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人材不足対策を相談されたとき最初に整理すべきこと

人材不足対策を相談されたとき最初に整理すべきこと
製造業における人材不足の本質とは何か
近年、製造業の現場ではどこでも「人が足りない」と嘆く声が絶えません。
人口減少や高齢化、若年層のものづくり離れという社会的な要因だけでなく、業務そのものが多様化・高度化する中で、これまでどおりのやり方では必要な人材を確保しきれない現実があります。
しかし、いざ「人材不足対策を」と経営層や工場長、購買部門から現場リーダーまでが話し合うとき、闇雲に採用強化や派遣頼み、あるいは単なる人手補充に走る場面が少なくありません。
本当に人材不足なのか。どんな人材が、どこで、どのようなスキル・役割で不足しているのか。
今の業務フローや設備、そして人的リソースの活用状況を俯瞰し、まずは現状整理から始めなければ根本的な解決には至りません。
古い業界慣習や「昭和のやり方」に頼って思考停止したままでは、短期的にはしのげても、将来の競争力を大きく損なうリスクが高まります。
人材不足「に見える」現象のカラクリ
「人が足りない」と感じる職場には、次のような隠れた問題が潜んでいるケースが多いです。
・ムダな業務や重複作業が温存されていないか
・人・もの・情報が属人的に処理されていないか
・仕事の繁閑波動や納期調整が場当たり的になっていないか
・そもそも人材配置やスキルマップの見直しをしていないか
「この工程は長くこのやり方できてるから」「あのベテラン職人にしかできないから」と現状維持に縛られていれば、新しい挑戦は生まれません。
デジタルツールや自動化技術の導入を「ウチには関係ない、難しい」と一蹴している現場も、もしかしたら人材不足ではなく情報共有や標準化が遅れているだけかもしれません。
まずはこれを整理しよう:人材リソースの見える化
最初にやるべきは、人材リソースを徹底的に「見える化」することです。
人員表だけでなく、次の点を整理していきましょう。
・各部署・ラインごとの作業負荷、残業量、休暇取得状況
・主な作業と、その時間配分、作業難易度(技能要件)
・属人化している作業プロセスとマニュアル化の進捗
・多能工化(スキルマッピング)の状況とその阻害要因
たとえば「成形ラインの夜勤が人手不足」「品質管理の残業が恒常的」など、細部まで問題を分解し、なぜそうなっているか因果関係を突き止めてください。
自部署だけでなく、工程間連携がうまくいっているか、間接部門(管理・調達・メンテナンス等)の役割があいまいになっていないかも重要なチェックポイントです。
5S活動・カイゼンの「人材版」を再点検
昭和以来、現場単位で徹底してきた5S活動やカイゼン(改善)は、日本の製造業を世界トップレベルに引き上げた要因です。
この精神を活かし、「人材不足対策のカイゼン」も推進するべきです。
たとえば、以下のような問いかけを日常の現場会議や朝礼で繰り返しましょう。
・この作業、本当に今のままで必要か?
・自動化・半自動化で置き換えられないか?
・新人やパートにも対応できるよう、標準化・簡便化できないか?
・調達先との連携や納期調整でもっと人手を削減できないか?
一人に依存する“ブラックボックス業務”は、内部不正・品質事故・プロセス停止などのリスクを高めます。
いわゆる「デジタル化」「IoT」「AI導入」は、現場担当者が拒否反応を示しやすいですが、すべての工程をいきなり自動化せよ、と言っているわけではありません。
紙やホワイトボードのアナログ管理が根強いのも人材不足対策の妨げになっていないか、本質を問い直しましょう。
バイヤーや調達担当が注目すべき“次世代工場”の鍵
実は人材不足対策は、調達・バイヤーのスキルアップにも深く関わってきます。
バイヤーは、単なる「買い手」から「競争力を生み出す戦略パートナー」へ変化しています。
調達先の工場で「人がいない、納期遅れ」と連発する場合、それが設備保守の遅れか、材料管理の非効率か、人材配置ミスか…根因を読み解く力がプロバイヤーには求められます。
そのためには、現場の工程設計や、働き方の見える化、DX(デジタルトランスフォーメーション)・IoT活用への理解が重要です。
サプライヤーの立場であっても、「私は単なる部品屋」ではなく、「人材偏在や工程非効率をバイヤーに可視化して提案できる協力者」になれば、選ばれるサプライヤーへと進化できます。
「人材=即戦力」への過度な期待を捨てる
製造業では、「人さえ来ればあとは現場に任せて育つ」という人任せな採用・教育観が根強く残っています。
しかし、今や求められる人材像は、手を動かす即戦力作業員にとどまりません。
現場を横断して見渡せる多能工型、データを扱えるDX人材、工程改善を主導できるリーダーなど、多様なスキルセットが必要です。
従業員の定着率やエンゲージメントを上げるには、採用後の育成計画やフォロー体制も重要です。
「未経験可」でとりあえず採用するのではなく、キャリアパスや現場課題解決への貢献イメージを共有し、定着しやすい職場環境を戦略的にデザインしましょう。
オペレーション自動化・AI・DX推進:アナログ業界でも始められる小さな一歩
工場の自動化・DX化は大企業やIT先進企業だけの話ではありません。
中小・地場のアナログ工場でも、下記のような小規模導入から十分にスタートできます。
・タイムカードのデジタル化による出退勤管理(人員配置の可視化)
・生産実績や稼働率のホワイトボード→デジタルツール(Excelやクラウドサービス)化
・作業動画の撮影・共有によるOJTマニュアル化
・簡易RPAによる調達・伝票処理業務の自動化
・センサやIoTタグによる設備異常・材料動静の可視化
こうした“小さな成功体験”が現場変革の意識改革を後押しし、組織の成熟度を高めます。
まとめ:人材不足対策、その出発点は「問い直しと見える化」
どんな規模・業種の工場であっても、「人材不足対策」は単なる人集めにとどまらず、現場・工程・調達・管理部門が一体となった本質的な見直しから始まります。
“人が足りない”と感じたときこそ、まずは
・本当にどんな業務・役割で
・なぜ人材が不足しているのか
・ムダ・ムラ・ムリはどこに潜んでいるのか
・今後求められるスキルや人材像はどんなものか
を問い直し、現状を“見える化”することが最も大切です。
製造業に携わる皆さん一人ひとりが、現場の声やデータを生かし、自ら変革の仕掛け人として行動することこそ、人材の質・量両面での課題解決に直結します。
アナログな現場も、デジタル化の小さな一歩から始められます。
現場・購買・サプライヤー、それぞれの立場で「新たな地平線」を切り拓く人材になるために、今こそ行動を起こしましょう。