最適化など、多様な技術が深く結合する必要があります。

アナログな製造業界では「経験や勘」に頼る文化が根強く残っていますが、自律制御の分野では確実なデータ、正確な実装、想定外リスクに柔軟に対応する思考力が不可欠です。

共同開発における現場目線の課題

デジタル領域の最先端技術を、アナログな製造プロセスや生産現場で取り入れるには、部門間・企業間を超えた情報共有と合意形成がカギです。

開発者・現場作業者・調達担当・品質保証・バイヤーが一体となり「どこに何が必要か」「リスクにどう備えるか」、時には見落としがちな“人間の動き”までも因数分解する視点が必要です。

現場目線での“作りやすさ”“検証しやすさ”の追求と、最先端AI技術者の設計思想との間でギャップが生じやすいため、共通言語づくりが非常に重要になります。

バッテリー:安全性と持続性の両立がコア課題

バッテリー選定・設計の最新トレンド

かつては鉛蓄電池やニッカドなど限られた選択肢しかなかった潜水艦用バッテリーですが、今やリチウムイオン・全固体・フロー電池など、多様な選択肢があります。

特に自律運用では「長時間稼働」「急な負荷変動」「耐圧・耐水没」といった厳しい条件が課せられるため、単純なエネルギー密度以外にも

– 発熱リスク
– メンテナンス性
– 異常検知アルゴリズム

が極めて重要になります。

現場視点で見る、サプライヤー選定のポイント

バイヤーがバッテリーサプライヤーを選ぶ際にもっとも重視するのは、単なる価格や供給能力だけではありません。

現場でのバッテリー交換の容易さ、万が一の障害時のトレーサビリティ、5年10年先の技術ロードマップまで含めた「継続的な価値創出」の観点が問われます。

サプライヤー側にとっては、初期コスト競争に血眼になるのではなく、現場でどんなトラブルが起きているのか、ユーザーニーズを粘り強く吸い上げた提案が決定打となります。

推進装置のイノベーション:静音・効率・冗長性を両立する技術

現場ニーズをどう開発に落とし込むか

推進装置(プロペラ・ポンプジェット等)は、自律潜水艦の「心臓部」と言っても過言ではありません。

アクチュエーターの滑らかな制御、突発的な漂流対応、運用現場の狭隘な空間での保守性――これらを同時に満たす構造設計・材料選定が極めて重要です。

昭和の「強度最優先」設計思想から一歩進み、マルチファンクション(多機能)・冗長設計・AIによる障害検知の組み合わせが不可欠となっています。

デザインレビューと現場フィードバックの徹底

推進装置は設計部門と生産現場の思考が食い違いやすい箇所です。

工場サイドとしては、部品点数をいかに減らすか、組立と点検の手間をいかに小さくできるか、すべての設計案に「現場目線」でツッコミを入れることが重要です。

それを怠れば「設計者の理想」と「現場の現実」のギャップが大きくなり、結果的に大きなコスト増、致命的な初期トラブルを招きます。

共同開発成功の鍵は“組織横断”にある

バイヤー・エンジニア・品質保証の三位一体

古い業界ほど、「バイヤーはコストだけを見る」「エンジニアは夢を語る」「生産や品証は現実重視」と分断しがちです。

ですが自主型潜水艦開発の現場では、この三者の“知の循環”がプロジェクトの背骨となります。

バイヤーは、表舞台には出にくい現場の課題や落とし穴を丁寧にヒアリングすることで、価格競争軸プラスアルファの「協創型バリュー」を引き出せます。

エンジニアは、部門やサプライヤーに分かれてしまいがちなナレッジを“見える化”し、製品全体の最適化をリードします。

現場の製造・品質保証スタッフは、運用現場でしか見えない問題・知恵をリアルタイムで開発部門・協力会社にフィードバックし続けます。

情報の透明化とスピード感が生命線

共同開発プロジェクトでは、ITやクラウドを活用した設計データや進捗のリアルタイム共有が、意思決定とリスク管理を劇的に効率化します。

古い体質の製造業はFAXやExcelに頼りがちですが、この「見えない壁」が最終的な競争力の大きな障害になります。

特に自律走行潜水艦のような複雑なプロジェクトでは、トラブル発生の瞬間に全関係者が事実にアクセスし、素早く手を打つことが成否を分けます。

アナログ現場を活かした“現場主義DX”の推進

IoT化・標準化への正しいアプローチ

デジタル化・DX化が叫ばれて久しいですが、製造現場では「現場でしか分からない感覚」「人間の勘」が無視できません。

一気にデジタルシフトするのではなく、既存の現場ノウハウをデータ化し、その知見をAIや制御システムに「翻訳」する“現場主義DX”が有効です。

たとえば、経験豊富な作業者の異音診断を、振動センサーと連携したAIモデルで形式知化し、24時間自動監視体制の構築へとつなげる――こういった一歩一歩の積み重ねが、競争力の源となります。

現場主導のPDCAサイクルの重要性

バイヤーや調達の視点からも、現場による小さな改善活動(Kaizen)とデジタルツールの連携は、信頼できる品質づくり・コスト低減に直結します。

“現場の声”をデータで可視化し、その“なぜ?”を議論できる組織文化づくりが、現代のモノづくりでは重要な武器となります。

昭和的アナログ文化と、最先端のラテラルシンキング融合

伝統の強みをどう昇華させるか

日本の製造業に根づく「モノづくり精神」や「現場力」は、世界的にも通用する強力な武器ですが、現場の“当たり前”が時に硬直化を生むことも事実です。

伝統的なやり方をアップデートしながら、他業界の常識やデジタルの知見をどんどん取り込んでいく“ラテラルシンキング(横断的発想)”を積極的に取り入れることが、新しい競争地平を切り拓きます。

たとえば航空宇宙・ゲーム業界・通信分野の知見を取り入れることで、予想外のイノベーションや効率化策が生まれる可能性が広がります。

“守り”と“攻め”のバランスを意識する

伝統の強みを「護る」ためには、あえて“攻め”の姿勢、先例のないチャレンジや異質なアイデアを試すことが重要です。

潜水艦の自律走行技術・バッテリー・推進装置という難易度の高い開発こそ、既存の壁にとらわれない柔軟なチームワークと異分野横断型の知的コラボレーションが不可欠です。

まとめ:未来を創るための共同開発アプローチとは

潜水艦の自律走行、バッテリー、推進装置というテーマは、単なる技術競争ではありません。

現場・調達・設計・DXの専門性が一体化し、アナログとデジタルの壁を越えて「新しい価値」を生み出す現場主義の共同開発が、最後の一歩を決定づけます。

バイヤー志望者は「現場のリアルな課題」を肌で感じ取り、サプライヤーは「ユーザーの本音」に寄り添い、すべての関係者が“横のつながり”を最大限に活かすこと。

昭和の良さと最新テクノロジー、現場の知見とラテラルシンキングが絡み合い、日本の製造業が次の時代を切り拓く鍵となります。

現場から世界の舞台へ――モノづくりの新地平をともに歩もうではありませんか。

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