OEMで製造する防水・耐久ペット用品の開発ポイント

はじめに：OEMで製造される防水・耐久ペット用品の市場背景

近年、ペット用品市場は右肩上がりの成長を続けています。

特に、アウトドアや多様なライフスタイルに対応した「防水・耐久」性能を持つペット用品への需要が高まっています。

市場のニーズを的確に捉え、他社との差別化を図るためには、OEM（相手先ブランドによる製造）による製品開発が非常に有効です。

この分野では多様な企業が参入していますが、「昭和的なアナログ文化」も根強いため、現場目線の実践的な開発ノウハウや業界動向の理解が、競争力ある製品づくりには不可欠です。

この記事では、実際の製造現場経験に基づくOEM開発のポイントや考え方を詳しく解説し、バイヤーやサプライヤーの立場からも役立つ情報をお届けします。

防水・耐久ペット用品市場の動向とトレンド

消費者ニーズの変化とペット関連市場の拡大

ペット用品市場は、単に「犬猫用のグッズ」という枠を超え、飼い主の価値観が多様化しています。

アウトドアや旅行シーンでは汚れや水濡れに強い「防水性」が、また長期使用や激しい動きにも耐える「耐久性」が求められるアイテムの選定基準になっています。

コロナ禍以降のペットブームに加え、少子高齢化社会での“ペット＝家族”という価値観の高まりが、これら高機能志向を一層強めています。

OEM開発の拡大と外部パートナー活用の加速

自社ブランドで新カテゴリー製品を立ち上げる際、OEM委託という選択肢は大変有効です。

なぜなら、自社で全て設計・生産するのはコストもリスクも高く、業界に精通した信頼あるサプライヤーと手を組むことで、スピーディーかつ適正コストで市場投入を実現できるためです。

ただし、旧態依然の業界体質や、品質要求・開発スピードへの温度差などOEMならではの課題も多いため、設計～生産に至る各工程で「現場目線の落とし穴」を把握しておくことは不可欠です。

OEMによる防水・耐久ペット用品開発の基本フロー

1. ターゲット顧客・利用シーンの明確化

OEM開発において失敗しがちな第一のポイントは「誰に、どんな利用シーンで使ってもらうか」を曖昧にしたまま先に進めてしまうことです。

防水・耐久という機能は目的ではなく手段です。

求められる性能レベルは、「散歩用なのか」「車でも使うのか」「キャンプなどアウトドアにも対応するのか」といった具体的な使われ方から逆算する必要があります。

ペルソナ（典型的な顧客像）を設定し、「どんな困りごとをどう解決するか」まで社内外で共通認識を作ることが、後々のトラブル回避や製品の差別化に直結します。

2. 必要な性能要件・規格の定義

「想定していた耐水圧では不十分だった」「生地が思ったよりすぐ擦り切れる」等は、品質トラブルの典型例です。

OEM開発の初期段階で、必ず以下のような具体的な性能指標・規格を定めるべきです。

– 防水性能例：JIS規格での耐水圧試験で○mm以上
– 耐久性能例：擦過試験で○回以上クリア
– 構造例：縫製部にシームテープ処理必須
– 安全基準：生地やパーツの安全性（有害物質の未使用など）

こうした定量的・明確な指標を、開発・調達・品質保証部門含めて全体で共有すれば、「言った言わない」のリスクも減ります。

3. 最適なサプライヤー＆パートナーの選定

サプライヤー選定の際は、価格や納期だけでなく以下の観点も重視すべきです。

– 防水・耐久性素材の加工実績が豊富か
– クレーム時の対応力、サンプルワークの小回り
– 設計・開発段階からのフィードバック力
– 過去の品質データ（不良率・納期遵守率）
– 工場現場の改善体制（5Sやカイゼン活動）

いくらコスト重視でも、アフターフォローや技術相談に消極的な業者だと、開発中・量産時のトラブル増加やロス発生で結局コスト高になりがちです。

“品質・価格・納期”の三拍子を長期でバランス良く維持できるパートナー選びが重要です。

OEM生産における防水・耐久性の設計・素材選定ポイント

防水仕様のキモは「構造」と「素材の選択」

防水性が求められるペット用品でも、使用目的や価格帯によって適すべき技術は異なります。

たとえば、レインコートやキャリーバッグは「耐水圧」と「シーム処理」が肝です。

– 防水素材例：PVC（塩ビ）、TPUラミネート、ポリエステル織物へのコーティング
– シーム処理：縫い目を含めた熱圧着テープやシーリング

特に、激しい雨や短時間での利用ならば安価な防水（撥水）素材で十分なこともありますが、「完全防水」や水洗い前提の商品は溶着や特殊コーティングが必須です。

現場目線で大切なのは、「原価だけでなく、量産時の安定度や作業難度」も必ず確認することです。

例えば、防水シームの貼付作業は熟練スタッフでなければ品質ばらつきが激しく、歩留まり悪化の原因となることも多いです。

耐久性設計の落とし穴：現場あるある事例

「耐久」とは、単なる素材の強さだけでなく、使い方や環境によって大きく変わります。

例えば、犬のリードやハーネスでは、極端な力や擦れが特定の部分に集中しがちなので、「構造的な補強」や「ダブルステッチ」などの現場起点のノウハウが重要です。

また、布製品では「ほつれ防止」「端部の巻き込み」など、外観だけで選ぶと短期間でクレームは必至です。

サンプル段階の“机上の強度”だけでなく、「繰り返し洗濯テスト」「摩耗試験」など、現物使いの視点で徹底的に見極めをしましょう。

生産管理・品質保証面での注意点

初期流動管理を甘く見ない

OEMで良くあるのが、サンプルは素晴らしいのに量産でスペックダウンするパターンです。

これは、生産現場が小ロットの試作と全く同じ条件で連続生産できるわけではないためです。

特に防水・耐久アイテムは、「1個1個人が仕上げる」部分が多いため、作業の標準化・指導・工程間のバラツキ抑制（初期流動管理）が成功のカギです。

立上げ時は、作業手順書やチェックリスト、現場教育を何度も繰り返し、初物の不良流出を徹底的に抑える体勢が必要です。

不良品・クレーム時の迅速なトータル対応

特にペット用品の場合、強度不足から“重大事故”につながるケースもあるため、クレーム発生時の現品回収・現場再現テスト・要因分析は納入者側としての責務です。

現場で見逃されがちなのが、単なる「返品・品質保証」にとどまらず、バイヤー担当者と連携して、次期製造分への設計変更やフィードバック機能まで一体運用することです。

OEMは“他社ブランドの看板”で売られるのですから、「顧客の代弁者」として徹底的な品質責任を意識しましょう。

バイヤー・サプライヤー双方が知るべき業界特有のポイント

昭和的な社風・現場力の活用と課題

ペット用品業界は、今なお中小零細のアパレル系縫製工場や地場産業が多く残る“昭和的アナログ現場”が大勢を占めています。

この社風は、「熟練の手仕上げ」や「顔の見える信頼関係」といった強みがある一方、生産管理やデータ化、工程可視化が遅れているため、トラブル時の責任所在が曖昧になりがちです。

今後はDX（デジタルトランスフォーメーション）やIoTを用いて、「工程の見える化」「品質データの収集・分析」ができる現場力の醸成が重要です。

下請け・外注先にも、データ提出・フィードバックを通じて、アナログ現場の“暗黙知”を“形式知”に転換し、全体最適化を進めていく視点が不可欠です。

失敗しないOEMパートナーシップのポイント

バイヤー側は「安かろう悪かろう」に陥らないよう、単なる仕入先でなく“共創パートナー”としての関係性を重視すべきです。

– 開発段階からサプライヤーの知見・実務ノウハウを積極的に取り入れる
– 量産後の改良やカスタマイズにも柔軟に応じる体制を作る
– 定期的な現場訪問・工程監査を通じ、リアルな情報交換を続ける

サプライヤー側からすると、仕様指示・設計意図の丁寧なヒアリングや小規模ロットへの短納期対応などで、「このバイヤーとは長く取引したい」と思わせる現場密着型の対応力が信頼獲得の近道です。

まとめ：今後の防水・耐久ペット用品OEM開発への提言

防水・耐久ペット用品のOEM開発は、設計・調達・生産管理・品質保証といった川上から川下まで広範で複雑な工程が関わります。

表面的なスペック追求だけでなく、「どんなシーンで、どんな想いで使われるか」という現場のリアルなニーズを徹底的に掘り下げること。

そして、サプライヤー・バイヤーが互いの立場・課題を理解し、安定的なコミュニケーションルートを維持することが、失敗しない製品開発のカギとなります。

今やアナログ現場の良さと最新IT/デジタル技術の融合が不可欠な時代。

業界全体のレベルアップを目指して、「現場目線×未来志向」でチャレンジし続けましょう。

OEMで新しい価値を持つペット用品を開発し、業界と共にさらなる進化を目指す皆さまの一助になれば幸いです。