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投稿日:2026年2月1日

SAE J3061が示す自動車サイバーセキュリティの要点

はじめに-自動車業界を変えるサイバーセキュリティ規格「SAE J3061」

自動車の電子化、システムの複雑化、コネクテッド化が進む中、自動車がサイバー攻撃の標的になっています。
一昔前であれば、車とは純粋に「モノ」として安全性を議論していました。
しかし近年、ソフトウェアやネットワークがクルマの根幹を成し、工場現場はもちろん開発・調達バイヤー・サプライヤーまで、関わるすべての人にサイバーセキュリティの理解が不可欠になりました。

その流れを象徴する規格が「SAE J3061」です。
本記事では、20年以上現場で調達購買、生産管理、品質管理、自動化等を携わってきた経験と、現実的な業界事情を踏まえつつ、SAE J3061が自動車業界に何をもたらすのかを解説します。

SAE J3061とは?-要点の整理

SAEとは何か

SAEとは「Society of Automotive Engineers(自動車技術者協会)」のことです。
自動車や航空機分野で国際的に権威のある技術標準や規格を策定している組織です。

J3061規格の目的

SAE J3061は、車載システム・ソフトウェアに対するサイバーセキュリティに関する「プロセスのフレームワーク」を整理したものです。
安全(Safety)同様に「開発の初期段階から、ライフサイクル全体でサイバーセキュリティを確保する」ことが主眼です。
ISO 26262の機能安全プロセスと類似の流れで「セキュリティに特化した要件」を行動規範に落とし込んでいます。

どんな企業が対応しなければならないか

完成車メーカーはもちろん、部品サプライヤー、工場の自動化システムやネットワークを手掛ける企業、さらには調達・購買関係者にも波及しています。
なぜならサイバー攻撃は、「弱い部品や下流部門」「サプライチェーンの隙」を突くからです。

自動車の「サイバーセキュリティ」の特性

なぜ自動車は狙われるのか

自動車は今や「走るIoTデバイス」として、スマートフォン並の通信・センサー・制御技術が詰め込まれています。
社外からのWi-Fi、Bluetooth、モバイル通信だけでなく、車内外のあらゆるECU(電子制御ユニット)がCAN通信等でつながっています。
これらが乗っ取られれば、ブレーキ、アクセル、パワーステアリングといった命に直結する機能が遠隔操作されかねません。

実際に、欧米ではホワイトハッカーがジープなどをハッキングし、遠隔で停止させる実験も成功しています。
これは、従来の「不良品」や「品質問題」と全く次元の異なるリスクです。

昭和的アナログ現場の落とし穴

長年、製造業の現場は「効率化」「コストダウン」「品質管理」に注力してきました。
しかし、工場ネットワークの安易なUSB接続、メンテナンス時の簡易パスワード、紙台帳運用のまま電算機へ転記、など。
些細なアナログ慣習が、サイバーセキュリティ上は「極めて危険」な穴になりやすいのが現実です。

サプライヤーでも、ハードウェアファームや通信仕様図が「未暗号化」で調達段階から共有される…こうした昭和からの慣例を疑う視点が今求められています。

SAE J3061が求める「プロセス」とは何か

セキュリティ文化の醸成

J3061の特徴は「セキュリティは文化である」という点です。
トップダウンで「教育、意識改革、役割分担」を明確にし、開発・生産・調達の全プロセスでセキュリティを意識することが不可欠です。

リスク分析と脅威分類

開発初期に「どの資産(ECU、制御SW、ネットワーク)が、どんな脅威(外部からのアクセス、内部犯行など)を受けるか」を洗い出します。
そして、どこに「防御」「検知」「回復」などのメカニズムが必要かを計画します。
これはISO 26262のリスク分析と似ていますが、「脅威の多様性」が特徴です。

セキュリティ設計-開発段階で組み込む

J3061は「セキュリティ・バイ・デザイン」を強く推奨しています。
例としては、ECU相互間の認証、暗号通信、ファームウェアの改ざん検知、自動アップデート(OTA)時の検証など、設計段階から脆弱性を塞ぐことが重視されます。

検証・テスト・管理の強化

テスト部門や品質保証部隊も、従来の「機能が正常か」だけでは足りません。
「模擬的な攻撃」や「ペネトレーションテスト」「脆弱性スキャン」など、セキュリティ視点での試験を導入し、常に改善サイクルを回すことが求められます。

サプライチェーン管理の進化-調達・バイヤーの要件増加

部品やシステム、ソフトウェアの「仕入先」にも、セキュリティ要件を求める時代です。
調達部門が「サイバーセキュリティ規格や証明書」「脆弱性情報の共有体制」「改修履歴の管理」など、新たな条件でパートナー企業を選定するのが、これからのスタンダードになります。

深刻化するサプライチェーンリスク―現場経験から読み解く

サプライヤー側の悩みと課題

「セキュリティレベルを上げてください」と言われても、何から手をつけて良いかわからない。
この声はサプライヤー現場で非常に多いです。
現実として、情報システム部門と現場・設計部門の意識ギャップ、コスト配分の問題、教育リソースの不足等、課題は山積しています。

バイヤーの本音-なぜ選定が厳しくなったのか

例えば、AIや自動運転、EV化で必然的に制御系統が複雑化する中、「サプライヤー側でリスクが管理できていること」がますます重視されています。
一つの小さな部品でも、その脆弱性が大手自動車メーカー全体へ致命的なサイバーリスクを及ぼしかねません。

当然ですが、「サプライヤー全体のセキュリティ体制調査」や「証明書の提出義務化」「定期的な監査の契約化」などの条件が、調達・バイヤーの視点から必須項目となっています。

製造業現場が実践するべきアクション

現場起点のトップダウン施策

現場の独自判断(例:簡易パスワードでの運用、USBを私物と共用、製造装置の遠隔保守アカウントの放置)をそのままにするのは極めて危険です。
トップ主導でセキュリティ責任者を置き、「現場の作業フロー全体」を見直すことが王道です。

教育・ドキュメント化の徹底

映像やeラーニングの活用、現場目線での手順書整備など、誰でも「なぜこの手順・設定が必要か」を理解できる仕組みを強化しましょう。

日々の運用改善とPDCAサイクル

サイバーセキュリティは「一回実施して終わり」ではありません。
「新たな脅威・情勢がアップデートされる」文化であることを意識し、繰り返し見直し続ける態度が不可欠です。

まとめ-「製造業らしさ」と「サイバー時代」の共存を目指して

自動車産業は、「無謬(むびゅう)の品質管理」や「現場主義」が根っこにあり、そこに多大な価値があります。
しかし、新時代のセキュリティリスクは、昭和、平成のアナログ的なリーダーシップや現場感覚だけでは太刀打ちできません。

SAE J3061の導入は「業界としてセキュリティ文化を育て直す」ことの第一歩です。
サプライヤー・バイヤー・製造現場の垣根を超え、全てのプロセスに「サイバーセキュリティ視点」を組み込む、それが今、本当に求められています。

現場でしか見えない現実的な課題とリアルな改革を進め、世界で戦える日本のものづくりを共に築き上げていきましょう。

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