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小売業が初めてのOEM発注で失敗しないための契約書と製造指示のポイント

目次
はじめに:OEM発注に挑戦する小売業が直面する壁
小売業者が新たにオリジナル商品づくりに乗り出し、OEM(Original Equipment Manufacturer)発注を検討するケースが増え続けています。
「自社ブランドで独自商品を作りたい」「他社との商品差別化を図りたい」という理由で、初めてOEM依頼を計画する担当者の方も多いでしょう。
しかし、製造現場や調達プロセスの基本知識なしにOEM発注を進めると、トラブルや品質不良、納期遅延、追加コストといった思わぬリスクにつながります。
昭和の時代から続く日本の製造業界特有の慣習や商習慣も加わり、契約・発注の現場はデジタル化が進んだ現在もアナログな側面が根強く残っています。
この記事では、大手メーカーの現場・管理職経験を活かし、現役の工場長や購買担当目線で、小売業がOEM発注で「絶対に失敗しないため」の基礎知識と実践ポイントを詳しく解説します。
OEM発注で失敗しないために知っておくべき業界常識
なぜ「契約書」と「製造指示」が重要なのか
OEM発注とは、発注側(小売業)がサプライヤー(製造業者)に対し、自社ブランド用製品の製造を委託する仕組みです。
この時、最も重要なのは「契約書」と「製造指示書(仕様書)」です。
日本の製造現場では「口頭の約束」「慣例的な発注」がまかり通るケースがまだ多く、「言った・言わない」「こんなはずじゃなかった」というトラブルが絶えません。
契約書と製造指示書を徹底することで、責任範囲を明確化し、品質・納期・コスト・知財トラブルを未然に防ぐことが可能になります。
昭和から抜け出せない!? アナログな現場の現実
令和の時代になっても、製造業の現場では手書き仕様書、FAXによる図面送付、職人技術への依存など、アナログな業務が色濃く残っています。
「細かいことは現場に任せる」「仕様変更は口頭で済ます」といった商慣行が根強い一方、サプライヤーも発注元もトラブル時に曖昧な責任の押し付け合いになるリスクをはらんでいます。
イマドキのOEM発注は、アナログ現場の”常識“を理解しつつ、契約・仕様管理ではデジタルやルールの明確化に努める姿勢が不可欠です。
OEM契約書を作成するときの必須ポイント
何を明記すべきか:契約書の基本構成
OEM契約書では、下記のような項目を必ず明記しましょう。
・取引製品の名称・型番・仕様
・発注数量(ロット単位の最小・最大明記)
・納期・納入方法・納入地点
・単価および価格改定条件
・検収方法(外観検査や機能検査など)
・責任分界点(納入地点でリスク移転するなど)
・品質保証期間
・不具合品の対応(交換・返品・補償範囲)
・知的財産権の帰属先
・秘密保持や競業避止義務
・本契約の有効期間、解除条件
・合意管轄裁判所
とくに重要なのは「納期・数量・検収基準・責任範囲・知財帰属」など、トラブル時の争点になりやすい項目です。
”言った・聞いてない”を防ぐデジタル化活用術
多くの製造現場では今なお、営業担当者どうしの電話やメール、印刷された書類や図面がフローの中心となっています。
ですが、DTPソフトやPDF図面、電子契約サービス、クラウドストレージを活用すれば、証跡が残り「言い逃れ」防止に極めて有効です。
重要事項は、必ず書面で「製造不可欠条件」と明記し、双方で合意サイン(電子署名含む)を取得しておきましょう。
なぜトラブルになる?事例で見る危険ポイント
・部品の材質や仕上げについて「発注側の思い込み」と「サプライヤーの経験則」が食い違い、納品後に再生産…
・量産工程で些細な仕様変更を「口頭で伝達」し、数千ロットすべて不良品になった…
・知財権を曖昧にしたことで類似商品を他社へも納品されブランド価値が棄損…
いずれも「契約書」と「仕様書」の不備・曖昧さが原因です。
製造指示書(仕様書)作成で絶対に押さえるべきポイント
要点の明文化が信頼に直結する
製造現場の常識で「ある程度は現場で読み取ってくれる」という期待は禁物です。
製造指示書に盛り込むべきポイントは次の通りです。
・製品の外観(サイズ、カラー、ロゴ位置など)
・使用部材(材質やグレード明記)
・加工方法・表面処理の指示
・包装仕様・ロット記号の指示
・求める性能基準や合格判定値
・製品安全マニュアルや法令適合要件
・サンプルや参考写真の添付
これらを丁寧に「見える化」し、設計図・イラスト・参考品画像など、できるだけ視覚的な情報で共有します。
現場との擦り合わせが超重要
紙面上(書類上)での指示ミスは、現場では即トラブルにつながります。
量産試作段階で、必ず発注側とサプライヤー間で「立会い確認」「サンプル検証」「現場ロールアウト会議」を持ち、認識の齟齬(くい違い)を徹底的になくしましょう。
「現場目線でのフィードバックを受け入れる(生産工程上の制約、コスト/納期インパクト)」ことも重要です。
品質保証体制の構築
「不良品が出た際の是正措置」「予防的な品質管理ルール(トレーサビリティ、工程内検査、抜取検査の頻度)」なども、書面で合意しておくべき項目です。
特に海外サプライヤーやOEMでは、ISO 9001等の第三者認証取得状況を確認し、可能であれば現地監査も検討すると安心です。
サプライヤーとの関係性構築のコツ
理想は「パートナーシップ型」へ
従来型の「下請け-親事業者」関係だけでは、長期的には価格競争に陥りやすく、品質や納期へのモチベーション低下につながります。
互いを対等な事業パートナーと位置付け、製品ごとの成功報酬インセンティブ、情報共有、共通ゴール設定(初回クレーム率ゼロ等)を契約条件に盛り込むのも有効です。
決して忘れてはいけない「現場コミュニケーション」
発注担当者が工場現場に足を運び、現場リーダーや品質管理者との生のコミュニケーションを積み重ねることで、社内外の信頼関係が構築できます。
現場を知る経験者による「暗黙知」の引き出しや、サプライヤー側の本音(技術的な壁やリスク)を聞き出すことも極めて重要です。
また、「成果品に問題が起きた場合、どちらが責任を持つか」を事前に合意し、過剰なリスク転嫁(押し付け合い)を避けることも信頼関係の構築に直結します。
失敗しないためのOEM発注ステップまとめ
1. 製品企画段階で明確な要件定義(モノのイメージ、 販売戦略、必要性能等)
2. サプライヤー選定時は現場視点の監査・ヒアリングを徹底
3. 契約書・仕様書で「誰が・何を・どこまで責任を持つか」を明文化
4. 初回生産時は必ず現地確認やサンプル検証を実施
5. 納品後のアフターフォロー(品質不良時の対応ルール、防止策のPDCA)
まとめ:OEM発注の成功は準備と対話力が決める
加工現場のプロであるサプライヤーも、販路を持つ小売業も、Win‐Win関係を築くには「契約」「指示」「現場認識」の3点をとことん可視化し、互いに齟齬がないことを繰り返し確認することが成功の秘訣です。
日本製造業に根強く残る「現場任せ」「慣例優先」文化(いわゆる昭和型アナログ)を理解しつつ、失敗しないためにはデジタル活用・法的手当て・現場巻き込みの3本柱で慎重にプロジェクトを進めましょう。
製造業現場に携わる全ての方々が、より安全・安心なOEM発注を通じて新しい価値創出に貢献できることを心から願っています。
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