投稿日:2025年9月9日

食品消耗品OEMで差別化するためのフレーバー・原料選定のポイント

はじめに:食品消耗品OEM市場の現状と差別化の重要性

食品消耗品のOEM(Original Equipment Manufacturer)は、年々その市場規模を拡大しています。
コンビニやスーパーのプライベートブランド商品、小売店限定の調味料や菓子、業務用の食料品は、国内外問わず多くがOEMとして生産されています。

しかし、この市場は類似商品が多く、他社との差別化が難しくなっていることも事実です。
特に“フレーバー(香味)や原料選定”は、消費者の購買意欲やリピート率を左右する大きな要素として注目されています。
昭和の時代には見た目や価格だけが重視されてきましたが、現代ではユニークな味や素材にこだわるメーカーが台頭し、競争はますます激化しています。

この記事では、20年以上もの間、製造業で現場マネジメントに携わった経験を踏まえて、
「差別化できるフレーバーや原料選定の本当のポイント」について、現場目線で解説していきます。

OEM食品のフレーバー・原料選定が求められる背景

消費者ニーズの多様化と健康志向の高まり

現代の消費者は、選択肢の広がりと情報の氾濫により、自分好みに商品を選び取る力が高まっています。
特に食品においては、「低糖質・低カロリー」「オーガニック原料」「アレルゲン不使用」や、「珍しいローカルフレーバー」など、多様化とともに嗜好性や健康志向も強まっています。

メーカーやバイヤーは、従来の人気フレーバーばかりに依存せず、差別化できる企画や、ストーリー性のある素材選定を迫られています。

サステナビリティの視点とESGの潮流

消費財の分野ではサステナビリティ(持続可能性)を意識する動きも広がっています。
特に欧米では「地産地消」や「フェアトレード」「アップサイクル素材」の採用が当たり前になりつつあり、日本でも徐々に浸透してきました。

OEMメーカーも調達調整時点から、こうしたトレーサビリティや社会的責任へ配慮が求められるようになっています。

OEM商談の本質:なぜ“フレーバー・原料選定”で差がつくのか?

品質の均一化と“見えない違い”の必要性

OEM商品では、複数のサプライヤーが同じような製品開発を進めがちです。
生産管理、品質保証の体制が一定レベルで求められる現代では「標準化=コモディティ化」が進行し、小手先の原価低減だけでは差別化しきれなくなっています。

従来型の「どこでも手に入る味」や「特別感の弱い素材」では、付加価値を訴求できません。
そこで重要となるのが、“知られざる地方素材”“意外性のあるフレーバー”“機能性訴求型原料”への挑戦です。

バイヤー視点:企画段階から勝負は始まっている

バイヤーが商品開発時に重視するのは、その商材が「自社ブランドの強化になるか」「目立つ特徴があるかどうか」です。
会議での根回し、稟議通過、委員会での提案評価――実際に現場で商談をまとめてきた経験上、企画の文脈に“ストーリー性”と“市場コンセプトとの合致”が不可欠でした。

例えば「南国〇〇県産のマンゴーを使ったピリ辛ディップ」「昆虫由来のプロテイン入り低糖質スナック」のように、原料選定時点からユニークな価値を生み出せるかがカギとなります。

差をつけるフレーバー選定の実践ポイント

1. 地域性×機能性の融合

オーソドックスな味に留まらず、日本全国・世界各地の地場素材を活用することで、商品開発にオリジナリティを加えることができます。
また、単なるご当地色だけでなく「腸活作用のある乳酸菌」「抗酸化作用を持つベリー類」など、機能性を加味したフレーバー設計も支持されています。

現場としては、サプライヤー探索時に農産地や地元加工業者との連携強化を図ること。
地元JA(農協)や行政とのネットワークを駆使し、「その地域だからできる味」「消費者の記憶に残るフレーバー」を設計していただきたいです。

2. マイクロトレンド×スピード対応

食品業界のトレンドは移ろいやすく、ヒットの波は短期間に集中します。
小さなブームをすぐにキャッチして商品化できるスピード感、これが差別化の実態です。

たとえば、アジアンエスニックや発酵食品、ビーガンスイーツといった“今しかない味”を、旬を逃さない短期開発でカタチにする力も求められています。
昭和的な「決まった味・決まった工程」志向から、開発・調達・生産のフレキシブルな連携体制構築にシフトしましょう。

3. 使用シーン提案と多用途性

「どう食べさせるか」「どんな場面で喜ばれるか」—フレーバー選定時には用途拡大のアプローチも有効です。
同じ味付けでも、「朝食用のヨーグルトに」「ヘルシーなサラダドレッシングに」「酒のおつまみとして」など、使用シーンごとに提案型の差別化を狙えます。

工場現場としても、充填ラインや包装規格をすばやく複数用途に切り替えられる柔軟さは、OEM案件受注拡大の大きな武器となります。

差別化を実現する原料選定の最重要ポイント

1. 安定供給と価格競争力の両立

希少原料はユニーク性を打ち出せますが、単価や調達リスクが高まります。
流行やSNS映えを追いすぎて現場で“いつも原料がない・価格が読めない”状況を招くと、顧客(バイヤー)からの信頼も失われます。

従って「数量ベースで供給可能か」「ロットごとの品質変動が少ないか」「不作時の代替原料は想定しているか」という“現場目線の見極め”が極めて大切です。

2. トレーサビリティと社会性の意識

消費者心理や社会的責任を考えると、「原料はどこから・誰が・どう作ったか」を明示できることが、信頼の源泉になります。
近年はバイヤー側も“GAP認証”“有機JAS”など厳格な原料証明を重視する傾向が強まっています。

現場としては受発注段階でのサプライチェーン再点検や、逆アプローチで「自社オリジナル原料開発」への投資も長期視点で検討すべき時代です。

3. コストだけで選ばない“安全・安心”重視

安価な中国産やASEAN産原料を安易に選ぶケースは多いですが、B2C向けのOEMなら「国産」「農薬不使用」など消費者メリットを事前に企画へ織り込むのが王道です。

品質管理部門、調達担当、製造現場が一体となり、「最小のコストで最大の安全・安心をどう実現するか」。
昭和の“現場合理化”発想からさらに一歩進めて、顧客に寄り添う原料管理を徹底してください。

昭和的アプローチからの脱却:組織横断型の開発体制を作る

セクショナリズムから協働への意識変革

(昔ながらの)「部門ごとに壁を作った縦割り体制」「仕入先との関係に胡坐(あぐら)をかく」姿勢では、新しい価値は創造できません。
トレンドや外部パートナー情報は、設計・調達・品質保証・生産管理など全部門で共有し、現場のひとり一人が“自分をOEMメーカーの代表”という気持ちで開発に当たってください。

デジタル技術活用で“匠”と“合理化”を両立する

IoTやAI、原材料トレーサビリティ管理システムを積極的に導入することで、従来のアナログ調達・保管管理の課題を解決できます。
データを駆使した需要予測、在庫適正化、品質異常の早期発見など、現場知とデジタルの組み合わせで“唯一無二のモノづくり”を目指しましょう。

まとめ:差別化の肝は「企画力×現場力」

OEM食品のフレーバーや原料選定は、差別化が難しい現代においても大きな勝負どころです。
今日の市場では、「意外性ある企画力」「調達・生産の現場力」「持続性・安全性の確保」「スピード勝負の実践力」が必要不可欠です。

部門の枠を超えて最新情報に敏感になり、原料サプライヤーとのネットワークを大切にする姿勢を持ち続けてください。
そうすることで、誰にも負けない“現場発のヒットOEM商品”が生まれる時代です。

少しでもこの記事が、製造業に携わる皆様、これからバイヤー・サプライヤーを目指す皆様のヒントとなれば幸いです。

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