投稿日:2025年11月3日

製造現場の生産性を数値化するためのKPI設定と評価手法

はじめに:製造業におけるKPIの重要性

製造業のような現場主義が浸透している業界では、「現場を見て、現場で考え、現場で解決する」という風土が昔から根づいています。
しかし、昭和型の経験と勘、いわゆる“どんぶり勘定”だけでは、グローバル化・デジタル化の波に飲み込まれてしまうリスクが高まっています。
現代の製造現場に求められるのは、漠然とした努力や目視中心の管理ではなく、数値に基づいた論理的な意思決定と継続的な改善です。

この文脈の中で、「KPI(Key Performance Indicator)」、いわゆる重要業績評価指標の設定と管理が強く注目されています。
KPIは現場の活動を定量化し、“どれだけ成果が出ているか”“何が不足しているのか”を可視化する上で不可欠なツールです。
工場ごと、部門ごと、ラインごとにKPIを明確に定義し、適切に計測することで、ムリ・ムダ・ムラの削減、業務効率化、品質向上など、さまざまな恩恵が期待できます。

KPIとは何か?製造業現場の実践的視点

KPIとは、ビジネス目標(ゴール)を達成するために最も重要な進捗指標を意味します。
製造業におけるKPI設定の要諦は、「現場が実際に日常業務を回しながら、リアルタイムに把握できて、さらに“改善アクション”につながるもの」にすることです。

管理部門や経営層が考えるKPIと、現場に即したKPIにはギャップが生じがちです。
「生産量」「工数」「納期遵守率」など分かりやすい指標もあれば、「クレーム件数」「歩留まり率」「稼働率(OEE)」「調達リードタイム」など、やや間接的な指標もあります。
大切なのは、“なぜこのKPIを設定するのか”を現場の目線で深く掘り下げ、合意形成を図ることです。

たとえば、「歩留まり率」は生産工程の無駄や品質トラブルを表す重要な指標ですが、現場としては単純に数値だけを掲げられても、「どこに手を入れたら良いのか」「何がボトルネックなのか」が分かりづらいことがあります。
そうしたときは、「不良発生工程ごとの歩留まり」「不良品要因別の件数」など、より現場密着型のKPIを設計し、“現場の声”を生かすことがカギとなります。

主なKPI項目とその算出方法:現場で使える具体例

製造現場でよく利用される主なKPIには、以下のようなものがあります。

1. 生産性(スループット)

生産性は、一定期間内にどれだけの製品を生産できるかを示す最も基本的な指標です。

【算出方法】
生産量 ÷ 作業工数(人・時間、またはユニット)
例:1000個(生産量) ÷ 200時間(作業時間)= 5個/時間

2. 稼働率(OEE:Overall Equipment Effectiveness)

OEEは設備の総合的な効率を示す指標で、多くの現場で活用されています。

【算出方法】
OEE = 操業時間のうち稼働時間(可動性) × 生産スピード(性能) × 良品率(品質)

例:90%(稼働率) × 95%(性能) × 98%(良品率)= 約83.7%

3. 納期遵守率(OTD:On Time Delivery)

「約束どおりに納める」信頼性を表す指標です。
バイヤーや顧客が最も気にするKPIの一つです。

【算出方法】
納期内出荷数 ÷ 注文総数 × 100%

4. 歩留まり率

素材投入量に対して、実際に製品として合格した割合を示します。
不良発生の“見える化”にも有効です。

【算出方法】
合格品数量 ÷ 総投入数 × 100%

5. クレーム・不良発生件数

顧客からのクレーム件数や、社内で検出された不良発生件数も重要なKPIです。
実数だけでなく、「不良率」「クレーム発生率」など、比率で管理します。

現場でKPIを運用する場合は、「日々数字を記録し、傾向をつかみやすくする」「ムリ・ムダ・ムラの原因分析とセットで運用する」という癖づけが重要です。

KPI導入・設定の注意ポイント:アナログ業界の“昭和マインド”を乗り越える

多くの製造業現場では、「KPIって面倒」「数字で評価されるのは苦手」という心理的な壁が根強く存在します。
特に昭和から続くアナログ系の企業は、“ノリと根性”に頼りがちで、KPI管理になじめない傾向が見られます。

そうした現場では、KPI導入の際に「なぜこの指標が大事なのか」「数字が現場の何に影響するのか」といった“意義の共有”をまず重視しましょう。
KPIそのものを目的化せず、“現場がより働きやすくなるためのツール”“個人攻撃の道具ではなく、職場全体を成長させるためのナビ”であることを何度でも説明します。

また、KPIは「現場で記録でき、現場ですぐに理解・活用できるもの」にとどめましょう。
複雑怪奇な帳票や、管理部門だけが集計して現場は「数字の意味が分からない」状態では、むしろ逆効果です。

さらに、「KPIを守らなかったら罰則」ではなく、「KPIから改善のヒントを探そう」というポジティブな使い方も欠かせません。

KPIに基づく評価手法:現場目線の実践ポイント

KPIは設定するだけでは意味がありません。
「定期的なレビュー」「目標値とのギャップ分析」「結果に対するフィードバックと改善アクション」という一連のPDCAサイクル運用が重要です。

1. 現場巻き込み型のKPIミーティング

KPIの進捗報告を会議体で共有する際は、現場リーダーや作業者も主体的に発言しやすい雰囲気づくりが必要です。
単に「数字が悪い」と叱責するのではなく、「どこで、なぜ悪化したのか」「現場の声として改善アイデアはあるか」など、双方向のコミュニケーションを意識します。

2. KPIに基づくアクションプラン作成

KPIが目標値に到達しない場合、「具体的にどの工程」「どの職種」「どの設備」などを分解し、少人数のタスクチームで原因追究を進めます。
“数字”はあくまでスタート地点であり、現場が納得度高く改善活動を計画できるようサポートしましょう。

3. KPI評価の人事・評価制度への反映

成績優秀者やアイデア実現者へのフィードバック・表彰制度の設計も効果的です。
逆に、数字だけで評価するのではなく、「プロセス」「取り組み内容」も含めて総合評価することが現場のモチベーション維持のカギとなります。

バイヤー・サプライヤーの立場から考えるKPI

バイヤーの立場に立つと、「供給側(サプライヤー)がどんなKPIを重視しているのか」「どこで苦労しているか」を知ることは大きな武器となります。
たとえば、サプライヤーが「納期遵守率99%」を達成したいと思っていても、原材料の調達リードタイム、社内の段取り替え工程、物流トラブルなど、さまざまな現場要因が絡んでいます。
バイヤーもKPIを「サプライヤー側の現実に即した目標設定」に変えてあげることで、パートナーとして建設的な関係を築くことができます。

また、サプライヤーとしては「自社がどんなKPIでジャッジされているか」を理解し、逆算型で現場を整備する視点が欠かせません。
受注側も納期・品質だけでなく、「リードタイム短縮」「原価低減」「トレーサビリティ強化」など、多様なKPIを意識し、数字で見せられる体制を持つことが新たな信頼獲得に直結します。

デジタル化とKPI:昭和からの脱却と次世代工場のヒント

IoTやAI、スマートファクトリーが注目される今、KPI管理にも“アナログからデジタル”への発想転換が求められています。
センサー導入やBIツールの活用によって、「手書き日報に頼らず、リアルタイムなKPI“自動見える化”」が可能になりつつあります。

しかし注意すべきは、ただシステムを導入するだけでは“昭和の現場”が変わらないという点です。
「なぜ見える化したいのか」「データを現場でどう活用したいのか」を現場メンバー全員で共有し、“デジタル化”=“現場主義の深化”という意味づけを徹底することが必須です。

まとめ:KPIを現場の成長エンジンに変えるために

KPIは、単なる数字合わせでも、現場を縛る監視ツールでもありません。
現場がその本質・目的を理解し、“自分たちがより安全に、効率的に、やりがいを感じて働ける環境作り”のために活用できてこそ、真価を発揮します。

いま製造現場は、昭和流の“根性管理”とデジタル時代“データドリブン経営”の間で揺れ動いています。
その橋渡し役として、現場密着型のKPI活用を軸に、現場力と現場の知恵を最大限に生かす仕組み作りに挑戦しましょう。

現場で働く皆さん、バイヤーを目指す皆さん、そしてサプライヤーの皆さん。
KPIの“数字”の裏にある現場のリアルを、ぜひ新たな視点で再発見してみてください。
きっと「昭和流」と「次世代型」のハイブリッドな現場改革が進んでいきます。

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