- お役立ち記事
- ベンダー選定より先に決める小規模DXのKPIと計測単位
ベンダー選定より先に決める小規模DXのKPIと計測単位

目次
はじめに:製造業のDX—ベンダー選定の前にやるべきこと
製造業の現場では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれて久しいですが、業界の現実は昭和的なアナログ文化が根強く残っています。
とくに中小~小規模の工場では、「IoT化」「見える化」を推進しようとしても、何から手をつければいいのか分からず、結局ベンダー任せになってしまうケースが少なくありません。
しかし、実際にDXを成功させたいなら、ベンダー選定よりも先に必ずやるべきことがあります。
それが「KPI(重要業績評価指標)」の設定と、「計測単位」の明確化です。
この記事では、現場目線に立った実践的なDX推進のため、なぜこの2つが重要なのか、どうすれば小規模事業でも負担少なくDXをスタートできるのか、具体的なノウハウを解説します。
KPI設定が先行しないDXは、必ず失敗する
DX推進の主軸は、あくまで「現場業務の価値向上」です。
そのため、DXの成否を評価できるKPI設定がなければ、どのようなベンダーと組んだとしても、その成果を正しく測定できません。
ツール導入ありきの失敗パターン
小規模工場の現場でよくある失敗として、「IoTセンサーで設備稼働率を自動取得したい」「ペーパーレスのタブレット入力にしたい」といった”ツールありき”のDX構想があります。
しかし、これではデータが集まったとしても、「それが何の役に立ったか」は現場で実感しづらく、持続的な運用にはならないことがほとんどです。
KPI設定の失敗は現場のモチベーション喪失につながる
DXの現場導入でよく聞く声に、「データを取ること自体が目的化してしまっている」「現場作業者のメリットが無い」といったものがあります。
これは、「KPI(この取り組みによってどういう成果を上げたいか)」が曖昧なままDXが進められる典型パターンです。
現場責任者として成功させたいなら、まず「どんな成果を目標にするのか」(例えば「納期遵守率の向上」「リードタイム短縮」「不良率低減」等)をKPIとして明確に定義する必要があります。
なぜ計測単位を明確にしなければならないのか
KPIを設定するだけでなく、その評価を行う“単位(スパン・粒度)”を予め決めておくことが、小規模DXでは大きな意味を持ちます。
KPIの計測単位がブレることで起こる混乱
納期遵守率をKPIにした場合でも、「日別・週別・月別」のいずれの単位で計測するかによって、施策の意味合いは大きく変わります。
特に、中小製造業の現場では「日次で問題を検出し、その都度アクションできる」単位になっていないと、意思決定のスピードが鈍ります。
結果として「改善が遅れて効果が見えない」「現場が混乱してモチベーションが低下する」といった問題の原因になります。
現場の“肌感覚”とKPI単位を揃える
現場出身者がKPI単位を考える際に重要なのは、「普段の仕事のリズム(肌感覚)」と合わせることです。
例えば部品の調達なら「1週間単位で品薄状況を確認している」なら、それを基にKPIを設計するほうが、現場の納得感やアクションスピードが向上します。
つまり、ベンダーの提案システムが「日次データ取得」を前提としていても、自社現場がウィークリーの判断・対応をしていれば、「週次単位でアウトプットが出る」よう設計を組み直さないと、システム運用が形骸化しやすいのです。
現場目線でKPIと計測単位をどう設計するか
では、実際に現場の業務特性を理解した上で、どのようにKPIとその計測単位を設定すべきか、具体例を交えて解説します。
1. 業務フローを現場で分解する
KPI設計の前にまず、自社のメイン業務(生産、調達、品質等)の“標準的な流れ”を、できるだけ現場スタッフと一緒に棚卸ししましょう。
例えば、調達業務であれば、
– 発注計画の作成
– 発注書の発行
– 納品確認
– 検品・受入
といったプロセス別に、どこにボトルネックがあるか、どの場面で現場が時間や工数を割いているかを明確化します。
2. KPIは「誰がアクションできるか」を意識する
現場で良くある失敗は、「経営層」の視点で売上高や営業利益率などマクロ指標ばかりをKPIにしてしまうことです。
小規模DXでは、現場リーダーや担当者が「今日は(今週は)このKPIの数値向上のためにこのアクションを打とう」と判断できる粒度の指標に落とし込むべきです。
例えば、
– 生産現場:直行直帰率(実作業にどの程度の時間を使えたか)
– 調達業務:仕入先リードタイム遵守率
– 品質管理:1次不良発生件数(週次ベース)
など、具体的な現場アクションに結びつくKPIが理想です。
3. 計測単位(タイムスパン)は「現場の締め」に合わせる
製造業では、「月次締め」を重視する伝統があります。
ですが、DXで効果を早く出すには、「週次」「日次」あるいは「バッチ単位」といった、より細かい単位で計測・アクションできる形を推奨します。
それぞれの業務で現場が「どの期間で実績を集計・評価・改善しているか」を把握し、その単位でデータ取得やレポーティングを運用します。
アナログ現場でもDX成功のカギ—KPI・単位設計をどう現場に根付かせるか
昭和型のアナログ現場において、KPI等の数値管理やデータ化習慣が根付かせにくいという悩みは多いものです。
その攻略法をご紹介します。
紙とホワイトボードDXから始める
初期投資やITリテラシー問題でIoTやSaaSに踏み切れない場合、「現場ボードでの手書きKPI管理」を取り入れるのも有効です。
たとえば、日替わりで「生産達成率」や「不良件数」をマグネット張り出しで“見える化”し、毎朝ミーティングでチェックすることで、現場に数値目標意識が浸透していきます。
これは最先端のIoTやAIを活用するDXではありませんが、「現場主導のKPI運用→“次のステップ”への橋渡し」として非常に効果的です。
現場巻き込み型KPI運用のコツ
現場にKPI管理を根付かせるためには、「現場リーダーが自分たちで改善策を出せる指標」「成功体験の共有」が欠かせません。
現場ミーティングでKPIと実績・改善策のPDCAを回す習慣をつくりましょう。
また、達成者へのちょっとしたインセンティブや、他チームとの“競争・称賛”体験を組み込むことで、自発的な参加意欲を高められます。
ベンダー選定はKPI・単位が決まってから—その理由とは
KPIと単位が現場で合意できたそのタイミングで、初めて「どんなITツールやソリューションなら、そのKPIを維持・改善できるか」をベンダー比較で検討すべきです。
システム選定基準の最重要ポイント
現場実態に合ったKPI・単位が明確であれば、「それを簡単・確実に集計できる」「使いやすい」「現場が負担なく運用できる」システムやツールを選ぶという、合理的な判断が可能となります。
よくあるシステムベンダー主体の導入(「システムに合わせて現場が変われ」という上意下達方式)は、高確率で頓挫します。
逆に、「自分たちでKPIの粒度や単位まで設計し、それを自動取得できるからこのツールを選ぶ」という流れになると、導入後の現場運用もスムーズになります。
まとめ:小規模DXのスタートダッシュは現場主導のKPIと計測単位設計から
製造業のDX推進、とくに小規模工場やアナログ色が強い現場で成果を出したい場合、最も重要なのは「ベンダー選定」よりも「自分たちのKPIおよび計測単位設計」です。
現場の業務実態、肌感覚、組織文化を丁寧に棚卸ししたうえで、誰がどんな指標をどの単位で見ることで日々アクションできるか。
これが明確になった時点で、はじめて最適なデジタル化やベンダー選定が始まります。
現場力を最大限に引き出すためにも、まずは”即実践可能なKPI/単位の明確化”から、地に足のついた小さなDXをスタートさせてください。
この「足元を固めるアプローチ」こそが、製造業の未来と皆さまのキャリアに確実な成長をもたらす最初の一歩となります。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)