- お役立ち記事
- 医療機器・ヘルスケア機器開発のポイントとその事例
医療機器・ヘルスケア機器開発のポイントとその事例

目次
はじめに:医療機器・ヘルスケア機器開発が求められる背景
医療機器やヘルスケア機器の市場は、世界的な高齢化や健康志向の高まりにより、年々大きく成長しています。
他産業と比べても安全性規制が非常に厳しく、高い品質と確実なトレーサビリティが必須となるため、開発・製造現場では独自の工夫や技術対応が欠かせません。
現場の職人技や昭和のアナログな慣習が色濃く残る日本の製造業ですが、医療・ヘルスケア分野ではグローバル基準への適合や新技術の導入も避けて通れません。
この記事では、製造業で培った経験と現場目線を交えて、医療機器・ヘルスケア機器の開発における重要ポイントと、実際の取組事例を解説します。
バイヤーや調達担当の方、サプライヤーとして医療分野に参入したい方など、現場で実践できるノウハウと最新トレンドも丁寧にお伝えします。
医療機器開発の特徴と業界動向
少量多品種・高信頼性が求められる医療業界
自動車や家電業界と異なり、医療機器は患者一人ひとりの症状や体型に合わせてカスタマイズする必要がある場合が多いです。
また、万が一にも命に関わる重大な事故につながるため、普段はあたり前のように使われるボルト1本にまで、なぜこの素材を選ぶのか・なぜこの工程が必要なのか…等の“理由付け”が厳密に求められます。
現場では 5Sやカイゼンといった日本ならではの習慣も根付いていますが、近年はISO13485、QMS、GMPといった国際的な品質基準への対応がますます重要となっています。
デジタル化・DX化が進む一方で残る“昭和的”体質
AIやIoT、データ連携など最新のデジタル技術の活用が求められる一方で、多くの現場では紙帳票の手書き管理や現場慣習に頼る「人ベース」の運用も未だ根強く残っています。
医療機器の場合、“規格”や“法的根拠”があいまいなものは認められず、現場の暗黙知や過去の経験則も重要な意味を持ちます。
バイヤーや調達担当は、新しい技術や手法だけでなく、現場のベテランが持つノウハウをどのように形式知化・継承するかが大きなポイントとなります。
医療機器・ヘルスケア機器開発の重要ポイント
1. 製品開発段階でのポイント
医療機器の開発現場では、「設計–試作–評価–量産」の各フェーズで何度も現場とのすり合わせが必要です。
医師・看護師・技師などユーザーの意見を徹底的にヒアリングし、使用シーンの“リアル”を把握することが、現場で本当に使えるモノづくりにつながります。
さらに、設計や材質選定の段階で法規制(薬機法・RoHS・REACH等)を必ず確認し、後戻りの手直しややり直しを極力防ぐ体制づくりが必要です。
試作品では、現場医療職の本音や課題を「見える化」して吸い上げ、使い勝手・安全性・清掃性・滅菌対応等を早期にクリアすることがリスク削減の肝となります。
2. 工場現場・生産管理での改善ポイント
医療機器だからといって、全てを「特別扱い」した生産体制にするのではなく、既存の生産管理ノウハウや自働化技術をうまく活かすことが重要です。
一方で、部材ロットの管理、製造した部品や完成品の“誰が・いつ・どこで・どんな手順で”を確実に追えるよう、バーコードやQRコードによるトレーサビリティ強化が求められます。
加えて、現場従業員への教育・訓練の徹底、製造指示書や手順書の文書化、定期的な工場内監査など、地道な「愚直な管理」が品質リスク低減のカギになります。
3. 調達購買で押さえるべきポイント
医療機器の部材・材料調達では、コストだけでなく“安全保障”の観点が重要視されます。
例えば半導体やセンサ、化学材料などではグローバル供給リスク・納期遅延・サプライチェーン全体の監査体制の有無もバイヤーの評価指標となります。
さらに、サプライヤー選定では「仕様変更の管理」や「不具合発生時の初動対応力」など、現場で実際に困ったときに頼れるパートナー関係が重視されます。
購買部門は価格や納期交渉だけでなく、業界動向や規制変更、新たな調達リスクなどにもアンテナを張り、現場とサプライヤーの橋渡し役となる柔軟な発想が求められます。
昭和的アナログ現場に求められる“変わらない強み”と“変化すべき部分”
ベテランの“カン・コツ”は宝の山
医療機器づくりでは、QC7つ道具やカイゼン活動の積み重ねこそが、最終的な製品信頼性を大きく左右します。
現場熟練者の「やばい予兆を感じ取る力」や、工程異常を瞬時に察知する直感は、たとえDXが進んでも失いたくない日本の製造現場の財産です。
しかし、その暗黙知・匠の技をDXの力で“形式知化”し、後進育成やグローバル展開に耐えうるナレッジマネジメントへ進化させることも今後ますます大事になります。
品質文化とコミュニケーションの徹底を
医療機器分野では、現場従業員一人ひとりが「自分の作業が患者の命を預かっている」という強い意識を持つことが、形だけでなく本質的な品質・安全文化につながります。
立場や年齢、職種の垣根を越えて、設計・製造・調達・品質保証の「一体感」をどう作るか。
普段の朝礼やちょっとした困りごとの声掛け、現場リーダーによる率先垂範など、アナログ業界の温かみこそが“真のマニュアリズム”に大切な要素といえるでしょう。
実践事例:医療機器・ヘルスケア機器開発のリアル
事例1:現場医師と連携した新生児用医療機器開発
ある工場では、新生児治療用の経皮的酸素モニタの開発プロジェクトが立ち上がりました。
最初の設計段階から小児科医師、看護師、臨床工学技士との密な打ち合わせを実施し、実際のNICU(新生児集中治療室)の現場写真や動画を徹底収集。
使いやすさを最優先に、ボタンの位置や配線の取り回し、清掃やメンテの“しやすさ”など10回を超える仕様見直しを繰り返しました。
開発途中では、部品の供給遅延や厳しい品質試験基準クリアで難航しましたが、現場作業者の声をプロジェクトメンバーにタイムリーに届けることで迅速な対策ができ、最終的には「本当に現場で助かる機器」として高い評価を得ています。
事例2:IoT対応リハビリ機器の量産・品質保証体制の構築
ヘルスケア向けリハビリ機器メーカーでは、IoT対応型の新製品開発時、バーコードによる工程管理・製品追跡システムを新たに導入しました。
大量生産ではないものの、サブコンポーネントの仕様変更や基板部品の入手難といった昭和的な現場トラブルが相次ぎました。
それでも部門横断で対策プロジェクトを立ち上げ、現場リーダーの“現物現場主義”と調達バイヤーのグローバル調整力、品質管理部門の軸となるルール作りが功を奏し、工程滞留・不良発生を最小限に抑えることに成功しました。
おわりに:製造業の本質と新時代のものづくり
医療機器・ヘルスケア機器の開発・生産・調達は、単に“新しいこと”をやるだけでは成功しません。
昭和から受け継いできた現場の知恵や品質への誇りを土台としつつ、グローバル基準やデジタルの力でその価値を新たにアップデートする――これが日本の製造業にしかできない“本質的な強み”だと私は考えています。
調達、品質保証、設計、現場作業者、それぞれの立場で「顧客価値」「現場視点」「社会的責任」を問い続け、医療・ヘルスケアという社会インフラの進化に力を尽くしましょう。
未来のものづくりを担う皆さまへ――昭和も令和も、“現場力”で世界をリードし続ける日本製造業でありたいと願っています。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)