投稿日:2025年10月26日

地元企業が自社製品を展示会に出すときのプレゼン準備と展示設計のポイント

はじめに:展示会を最大限活用するために

製造業において、自社製品を展示会に出展するということは、自社技術を世の中にアピールし販路を拡大する絶好のチャンスです。
特に地域に根差した地元企業が全国規模、あるいは専門分野の展示会に参加する際には、限られたリソースを最大限に活用し、前向きな成果を掴み取りたいと考えるはずです。
しかし、折角高い出展料を払ってブースを確保しても、ただモノを並べるだけでは成果には繋がりません。
展示会には独特の準備や現場対応の鉄則があり、そこをきっちり押さえることで初めて「出して良かった」という充実感が得られます。

本記事では、製造現場で培ったノウハウとバイヤー視点を踏まえ、地元企業の展示会プレゼン準備と効果的な展示設計のポイントを、最新トレンドから昭和的な“根拠なき常識”まで深く掘り下げて解説します。
メーカー担当者はもちろん、バイヤーやサプライヤー、それぞれの立ち位置から展示会の意義を再考するきっかけになるはずです。

展示会における目的の明確化とターゲットの分析

展示会の準備で最も大事なのは、「なぜ出展するのか」「どんな成果を得たいのか」という目的を具体的に定めることです。

目的を「数値」と「質」の両面から設定する

たとえば「新規顧客獲得10件」「受注リード100件」「地元大学との共同研究の足がかりを得る」など、成果を数値化しておくと評価がしやすくなります。
一方で「ブランドイメージの向上」「先端トレンドに関する情報収集」など、質的な目的も大切です。
経営幹部だけでなく、現場の担当者も目標を共有できる状態にしておきましょう。

来場者の分析が展示デザインを決める

出展する展示会の来場者は、バイヤー(購買担当)、研究者、同業他社、就職を希望する学生など幅広い層が集まります。
近年ではDX、カーボンニュートラル、AI・IoTといったキーワードを目当てに来場する層や、海外からの来場者も増えています。
自社の強みや訴求したいポイントが、どの層向けなのかを事前に洗い出しましょう。
これにより資料の作成やブース内の動線設計が具体的になります。

展示会の“昭和的お作法”と現代的手法のミックス

従来の展示会では「ブースに机を置いて製品を並べる」「名刺だけもらって満足」「派手なノベルティ配布」など、やや一方通行のPRが主流でした。
しかし時代は変わり、展示を“ストーリー”として設計すること、来場者の体験を重視することが求められています。

五感に訴える展示設計

特に製造業の場合、製品の質感・重み・動き・音といった五感情報が、購買担当の意思決定に直結します。
卓上配布のカタログだけでなく、可能な限り「触れる」「操作できる」「動く」ことが体験できる展示に進化させましょう。
たとえばモーターや駆動部品メーカーなら、分解工程や動きの違いをその場で比べられる実演模型を用意すると効果的です。

デジタル技術の導入

一方で、パンフレットやホワイトボードだけでは最新展示会の標準を満たせません。
製品PR動画、AR(拡張現実)による製品説明、タブレット端末を用いた部品構成説明など、デジタル技術を活用しましょう。
デジタルとアナログを融合させることで新たな訴求力が生まれます。

プレゼン資料作成の鉄則

展示会の現場で勝敗を分けるのが、短時間でも意図が伝わるコンパクトで印象的なプレゼン資料の用意です。

「課題→アプローチ→効果」の三段論法でまとめる

資料作りは「商品説明」だけでなく、「何の課題に効くのか?」から始めましょう。
来場者、特にバイヤーは「自分の会社の困りごと」を出展者がどう解決できるのかを真っ先に知りたいのです。
例)「⼈⼿不⾜が深刻だが、貴社の自動〇〇装置で工数50%削減できました」のような、現場目線での導入メリットを前面に出しましょう。

写真・数値・現場事例を効果的に使う

口頭や文字だけだと伝わりにくいですが、実際の導入現場の写真や、改善効果の数値を載せると説得力が飛躍的に高まります。
「手書き図面→3Dモデル→実現品」までの工程を時系列で見せるなど、製造業ならではのビジュアル重視の工夫も大切です。

英語・中国語など多言語対応も検討

海外バイヤーや技術者向けに、資料の一部を英語・中国語対応しておくことも近年は必須となりつつあります。
無理に全ページ翻訳せずとも、「製品メリット・実績・担当者連絡先」などコアな情報だけでも多言語化を進めておくと評価が上がります。

来場者応対の極意と展示会マナー

どんなに素晴らしい製品や展示資料が揃っていても、現場での応対が雑だと全てが水の泡です。
展示会特有の“昭和流お作法”と現代流のハイブリッドなマナーを押さえることが重要です。

「入りやすさ」と「見送り力」がカギ

来場者には初対面の方、名刺交換のみで終わる方、競合他社のスパイも混じっています。
誰彼構わず執拗に追いかけすぎず、目が合った時に「何かお困りごとありませんか?」と自然に声を掛けられる雰囲気作りが大切です。
用件が終わった来場者には通路側に向かって丁寧に送り出すことで、混雑することなく新たな来場者を迎えやすくなります。

現場スタッフの研修とシナリオ共有

現場イベントなので、新入社員やアルバイトだけで固めるのはリスク大です。
技術、営業、役員レベルの各層からまんべんなくスタッフを揃え、「誰がどの来場者層に最適解なのか?」という応答シナリオを事前に共有することが重要です。
「ちょっと詳しい者に交代します」と、その場で人員を切り替えるフットワークも忘れずに。

名刺管理・リード管理の徹底

名刺交換を成果とするのは昭和的ですが、これをきっかけにアフター展示会のフォロー活動へ繋げるのが現代流です。
交換した名刺は、展示会期間ごとに「優先度」「ニーズ」「商談有無」「要フォロー」などのタグを付けて管理しましょう。
エクセルやクラウド上で管理し、速やかに営業や開発部門に情報をパスすることが顧客開拓の秘訣です。

展示会後のアフターフォローと効果測定

展示会が終わった後のフォローこそが、“最もバイヤー評価されるポイント”です。

すぐにコンタクトする「黄金の48時間ルール」

展示会終了から48時間以内に、名刺交換をした方へ「ご来場のお礼」と「カスタマイズ可能な提案資料」をメールで送付しましょう。
素早いアクションが、「この会社はレスポンスが早い」「信頼性が高そう」と感じてもらう最大の要素です。

現場にフィードバックすることで次に繋げる

営業担当だけでなく、製造現場、生産管理、品質管理それぞれの部門に「展示会での声」をフィードバックしましょう。
「◯◯業界のバイヤーは価格よりも納期を重視している」「現場の自動化ソリューションに大きな反応があった」など、現場の課題解決・次の改善サイクルへと活かすことが可能です。

まとめ:展示会は“現場力”と“構想力”のぶつかり合い

展示会という場は、工場の生産現場から持ち込んだ“現場力”と、未来を志向する“構想力”がぶつかり合う場所です。
自社の強みとバイヤー視点を冷静に分析し、ストーリーのある展示設計、現場一体となった応対、そして迅速なアフターフォローで、地元企業ならではの持ち味を大いに発揮しましょう。

どんなにデジタル化が進んでも、「人と人の信頼」によって商談が生まれるのは昭和から変わらない事実です。
しかし、その“信頼”を効率よく、しかもダイナミックに構築できるのが展示会というフィールドです。
一歩踏み出す勇気と、確かな準備で、出展成果を最大化しましょう。

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