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OEMパーカーのロット単価を下げるための“共同発注モデル”

目次
OEMパーカーのロット単価を下げるには?共同発注モデルの新常識
OEMパーカーの製造において、ロット単価の悩みは尽きません。
特に小ロット生産でのコスト高、バイヤー・調達担当者・サプライヤー双方の利益バランス、そして昭和 的なアナログ商習慣が根強く残る業界構造と向き合うことで、多くの工場・ビジネス現場で壁に直面しているのが実情です。
本記事では、20年以上の製造業経験を持つ筆者が、現場で養った知見とラテラルシンキングの視点で、“共同発注モデル”によるOEMパーカー製造コスト削減の秘訣を解説します。
なぜOEMパーカーのロット単価は高止まりするのか
生産背景に潜む「損益分岐点」の壁
OEMパーカーは、無地パーカーの製造先にブランドや企業独自のデザイン、刺繍やプリントを加えることで生まれます。
しかし、1デザインあたりの発注数が少ないと、生産ラインの段取り替えや材料費(生地ロス)、管理負担が相対的に大きくなるため、1枚あたりのコスト=ロット単価が上がるのです。
多くの縫製工場や生地工場は、一定数以上の注文(例:100枚、300枚、500枚)があって初めて原価割れしない価格を提示できます。
発注量が損益分岐点を下回る場合、追加で割増し手数料やサンプル費用が発生しやすく、バイヤーやスタートアップ、D2Cブランドの“スモールスタート”を阻む原因となっています。
業界特有の慣習とムダなコスト構造
製造業では今なお「電話・FAX中心のアナログ受発注」「旧来の系列一次取引」「製造ロット割りを最優先」「担当者の経験則頼り」という昭和流の商習慣が色濃く残っています。
これらの商習慣が無駄な中間マージンや、必要以上のリードタイム、コミュニケーションロスを生み、単価転嫁の原因となっています。
“共同発注モデル”とは何か?
本来のOEMは単独発注が基本
従来のOEM生産は、特定ブランドや企業単独による発注が基本です。
そのため、デザインごとに最低ロットの壁に突き当たり、その都度別々に材料手配・生産管理・輸送が走り、スケールメリットを享受できませんでした。
共同発注モデルが生む“スケールメリット革命”
共同発注モデルとは、複数のブランドや事業主が同一仕様(又は類似仕様)のパーカー生産を同一ロットとして一括発注する仕組みです。
Excel管理や関係者ネットワーク頼りの一時的な「相乗り生産」とは異なり、業界横断型のプラットフォームや、共同購買連携を用いて永続的かつ大規模に仕組化するのが特徴です。
例えば、10ブランドそれぞれ50枚のパーカーを“共同ロット”として500枚一括発注することで、生地仕入れ量や縫製ライン稼働効率を最大化し、1枚あたりのロット単価を大幅に下げることができます。
現場視点で見る共同発注のメリット
1. 材料コストの圧縮
大ロット共同発注では、生地メーカーからの一括買付け交渉力が高まります。
染色・仕上げ工程でも「色ブレ対策」「残反(余り生地)削減」が容易になり、原材料の無駄が減ることで全体のコストダウンを実現できます。
2. 生産効率と品質向上の好循環
同一アイテムをまとめて生産することで、ライン設計や段取り替え回数が減少します。
これは工場現場にとって最も喜ばしいことで、カイゼン活動に直結し人件費・光熱費の最適化=単価低減を生みます。
同時に、“稼ぎ頭ロット”として品質管理リソースを重点化できるため、不良率も低減します。
3. フル活用される自動化投資
近年、縫製・裁断・検品の各工程で自動化機器の導入が進んでいます。
しかし、実際は小ロット多品種では段取り替えに追われ、自動化設備の稼働率が思うように上がりません。
共同発注による大ロット連続生産は、設備稼働率向上=投資回収ペースアップにつながり、結果として“工場側の値下げ余力”増加につながります。
発注側&サプライヤー双方に広がる新市場の恩恵
バイヤー/購入側の変化とチャンス
共同発注は、小規模D2C、アパレル系スタートアップ、飲食・スポーツ・企業ユニフォーム担当まで、多様なプレイヤーにメリットがあります。
少数ロットであっても大口価格の享受が可能となり、新規ブランドやキャンペーンアイテム等の“挑戦的商品開発”も低リスクで進められます。
また、共同購買実績の蓄積=信用力として機能し、サプライヤー側から有利な交渉がしやすくなるケースも増えています。
サプライヤー/生産側の新しい収益力
受注側にとっても、以前は敬遠していた「小口分散発注」顧客へ、共同発注を前提にビジネス機会を広げることが可能です。
生産ラインの稼働調整が容易になり、ひとつの巨大案件に依存しない経営安定化、下請け体質脱却のヒントとなります。
OEM生産の効率化を通じ、海外工場偏重から国内地場工場とのパートナーシップ強化も見込めます。
現場・工場長が語る導入のリアルな課題とヒント
1. 品質保証と納期調整でつまずかないために
一つのロットで複数ブランドが混在する共同発注は、タグ・刺繍違い等のカスタマイズ対応で“仕分けミスリスク”が生じやすくなります。
そのため、現場現物によるダブルチェック体制や「バーコード管理」、「電子工程表」など、アナログとデジタルの融合管理体制が不可欠です。
また、納期調整も自社都合だけで進めず、“他プレイヤーとの取り決め”が必要になるため、ルール作りと合意形成ノウハウも今後重要性が高まります。
2. 伝統的な業界慣習と“スマート調達”のギャップ解消
特に老舗サプライヤーや歴史あるメーカーは、「知らないブランドと共同発注…?」という心理的ハードルがあります。
しかし、クラウド型の受発注ツール導入・オンラインコミュニティ形成などにより、業界横断で信頼性が担保された環境が整い始めています。
一歩進んだ発注担当者や工場長は「異業種間シナジー」を理解し、マッチングの“繋ぎ役”として価値を発揮し始めています。
昭和アナログ業界から令和デジタル業界へ、「部分最適」から「全体最適」へ
製造業界は長らく“部分最適”を追い続けてきました。
しかし今後は、受発注プレイヤーの垣根を越えた「全体最適」=共同発注のスキーム導入によって、「スケールの経済」「脱・昭和」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という新しい地平線へと歩み始める重要な局面に来ています。
メーカー、バイヤー、調達・購買、サプライヤーが同じテーブルで「適正なコストと品質を追求する」仕組みを構築すれば、結果的に関係者全員のQCD(品質・コスト・納期)が高いレベルでバランスし、新規参入やイノベーションの起点にもなり得ます。
まとめ:OEMパーカー“共同発注”はコスト力と業界未来を切り開く
OEMパーカーのロット単価を下げるための共同発注モデルには、「今までの常識を覆す力」があります。
単なる値引き交渉とは異なり、業界の垣根を越え多様な立場のプレイヤー同士が“協力”し合うことで、本来の適正価格・高品質と利益最大化、そしてサステナブルな製造体制を実現します。
まだ発展途上の仕組みではありますが、現場マインドと業界横断型イノベーションの両輪を活かし、新時代の“スマート調達・ものづくり”を共に育てていきましょう。
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