EMC指令適合のためのEN 61326－1：2013を元にしたEMC試験と技術文書作成のポイント

EMC指令適合の重要性

製造業において、EMC（Electromagnetic Compatibility、電磁両立性）指令への適合は製品の市場投入における重要な要素です。
特に欧州市場をターゲットにした製品において、EMC指令はCEマーキングを取得するための必須条件となります。
EMC指令に適合することで製品が電磁環境下で適切に作動すること、他の機器に妨害を与えないことが保証されます。
そこで、EMC指令に適合するための試験の中でも代表的なEN 61326－1：2013を使用した試験および技術文書の作成ポイントについて解説します。

EN 61326－1：2013の概要

EN 61326－1：2013は国際規格IEC 61326－1：2012を基にした欧州規格であり、測定機器、制御装置、実験室機器のEMC事項をカバーしています。
この規格では、機器が電磁妨害（EMI）をどの程度耐えられるか、また他の機器にどの程度電磁妨害を与えるかが明確に規定されています。
具体的には、EMI試験、EMS（電磁感受性）試験を実施し、規格に基づく合否判定を行います。

EMC試験の準備とポイント

試験環境の準備

EMC試験では、試験環境を適切に準備することが重要です。
試験は通常、ファラデーケージなどの専用の試験室で行われ、外部の電磁波による影響を排除します。
また、試験の再現性を高めるために正確な設定が必要です。
試験対象機器の動作モード、電源条件、接続端子の状態などを規格に基づいて設定します。

試験装置と機器の選定

EMC試験にはさまざまな装置を使用します。
例えば、伝導性妨害試験では、伝導性プローブやスイッチングネットワークを使用し、放射性妨害試験では、スペクトラムアナライザや電波暗室が必要です。
使用される測定機器が規格に適合しているかどうかを確認し、信頼性の高い測定結果を得ることが重要です。

試験データの収集と解析

試験実施後は、得られた測定データを迅速かつ正確に解析し、規格に基づく適合性判断を行います。
異常が見られた場合、試験環境や対象機器の状態を再確認し、原因を特定するための追加試験が求められることもあります。

技術文書作成のポイント

包括的な記録の収集

技術文書には、試験結果やその解析、試験機器の設定や試験環境の詳細を含む包括的な記録を収集することが求められます。
これにより、製品がEMC基準を満たしていることを証明し、第三者によるレビューや承認を容易にします。

試験結果の適切な解釈

技術文書の中で試験結果を報告する際は、単なるデータの羅列ではなく、結果の意義を明確に解釈し述べることが重要です。
たとえば、「許容範囲内」や「規格値を超える」といった記述を使用し、結果がどのように評価されるべきかを具体的に示します。

適合性証明の確保

技術文書は最終的に製品がEMC規格に適合していることを証明する目的を担っています。
このため、証拠となる文書や試験結果は漏れなく添付し、適合性の主張を立証する形で構成します。
このプロセスは製品の市場投入までのスムーズな進行をサポートします。

製造業でのEMC指令適合の実務的なアプローチ

EMC指令に適合するには、試験や文書作成を単なる義務として捉えるのではなく、製品の品質保証の一環と考える姿勢が重要です。
EMC試験で発見された問題を製品設計や生産プロセスにフィードバックし、再発防止策を講じることが製品品質の向上につながります。
また、EMC規格への適合は市場競争力を向上させるだけでなく、最終顧客に対して信頼性の高い製品を提供することも可能にします。

昭和からの脱却と業界の変革

多くの製造業現場において、長らく昭和時代のアナログ的な考え方が根強く残っています。
そのような環境下で新しい規格や試験にどう対応するかは難しい課題です。
しかし、時代の変化に対応し業界トレンドを捉えることで、競争力を維持し続けることが可能です。
システムの自動化、デジタル化を推進し、データに基づく意思決定を行うことで、より効率的な生産活動を実現できます。
また、EMC適合を製品の差別化ポイントとして捉え、積極的にメッセージングすることも効果的です。

まとめ

EMC指令への適合は製品が安全かつ信頼性の高い市場競争力を持つために欠かせない要素です。
EN 61326－1：2013を基にしたEMC試験とその技術文書の正確な作成は、その過程で得られる数多くの知見と共に、製品のクオリティを高めるための貴重な資源となります。
製造業における併せた改革と最新の基準への適応を通じ、業界全体の発展に貢献していくことが求められます。