投稿日:2025年10月25日

ペットボトルラベルがしわにならない貼付テンションと乾燥風制御

はじめに:ペットボトルラベル貼付の品質が担う役割

清涼飲料やミネラルウォーター、調味料といった日々の暮らしに欠かせない商品には、必ずと言って良いほどペットボトルが使われています。
そして、そのペットボトルの外観品質やブランドイメージを大きく左右するのが「ラベル貼付」です。
ラベルのしわや浮きは、見た目の悪さだけでなく、商品の信頼性や購買意欲の低下につながります。

特に昨今は、消費者の目が一層厳しくなっています。
SNSやレビューサイトですぐに商品クレームが拡散されてしまう時代。
ペットボトルのラベル貼付における「しわゼロ」への追及は、もはやメーカー各社の“生き残り戦略”と言っても過言ではありません。

この記事では、現場経験者としての知見から、ラベルしわの主因である「貼付テンション」と「乾燥風制御」について、実践的なノウハウをご紹介します。
現場で悩む担当者・バイヤー志望者・サプライヤーそれぞれの視点でご活用いただける内容です。

ラベル貼付工程の基礎知識:なぜしわが発生するのか

ペットボトルラベル貼付工程は、一見シンプルな作業に見えます。
ですが、実際には複雑な物理現象とノウハウの集大成です。

まず、しわの原因を大きく2つに分けて考えます。

1. 貼付テンション(引っ張り具合)のミス

ラベルは、ボトルに巻き付ける瞬間に「最適な引っ張り力=テンション」が必要です。
これが強すぎればラベルが伸びて浮いたようになり、弱すぎればたるみやしわを生みます。

例えばシュリンクラベルの場合、加熱前の“緩い巻き付き”が後工程で大きなゆがみやしわにつながることも珍しくありません。

2. 乾燥風(エアーブロー)の管理不足

糊貼りラベルやロールラベルの場合、ラベル貼付後にボトル表面の水滴や糊を適正に飛ばす「乾燥風(ヒーター&エアーブロー)」工程があります。
この風量・角度・温度のコントロールを誤ると、部分的な乾燥ムラやしわ、場合によってはラベルの一部が変形したまま固着してしまいます。

ポイント:
しわ=ラベルとペットボトル表面の一体感低下。
“モノと機械と風”の三重奏で生じる誤差がその正体です。

ラベルしわゼロの実現に向けた具体策

現場の経験から言えば、最も信頼できる対策は「各要素のシビアな可視化」です。
その工程ごとの重要ポイントを解説します。

1. 貼付テンション制御の極意

ラベル貼付テンションの最適化で重要なのは、複数の要因を踏まえた“調整作戦”です。
アナログで属人的な調整に頼っていませんか?
現代では以下のような方法が主流になりつつあります。

  • テンションセンサ導入: ラベル供給ローラー部に張力センサを設置し、リアルタイムで張力データを監視します。異常値が出たら自動でアラーム・ラインストップ。機械依存から“数値管理”への一歩です。
  • 巻取りトルクコントローラ: ボトル接触部やセンタープレート部にトルク管理を導入し、ロール交換や機種切替後でも一定のテンションを維持します。
  • 作業標準書の見直し: 「職人の勘」頼みから、「工程内の点検ポイント」「可視化したテンション値」など定量基準を加筆。ロットや材料ごとに管理値を明記します。

さらなる高度化を目指すなら、画像認識やAIによるラベル貼付状態の自動判定も主流となってきました。
カメラを使った外観検査で、しわの発生箇所・傾向を自動で蓄積、工程改善につなげます。

2. 乾燥風・エアーブロー管理方法の勘所

乾燥工程は、しわ・浮きが顕在化しやすい重要ポイントです。
トラブルが発生した際には、次の観点で現場をチェックしてみてください。

  • 風量・風向・温度の三位一体制御: 強すぎる風や熱はラベルをたるませ、しわ拡大の温床になります。逆に弱すぎると乾燥が不十分。メーカー推奨値だけでなく、実機で“乾燥状態の見える化”を優先しましょう。
  • エアノズルの位置固定: 設備点検のたびにノズルが少しずつズレがちです。日常点検項目に“ノズル角度・高さの基準固定”を加え、ズレた場合にすぐ復旧できるよう治具やマークを用意するとミスを確実に減らせます。
  • ライン速度とヒーターパワーの連動: 生産速度アップに伴い、乾燥不足となる場合がしばしば発生します。速度・ヒーターパワー・エアー調整を一緒に自動連動させる制御が、省人化と品質安定に直結します。

アナログ現場に根付く“昭和的慣習”からの脱却法

製造現場、とりわけペットボトルラベル貼付の現場の多くでは、いまだにベテラン作業者の経験則に頼りがちです。
しかし、それは属人的な品質ばらつきや“誰にでもできる”への障害=リスクです。

脱アナログの具体的ステップ

  1. 現場からの『ナゼなぜ分析』:しわが出た時の「なぜ」を繰り返し、根本原因を数値・映像で明文化する癖を徹底しましょう。
  2. テンション・乾燥風に管理指標を設け、帳票・グラフで見える化します。
  3. 不良現象(しわ・浮き・ずれ)のサンプル画像と対策フローを工程内に“見える場所”に掲示。誰もが現場で迷わず動けるようにします。
  4. 段取り替え時や初物ラベルの試運転における「現物合わせ」ではなく、目標管理(温度計・風量計・テンションゲージ等)を標準化しましょう。

このプロセスを循環させて、やがては自動制御・AIフィードバック工程へ発展させることが、生き残る製造現場の“未来志向”です。

サプライヤーやバイヤーに求められる視点

サプライヤー・バイヤーの立場では、「なぜこの工程でここまで細かく管理しているのか」を理解することが重要です。

ラベル材料自体にも制約(伸縮性・素材・厚み)があります。
メーカーによっては温度・湿度への対応力が異なるため、現場エンジニアとの緊密な情報共有が不可欠です。

また、バイヤーとしては設備の更新案(テンション制御機器、乾燥装置)や材料の切り替えを考える際、“現場担当が納得して即運用できる”フローをいかに用意できるかが肝となります。

現場力を最大化するコミュニケーション術

  • ラベルテストランの際、貼付後の不良傾向とその発生条件を必ず現場側にヒアリング。
  • テンション・乾燥条件の標準値だけでなく、「どんな時にどんな問題が出やすいか」を現場主導で洗い出す。
  • 新しい管理指標(IoT機器、カメラ検査、AI制御など)の導入事例や検証結果を共有し、現場担当者の「自分事」としてもらう。

このような“現場から引き出す質問力と提案力”は、バイヤーや調達担当者にとっての競争力そのものです。

まとめ:ペットボトルラベル貼付品質の最終目標

ペットボトルラベル貼付の「しわゼロ」は、単なる現場努力の積み重ねだけで実現されるものではありません。
テンション、乾燥風、その両者を繋ぐ工程可視化、標準化ツールの活用。
さらに、現場と管理、材料メーカーとバイヤー、全てが情報をオープンに連携することが不可欠です。

昭和的アナログ作業からの脱却は、現場力×デジタル力の“ハイブリッド化”によって初めて到達できます。
今後の設備投資や人材育成では、現場主義とデータ活用の両輪で“しわゼロ”を達成し、より魅力的な製品を市場に届けましょう。

この記事が、現場での実践的ヒントや新規提案の一助となれば幸いです。

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