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健康経営を相談されたとき最初に整理すべき論点

目次
健康経営を相談されたとき最初に整理すべき論点
はじめに:健康経営が製造業にもたらすインパクト
近年、多くの製造業企業で「健康経営」という言葉が注目されています。
これは単なる従業員の健康管理にとどまらず、企業の経営戦略と健康施策を一体化させて、継続的な企業価値向上を目指す新たなパラダイムです。
特に人手不足、高齢化、働き方改革、現場の省力化、多様化するワークスタイルなど、現代の製造業には多くの課題が山積みです。
その解決策の一つとして健康経営は位置付けられています。
しかし、「健康経営に取り組みましょう」とただ叫んだだけでは何も変わりません。
現場の人材を支え、ビジネス競争力を高めるために「どこから」「何を」整理し、戦略的に取り組むべきか、この記事ではその論点を現場目線で絞り込んでいきます。
なぜ今、製造業で健康経営なのか
昭和から令和へと時代が移り、製造業の現場環境は劇的に変化しています。
かつては「長時間働くこと」「多少の無理は現場の美徳」とされてきた時代。
しかし、今は健康被害・メンタル不調・安全リスク・離職率アップなどの「見えないコスト」が企業の成長を阻害する大きな要素となりました。
さらに、健康経営銘柄やESG投資など、外部評価も加速度的に高まっています。
従業員の健康は単なる福利厚生ではなく、「事業継続」「人材確保」「現場イノベーション」「コスト競争力」すべての根幹なのです。
ですから、調達購買や生産管理、品質管理、現場管理職の方々こそ、このテーマを他人事とせず、現場目線で価値や論点を考える必要があります。
最初に整理すべき”5つの論点”
1.「健康経営」で実現したい理想像とは何か
まず初めに、「うちの会社は健康経営を通じてどのような未来を描きたいのか」という“全体像”を経営・現場の視点で言語化しましょう。
例えば、「ラインスタッフの定着率を2倍にしたい」「現場のヒヤリハットや労災を半減したい」「疲労やストレス起因の不良率・手戻りを減らしたい」「サステナブルな雇用環境を実現したい」などです。
ここで重要なのは、健康を目的化せず、「会社としての経営上の目標」を数値やストーリーで可視化し、従業員と共有できる状態にすることです。
現場に根付くべき要素は、理想像からブレイクダウンして具体策へと落とし込むプロセスです。
2.現場特有の健康リスクを網羅的に把握できているか
管理職やバイヤーの立場から健康経営を語るとき、空論になりがちなのが「現場実態」とのギャップです。
たとえば、現場における作業負荷、暑さ・寒さ・騒音・屈曲姿勢・有害物質・夜勤・残業…それぞれの工程・職種ごとに健康リスクは異なります。
また、製造業ならではの「手待ち」「工程待ち」「繁閑の差」など、心理面・生活面への負荷も見逃せません。
このような現場特有のリスクを整理し、定性的・定量的データとして経営層も知ることがスタート地点です。
安全衛生委員会の報告やヒヤリハット情報、休職・離職の記録など、すでに社内にあるデータから一次情報を再発掘しましょう。
3.経営戦略や現場の目標と「健康経営」が連動しているか
多くの企業で見られるのが、「健康経営(人事部や産業保健)が単独で進めてしまい、現場マネジメントや事業戦略と乖離してしまう」パターンです。
たとえば、「残業抑制」や「有給取得推進」は事業納期や現場オペレーションと衝突しがちです。
逆に、「健康」を優先しすぎて生産性や納期を犠牲にすれば、当然顧客やサプライチェーン全体へ悪影響を及ぼします。
重要なのは、事業戦略・現場目標(コスト、納期、品質、効率など)と健康経営のKPIを「両立できる形」で設計することです。
調達担当やサプライヤー管理の観点でも、工程別や外部委託工程のリスクも考慮に含めましょう。
4.健康経営の「評価指標(KPI)」をどう設定・見直しするか
健康診断受診率、ストレスチェック結果の推移、メンタル休職者数、離職率、現場の安全指標(KYT実施率や労災発生率など)――これら従来型のKPIだけで十分でしょうか。
実際のところ、健康経営では「行動変容」や「組織風土の変化」も見ていく必要があります。
たとえば「現場からの改善提案件数」や「職場コミュニケーションの質」など、現代的なKPIへのシフトが肝心です。
また「把握する指標」と「アクションを起こすための指標」を区別し、具体的な施策へ結びつけましょう。
生産管理や品質管理のPDCAと同様、サイクルを回し、KPIの定期見直しが重要です。
5.現場への「伝え方」と「巻き込み方」――昭和型からの脱却
製造業の現場では「健康経営=福利厚生でしょ?」という印象がいまだに強い所も少なくありません。
ですが、健康経営を経営の一部とするには、現場のリーダーや中間層を本気で巻き込む“伝え方の技術”が不可欠です。
トップダウンだけでなく、現場のキーマンや若手・ベテラン層を融合させ、多様な声をあげてもらう仕掛け作りが有効です。
意識変革を起点にするなら、「安全衛生委員会の議事録」をオープンにする、「改善活動の成功事例」を可視化する、「現場ラジオ体操をチームビルディングへ発展させる」など、アナログな手法でも“現場の実感”を伴わせることが重要なのです。
管理職やバイヤーの立場では、サプライヤーの安全配慮義務や協力会社への啓発活動にも視野を広げましょう。
健康経営は「点」ではなく「線」と「面」で
健康経営という言葉は経営会議や大手の宣伝ですぐバズワード化しますが、現場目線で見れば、「断続的な取り組み」だけでは根づきません。
現場作業、管理部門、人事・健康管理、経営層がそれぞれの“持ち場”からつながり合い、企業全体で“線”となり、いずれ“面”へ広がっていく必要があります。
このためには、単発のイベントや健康施策だけでなく、「健康経営を通じて成し遂げたい現場改善と経営成長」が、日常的な目標・行動に組み込まれるべきです。
現場で活躍する皆さん自身が、「健康経営の目的」と「現実の悩み(人材不足・安全・工程改善)」をリンクさせて、腹落ちできる”問い直し”から始めましょう。
製造業バイヤー・サプライヤーの方へ
特に製造業のバイヤーやサプライヤーの皆さんは、健康経営が「商談・競争力の源泉」にもなりうる時代に来ています。
健康経営の取り組みは、優秀な人材の確保だけでなく、新規受注や大手企業との信頼構築、パートナー基準のクリアにも直接つながる要素です。
買う側・売る側双方が「健全な現場」「持続可能なフォーマット」を共通言語とし、業界全体の“質の底上げ”につなげていく――バイヤー目線での企画書や提案の視点にも、この健康経営の流れをぜひ盛り込みましょう。
まとめ:健康経営は現場起点の”経営イノベーション”である
「健康経営」は単なる新しい福利厚生の延長ではありません。
従業員の心身の健康こそが生産性・品質・安全・企業価値の源泉であり、それをどう統合的に高めるかという“経営のど真ん中”の問いです。
そのために最初に整理すべき論点は、理想像の明確化、現場リスクの可視化、戦略との連動、KPI設定・見直し、そして現場巻き込みの仕掛けと伝え方です。
昭和から続く価値観やアナログな仕組みを知る方ほど、次世代型の健康経営を現場でドライブする原動力となるはずです。
ものづくりには「人」が不可欠。
この時代だからこそ、“人を大事にする経営”をビジネスの競争力へと昇華させ、一緒に、次の製造業の地平線を開拓していきましょう。