投稿日:2025年9月9日

小型犬と大型犬で異なるOEM商品開発の注意点

はじめに:製造業におけるペット市場の拡大とOEMの重要性

近年、ペット市場の拡大と多様化が著しく、日本国内でも犬を家族同然に扱う世帯が急増しています。
特に小型犬と大型犬では、生活スタイルや求められる製品、オーナーのニーズが大きく異なるため、メーカー各社はOEM(相手先ブランド名製品)の戦略によって、より細やかな市場対応が求められています。

本記事では、20年以上の製造業現場経験とバイヤー・サプライヤー両方の立場を踏まえ、小型犬と大型犬で異なるOEM商品開発における実践的な注意点を詳しく解説します。

小型犬と大型犬、なぜOEM開発のポイントがまったく異なるのか

市場規模と需要特性の違い

小型犬は日本の住宅事情や都市型生活者の増加を背景に、飼育頭数が増加し続けています。
一方、大型犬は住宅の広さが必要だったり、運動量も多いため飼育できる世帯自体は限定されますが、愛犬家からは高付加価値の製品需要があります。

この市場特性が、OEM商品開発でも仕様やロット数、流通設計に直結します。
バイヤー側は「小型犬=大衆向け」「大型犬=ニッチ高単価」の違いを常に意識し、サプライヤーもそれに即した生産体制を考える必要があります。

体格差がもたらす設計・安全要件の違い

同じペット関連商品でも、例えばリードやハーネス、ベッド、フードボウルなどの開発では、体重や噛む力、可動範囲が異なるため、必要な強度やサイズ設計も大きく異なります。

小型犬で通用する材料や縫製も、大型犬では容易に破損・破壊につながりかねません。
また、大型犬特有の「誤飲」「破壊」リスクにも対応した設計が必須です。

この細やかな安全要件を満たしながらも、コストと量産性のバランスを取ることがOEM開発の大きなカギとなります。

オーナーの価値観・購買行動の違い

小型犬オーナーは、ファッション性やデザイン、携帯性へのこだわりが強く、トレンドが移り変わりやすい傾向です。
一方で大型犬オーナーは、耐久性や実用性、高級感に加え、安全面にも非常に敏感です。

このようなオーナー心理をバイヤーがどれだけ掴み取り、設計仕様書やサンプル要求に落とし込むか。
また、サプライヤーがオーナー目線の商品提案をどこまでできるかが成功要因となります。

現場主導で進めるOEM開発ステップ:昭和的アナログ現場の強みと落とし穴

原材料・サプライヤー選定のポイント

小型犬向け製品の場合、軽量でありながら柔らかさ・安全性・低コストを両立できる素材選びが重要です。
一方、大型犬の場合は強度重視が鉄則ですが、重くなり過ぎても扱いづらくなるため、強くて軽い素材や多層構造など工夫が求められます。

サプライヤーとしては、強度試験や耐久試験の条件設定を綿密に行い、特に大型犬向けでは「寿命試験」「噛みちぎりテスト」「急激な力への耐久」など独自の評価軸も提案できると信頼度が上がります。

品質管理・検査体制の違い

小型犬製品の品質管理では、外観や触感、軽微な異物・バリの除去といった細やかさが求められますが、誤飲防止や誤食しづらい形状かどうかの工夫も必要です。

これに対し大型犬製品では、そもそも破損しないかどうかの厳しい工業的品質管理が中心となります。
金属部品の強度試験、プラスチック部品の耐裂強度、縫製部の引張り強度など、現場レベルの物性評価データがバイヤーから求められるケースが多くなっています。

昭和から続くアナログ的な目視検査や現場熟練者の「手の感触」は、現場主義の強みでもありますが、データや客観的なエビデンスとのバランスが重要です。
「職人の目利き+データに基づく説明」が信頼につながっています。

生産ロットと在庫リスク管理

小型犬はターゲットが広く、OEMでも比較的大きなロットが対応可能ですが、デザイン変更やマイナーチェンジが頻繁に発生します。
このため在庫リスクや生産切り替え時の段取り変えコストを抑える工夫が現場には必要です。

大型犬製品はロットが小さくなりがちですが、一品単価が高いため、過剰在庫や売れ残りが大きな損失につながります。
バイヤーは販売計画精度と発注リードタイム短縮、サプライヤーは必要最低ロットで生産・納入を実現する柔軟性が必須です。

OEMバイヤーが求めているものとは

トレンド先取り+安全品質の両立

小型犬用品はトレンドによる移り変わりが速い分、バイヤーは「他社との差別化」を最重視しています。
機能性とファッション性を両立したOEM商品を求める一方で、圧倒的な安定供給体制と初期不良率の低さを重視します。

大型犬用品のバイヤーは、マーケットの信頼につながる「ガチガチの安全性」と「プロフェッショナルが納得する耐久性」を重視します。
サプライヤーに対しては、単に規格を守るだけでなく、自社独自の強みや失敗事例・クレーム事例を共有し、開発・改善に生かしてくれることを重視しています。

サプライヤーの「現場力」と提案力

OEMは仕様伝達のやりとりが中心ですが、バイヤーは「現場でどう工夫しているか」「業界他社の失敗事例をどれだけ知っているか」を評価しています。
過去のクレームや事故を正直にオープンにできるサプライヤーは、長期的な信頼が勝ち取れます。

また、工場現場から直に「こうするともっと安全」「この素材はうちの現場では苦労したが結果的に良かった」といった、いわゆるアナログ的ノウハウを提供できる企業には必ず優位性が生まれます。

実践的アプローチ:OEM開発現場で気をつけたいポイント(体験談交え)

現場の「声」を仕様書に落とし込む重要性

バイヤー目線でOEM先に要望を伝えたにもかかわらず、「思った以上に納期が遅れた」「強度不足で誤飲事故が発生した」という失敗事例は日常茶飯事でした。

これを防ぐには、設計段階から現場班長や製造リーダーを仕様検討会議に必ず参加させ、「どうやって作るか」「どこでミスが起こりやすいか」を現場目線で突き合わせることが大切です。

特に大型犬用品では、ごく僅かな縫製工程の手間の違いが「引っ張り試験に耐えられない」「ガタつきが出る」といった重大事故に直結します。
現場ベースでのアナログ情報と図面や仕様書のデジタル情報が一致しているかどうか、細心の注意が必要です。

昭和的手法とDX(デジタルトランスフォーメーション)の最適ミックス

今なお製造現場には「昔ながらの確認ノート」や「手書きの試験記録」が根強く残っています。
一見非効率に思えますが、現場の「感覚」も有効活用しながら、最新の設備・IoT導入で実データを蓄積し、「規格外れの微妙な違和感」をすぐ掴む力を伸ばすことが重要です。

大手メーカーでは、アナログ+デジタル双方の長所を取り入れ、現場作業者の気づきをDXプラットフォームで共有できる仕組みづくりが進んでいます。

OEM開発は現場の”巻き込み力”がカギ

現場に根付く「ものづくり文化」を活用しつつ、変革や新提案に現場とともに取り組むことが、OEM商品開発成功の最大の近道です。

製造工場のオペレーターや品質管理担当が「この基準はやりすぎかもしれないが大型犬には絶対必要」と提案できる職場環境を作ることで、バイヤーとも深い信頼関係が生まれやすくなります。

まとめ:これからのOEM商品開発に必要な視点

小型犬と大型犬で異なるOEM商品開発の注意点をまとめると、以下のようになります。

  • 市場特性を見極め、量産性と細分化可能性のバランスを取る
  • 設計段階から「現場の知恵」を仕様書・品質保証に反映する
  • 昭和的現場力と最新技術(DX)の融合で、安全性と生産性を両立させる
  • バイヤー・サプライヤーともにエビデンスと本音のコミュニケーションを強化する
  • 大手バイヤーの要求水準を的確に読み取り、業界動向を先取りした提案を行う

競争が激化するペット用品OEMの現場では、”昭和と令和の知恵”をうまく組み合わせ、現場のプロならではの経験値を存分に活かした商品開発が、今後ますます重要になっていくでしょう。

現場から新たなヒット商品・安心安全な製品を生み出し、これからの製造現場に誇りを持てるものづくりの発展にぜひ役立ててください。

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