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ダイカスト鋳造欠陥を防ぐ合金選定と金型設計の要点

目次
はじめに
ダイカスト鋳造は、複雑な形状や薄肉部品の大量生産に適した加工法として、製造業界で長年にわたり活用されてきました。
一方で、ダイカストは冷却の急激さや金型と溶湯の反応など、他の鋳造法と比べて欠陥が発生しやすいという側面も持ち合わせています。
本記事では、ダイカスト鋳造時に発生しやすい欠陥を最小限に抑えるための合金選定と金型設計について、現場目線で実践的なポイントを詳しく解説します。
また、「昭和から脱却できないアナログな現場」でもすぐに取り入れやすいノウハウも交え、サプライヤーやバイヤー双方の立場からも考察を加えます。
ダイカスト鋳造とは何か
ダイカスト鋳造の基本プロセス
ダイカスト鋳造法は、金属溶湯を高圧で金型に瞬時に流し込み、短時間で凝固させる鋳造方法です。
一般的にはアルミニウム合金や亜鉛合金などの非鉄金属が多用されます。
これにより部品表面が非常に滑らかで複雑な形状も成形しやすく、しかも量産性に優れている点が大きなメリットです。
ダイカスト欠陥の主な種類
ダイカスト鋳造では、気泡や巣(ピンホール)、湯じわ、ヒケ、亀裂、バリ、表面荒れなどの典型的な欠陥が発生しやすくなります。
どの欠陥も製品品質や機能に大きな影響を与えるため、現場では発生原因を十分に理解し未然に防止することが求められます。
合金選定の失敗と欠陥のリスク
合金の特性とダイカスト性
ダイカスト用合金は、流動性、凝固特性、ガス吸収性、熱膨張性、機械的特性のバランスが肝となります。
アルミニウムならADC12やADC6、亜鉛ならZDC2やZDC1が一般的ですが、要求特性により適切なグレード選定が必要です。
流動性が劣ると金型の隅々まで溶湯が行き渡らず、湯じわ、未充填やヒケの原因となります。
一方で、流動性を上げるためにシリコンを多く含む合金を選ぶと、機械的強度が低下したり、金型へのダメージが増えやすくなります。
このトレードオフをどうコントロールするかが、バイヤーや設計・生産管理担当者の腕の見せ所です。
現場で起こりやすい合金選定ミスの実例
例えば、過剰にコストダウンを意識し二次合金やリサイクル比率を不用意に高めると、多量のガス混入や酸化物生成により、巣やピンホール欠陥が激増するケースがあります。
また、耐熱性や機械的強度を重視しすぎて合金元素量を高めすぎると、鋳造時の充填性が低下し、金型摩耗や湯じわの頻発など意図しない欠陥が現れることもよくあります。
材料ロット管理や元素分析のアナログ運用が残る現場では、こうしたリスクが見逃されがちなので、客観的なデータベース管理も含めた仕組み作りが重要です。
金型設計がダイカスト品質を決める理由
アナログな設計が陥りやすい落とし穴
図面や3Dデータ上で理想的に見えても、実際の生産現場では型の磨耗や温度分布、配置環境など多くの変動要因が存在します。
金型設計時には、単に製品形状だけを追い求めるのではなく、溶湯の流れやガス抜き経路、冷却の制御も含めて設計する力が不可欠です。
しかも、昔ながらの「熟練の勘」頼みではなく、物理シミュレーションやDFM(Design for Manufacturability:製造容易化設計)ツールの活用が、品質安定化とコスト低減の両輪となる時代です。
昭和的アナログ手法の脱却には、現場の知見とデジタル技術の融合が効果的です。
ガス抜き(ベント)と湯口設計の重要性
ガス欠陥の原因で最も多いのが、金型からガスが十分に抜けないことです。
湯口やランナー、オーバーフロー部の設計が不十分だと、溶湯に巻き込まれたガスが閉じ込められピンホールや荒れ表面に直結します。
また、高速射出による乱流を抑え、スムーズな金型充填を実現するために、湯口形状(直径・厚み・位置)やランナーの太さ、製品肉厚とのバランスにも留意が必要です。
金型内を流れるガスや溶湯のシミュレーションを現場で実施し、その結果をラピッドプロトタイピング等で素早く検証できるかが、現代の武器となります。
冷却回路・寿命対策も最重要
ダイカスト金型は、同じ箇所に繰り返し高温の溶湯が当たるため経年で磨耗やクラックが発生します。
冷却回路レイアウトの工夫や表面硬化処理、適切な温度センサー配置、金型交換のサイクル管理が不可欠です。
そもそも「型が冷えていれば大丈夫」という昭和的な思い込みが現場には根強いものですが、適切なスロープ温度制御や熱だまり解消の設計は、歩留まりや保全コストを劇的に変えます。
欠陥を減らすための現場ノウハウ
合金ごとの温度管理と射出条件
たとえ最適な合金や金型設計を用いても、現場の温度管理や射出圧・速度にバラつきがあれば理想的な凝固形態とはなりません。
合金ごとに推奨射出温度、型温、射出速度レンジをマニュアル化し、現場ごとに指標を統一することが基本です。
また、温度センサーもアナログ表示のままでは反応遅れやヒューマンエラーも頻発しやすいため、工程管理システム等と連動したデジタル記録への段階的移行を図るのも有効です。
PDCAの徹底的な現場実装
不良が出た場合のトレーサビリティや、「同じ失敗を繰り返さない」仕組み作りは、昭和型日本のものづくり現場でも納得しやすい改善文化です。
欠陥要因の見える化、計画・実行・評価・改善サイクルの確立、サプライヤーやバイヤー、設計者を巻き込んだチームアプローチで、根本原因に切り込むことが重要です。
バイヤーとサプライヤー双方が知るべき最新動向
DX/IoT化が切り開く新たな地平線
従来型の改善活動だけでなく、IoTによる工程データ収集やAIによる不良予兆検知、3Dプリンタを活用した金型部品の最適化など、ダイカスト現場にもデジタル変革の大波が訪れています。
誰が・どのようにデータを見るか、単なる現場の「記録」から「先回りした品質制御」へと進化できるかが、世界と伍する日本発のものづくりを支えます。
バイヤー目線でのリスクヘッジと提案力
バイヤーは単に「価格競争の代理人」ではなく、「欠陥のない、安定した品質提供=顧客価値の最大化」に責任を持つべきです。
合金納入履歴、金型管理状況、不良率や改善トレンドといった「現場の見える化」情報を積極的に取得し、サプライヤー提案や予防保全のアイデアまで引き出すことができれば、競争優位のバイヤーとして評価されます。
一方のサプライヤーとしても、バイヤーの要求仕様やリードタイム・コストだけでなく、「なぜその仕様なのか」「最上流で欠陥をどう防ぐのか」といった本質に意識を向けることで、単なる下請けからパートナーへの進化が可能となります。
まとめ
ダイカスト鋳造における欠陥防止では、合金の賢い選定から始まり、金型設計や現場条件の最適化、昭和的な勘と最新デジタル技術の両立が不可欠です。
アナログ管理に頼る現場にも、「なぜ今そのやり方なのか」を問い直し、小さな改善を積み重ねていく現場力が日本のものづくりを支えます。
特に、バイヤー・サプライヤー・現場管理者が互いの視点を理解し合うことで、不良ゼロ・最適コスト・短納期といった理想が現実となっていきます。
今こそ、現場知見と新技術を融合した「ダイカスト新時代」へ、一歩踏み出しましょう。
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