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日本品質を担保しながら輸入原価を下げるための共同改善活動

目次
はじめに:輸入原価低減と日本品質、その二律背反を乗り越える
製造業のグローバル化が加速度的に進む中、多くの企業が直面する最大の課題の一つは「輸入原価の削減」と「日本品質の維持」です。
一方でコスト低減圧力は年々強まるばかりですが、「安かろう、悪かろう」は絶対に許されないという現場のリアルもあります。
特にサプライチェーンの多様化が進み、新規海外サプライヤーの開拓や既存サプライヤーとのリレーション強化が求められる今、「原価を下げつつ品質を守る新しいアプローチ」が強く求められています。
本記事では、昭和時代からのものづくり観を踏襲しつつ、現代の最先端戦略として注目される「共同改善活動(Joint Kaizen)」について、実践現場での導入事例や成功のポイントも交えながら詳しく解説します。
共同改善活動とは何か?その本質と導入の背景
単なるコスト交渉から「共創」型の取り組みへ
これまでの調達現場では「価格交渉→合意→納入」のサイクルが基本でした。
しかし、近年ではサプライヤーとメーカーが「対等なパートナー」となり、工程や業務そのものを共同で見直す「共同改善(Joint Kaizen)」の考え方が広がってきています。
共同改善活動とは、発注者(バイヤー)と供給者(サプライヤー)が、知恵を出し合い現場に足を運び、ムダ・ムリ・ムラの排除や全行程の最適化を協力して推進する活動です。
単なる価格引き下げ要求ではなく、双方の強みを活用し「ウィンウィン」を目指す点に最大の特徴があります。
日本品質を死守するための武器として
日本のものづくりは、「品質」に関する妥協なき姿勢で世界をリードしてきました。
ですが海外サプライヤーとのビジネスでは、「コスト最優先→品質低下」というリスクが常につきまといます。
現地事情・文化・生産プロセスの違いによって、実際の現場では思わぬトラブルやロスも発生しやすいのです。
こうしたギャップを埋めながら「原価低減」と「日本品質」を両立する術が、「共同改善活動」なのです。
共同改善活動の具体的な進め方:現場目線のアプローチ
1.現場主義の徹底:自ら現地に足を運ぶ
日本品質を守るには、現場の「生の情報」に勝るものはありません。
バイヤーや品質管理担当者がサプライヤー現地工場に定点観測のように足繁く通い、一緒に改善点を抽出します。
例えば、「加工工程のロス率」「歩留まり率」「設備稼働率」などの現状把握と課題抽出です。
ここで大切なのは「決して指示命令型にならず、対話と協働を進める姿勢」です。
現地の作業者やマネージャーの声を聴き、モノの流れ・工程間のロス、在庫の山など、数字だけでなく“現場の空気感”もつかみ取ることがポイントです。
2.現場主体のカイゼンチーム結成
現場改善にはサプライヤー側の自主性が不可欠です。
「言われたからやる」の姿勢ではなく、「自分たちのものづくり現場をもっと良くしたい」という動機を引き出す必要があります。
バイヤーは、現地サプライヤーのリーダー・オペレーターを巻き込んだ改善チームを結成し、目標・KPIを明確に設定します。
例えば、「金型交換の段取り替え時間短縮」や「加工精度向上による不良削減」など、具体的なテーマを掲げ、小さな成功体験を生み出すことがポイントです。
3.5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)に始まり、工程標準化へ
日本流のものづくり現場改善は、まず“5S”から、と言われます。
これは海外でも有効です。5Sの徹底は、安全・コスト・品質を底上げする基本中の基本施策です。
5Sによる現場の「見える化」に続き、各工程の標準化(作業手順・作業標準書・検査標準など)を進めます。
標準化された現場は「誰がやっても一定品質が守れる」ので、属人的なミス・ムラが減り、コストダウンと品質安定の両立が実現しやすくなります。
4.イノベーションの原点は「現場の知恵」
原価低減の打ち手としては、カイゼン以外にもVA/VE(バリューアナリシス/バリューエンジニアリング)、異材代替、ローカルサプライヤー活用などがあります。
これらのアイデアは、現場のスタッフとのディスカッションから化学反応的に生まれることが多いです。
現場には、長年の「カン」や「伝統的なやり方」が根強く残っています。
「なぜそれをしているのか?」と素朴な疑問をぶつけ、時には「なぜなぜ分析」や実験・観察を重ねて、思い込みや無意識のムダに気づかせるのも重要な役割です。
5.PDCAサイクルの継続とフォローアップ
改善活動は「絵に描いた餅」になりがちです。
だからこそPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)の徹底、継続的なレビューが不可欠です。
月次・週次で進捗管理や「グッドプラクティス」の共有を行い、小さな成功事例の数を積み重ねることが、最終的に大きな成果へとつながります。
昭和から令和へ:アナログ業界でも根付く“現場力”と今後の潮流
昭和的アプローチと現代的手法の融合
日本製造業は、いわば“職人芸”と科学的管理が共存するユニークな進化を遂げてきました。
自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)など現代的な取り組みも進みつつありますが、現場常駐/泥臭いコミュニケーション/現物現場現認(3現主義)など、昭和流の現場力はいまでも大きな武器です。
本当の品質は、設計やカイゼン、コミュニケーションから生まれる——この“現場第一主義”がグローバル競争での差別化源泉になっています。
デジタル化と“人”の重要性
昨今は、IoTやAI活用による生産現場の可視化・自動化が進んでいます。
例えば、全工程にセンサーやモニターを付け工程データを取得し、改善活動のPDCAを可視化・高速化できる時代になっています。
しかし「最後の5mm」「ここぞの判断」には、やはり現場の経験やセンス、目利き——つまり“人”の力が不可欠です。
デジタルとアナログ(人力)を組み合わせることで、日本ならではの「匠の品質・緻密なものづくり」がグローバルでも競争優位を持つ理由となるのです。
成功事例:共同改善活動の現場から
ベトナムサプライヤーとのVA/VE事例
某大手自動車部品メーカーでは、ベトナムのサプライヤーと共同改善プロジェクトを立ち上げました。
年数回の現地訪問(現場カイゼンワークショップ)を通じて、加工手順の合理化や金型保守の未然防止、設備稼働率向上につなげました。
さらに材質や構造見直しによるVA/VE提案が現地スタッフから自発的に出されるようになり、結果的に原価5%低減、リードタイム20%短縮、かつ不良率を半減する成果を達成しました。
タイ工場での5S活動の全社展開
別のケースでは、タイの電子部品工場で「5S徹底推進プロジェクト」を実施。
現場作業者の中から5Sリーダーを育成し、現地流にカスタマイズしたルール策定で、作業効率・見える化を実現。最終的には現地経営陣も巻き込んだスピンオフ活動としてグループ全社に波及しました。
この活動では、日本的な細かさ・規律性に触れた現地スタッフが自信と誇りを持つようになり、離職防止・人材定着にも大きな効果を発揮しています。
バイヤーやサプライヤーが明日から実践できるポイント
今すぐできることリスト
– まず月1回でも現地工場へ足を運ぶ
– サプライヤーの現場リーダーと「日々困っていること」を雑談ベースでヒアリング
– 5S活動を一緒に始める
– 小さな改善を評価し、「ありがとう」を伝える
– 現場のやりがい・成果をメーカー側社内でも積極的に共有
これらはどれも「特別予算」や「専門技術」がなくても実践可能なアクションです。
まとめ:製造業の未来をつくるのは、現場の共創力
日本品質と原価低減は“二律背反”のように見えて、現場レベルでは必ずしもそうとは限りません。
現場発・現場巻き込みの共同改善を推進すれば、「日本品質を守ったまま輸入原価を大幅に下げる」ことは、決して夢物語ではないのです。
バイヤー・サプライヤー双方の信頼・共感を育みつつ、改善や挑戦に誇りを持てる現場づくりを続けていくことこそが、日本の製造業の持続的発展につながります。
これから工場現場や調達現場にかかわるすべての方に、「共同改善活動」を武器にグローバルで輝く明日を切り拓いていただければ幸いです。
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