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データを経営に活かす仕組みが整わない問題

目次
はじめに:データ活用の壁、なぜ壊せないのか
日本のものづくり現場では、DX(デジタルトランスフォーメーション)やデータドリブン経営が大きなトレンドとなって久しいですが、「経営にデータを活かす仕組みが整わない」という問題はいまだ根深く残っています。
昭和からの慣習や属人的な運用、紙文化からの脱却が進まない現場においては、土台作り自体の難しさすら語られる状況です。
この記事では、データ活用の本質を現場目線で掘り下げながら、20年以上もの現場経験で感じたリアルな課題、実践的な解決アプローチをひも解きます。
そして調達購買、生産管理、品質保証、自動化推進など、製造業の要といえる業務領域において、どのようにすれば“昭和のアナログ現場”からデータを経営に活用する新しい地平線へとシフトしていけるのかを深く考察していきます。
なぜ現場ではデータが活かせないのか
1. データが「現場のため」になっていない現実
多くの現場ではデータを集める仕組み自体は導入されています。
しかし、その主目的が経営レポートや本社への提出用で、現場の課題解決には活かされていません。
バイヤーやサプライヤーも、ようやく「データ共有しましょう」と言われても、実際には現場の本音や肌感覚が置き去りになり、データ活用にぬくもりや意味を感じていないのが実態です。
2. データのサイロ化、組織の壁
調達部門、生産管理部門、品質管理部門、それぞれが独自にデータを管理しており、連携ができていない企業が少なくありません。
業務単位では立派なデータベースが構築されているのに、全体最適がはかれず、“絵に描いた餅”となってしまうことも…。
3. アナログ文化と現場の抵抗感
図面や工程指示書、検査記録など紙文化が根強く、ハンコを押すことこそが「責任の証」と考えている方も多くいます。
20年以上前から続くやり方がベストと固く信じている先輩社員や現場リーダーも、少なくありません。
デジタル機器の習熟度より、「慣れた手順で失敗しない」ことが安全・安心だという感覚が優先されがちなのです。
4. データを活かすスキル・人材不足
データを加工・分析できる人材が圧倒的に不足しており、「データを見るだけで何を判断すればいいのか?」と悩む管理職も多々います。
せっかくIT化が進んでも、「数字は苦手」「エクセルはなんとなく使ってる」といった声も根強いのが現実です。
データを経営に活かすための昭和的アナログ現場の実態分析
製造業の慣習と“見えない手”の存在
製造現場は「ものができて当たり前」という空気のなかで、長年培った職人技や、無言の仕組みに依存してきました。
例えば「この不良率なら怒られない」とか、「図面のここは担当Aさんしか分からない」など、暗黙知が多く潜んでいます。
本来、デジタルデータで再現できるはずのノウハウや現場勘が、“属人化”によってクローズドになりやすく、これこそがデータ経営導入の最大の壁なのです。
バイヤーはなぜアナログデータを欲しがるか
サプライヤー側からみると「今からエクセルや紙書類をデジタル化するのは手間がかかる」と感じる仕事が、バイヤーには「定量的な評価や追跡可能性のためには必要不可欠」と見なされがちというミスマッチがあります。
昭和型のアナログ管理は現場の柔軟な運用に強みがありましたが、現代のバイヤーにとっては「再発防止が再現できるか」「工程のトレーサビリティを担保できるか」が信用の源泉へと変わっています。
ここに製造業間の深い意識ギャップが存在します。
真のデータ活用とは“現場起点の仕組み作り”
現場と経営をつなぐ“翻訳者”の必要性
ITシステム導入プロジェクトの多くが失敗する理由は、経営層が現場の課題やリアルを把握しないまま、ITベンダー主導で「最先端の仕組み」を押し付けてしまうからです。
現場の声を“経営語”に、経営課題を“現場語”に落とし込める“翻訳者”(もしくはフルスタックバイヤーやプロジェクトマネージャー)が不可欠です。
この役割を担う人材がいないと、システムは使われず、データは活きません。
業務フローとデータの再設計、“小さく始めて早く回す”
いきなり全工程・全社員の意識改革は不可能です。
まずは紙表やエクセル台帳が多発している工程、例えば「帳票記入ミスが多く、確認作業に時間をとられる検査記録」などから始めてみましょう。
現場リーダーと「なぜその記録が必要なのか」「集めたデータはどう業務に役立つか」を共有し、徐々に小さな成功体験を積み重ねていくのが現実解です。
“データ活用ワーキンググループ”のすすめ
調達・生産管理・品証・現場作業者など多職種メンバーで「現場課題の見える化×データ活用で何を変えたいか?」を打ち合わせる場を持つことも有効です。
現場の困り事・本音・職人気質を可視化し、すいか割りのような「暗中模索」から脱却した小さなゴールを共有することが継続のコツです。
製造業の未来を切り拓く、“データ経営の新地平”への道筋
データが経営資源であり、新たな企業競争力となる時代へ
製造業の現場で長年活躍してきた方々は、「データやITよりも、人の勘・経験・責任感こそ企業の土台だ」と考えてきました。
確かに、ものづくりは人が核であり続けます。
ただし、これからは「データ×現場力」が新たな差別化軸となります。
サプライチェーンが複雑化し、リスク分散や柔軟な意思決定がより求められる今、正確かつタイムリーなデータが経営判断の質を大きく左右します。
“昭和モデル”と“デジタルモデル”の融合
紙やアナログ管理文化にも、それなりに合理性があったことを否定する必要はありません。
本当に危険がある現場や「電子化ならではのノイズ」が業務に支障をきたすケースもあるため、ゼロかイチかの発想で運用現場を置き換えるべきではないでしょう。
「本当に減らしたい無駄」は何か、「本当に残したい属人技」は何か――。
こうした現場主義の視点を失わず、必要な部分からデジタル化し、その成果を経営の武器に転換していくことがポイントです。
これから求められる“ラテラル人材”とは
単に「ITを導入できる人材」や「現場を知る職人気質」だけでなく、両者を横断して結びつけられる“ラテラル(多様な視点・文脈で横断できる)人材”がこれからのデータ経営を牽引します。
IT×現場感覚、管理会計×生産管理、調達×原価×トレーサビリティ、など部門横断で目の前の課題を自分ごととして捉え、経営的な視点で改革アイデアを提案できる人材が不可欠です。
まとめ:データ活用は“現場の温度”を上げることから
データを経営に活かすための仕組みづくりが進まない背景には、心理的な抵抗や業界特有の習慣、昭和的な属人化など数多くの要素が横たわっています。
ただデジタル化すれば解決する、と安易に考えるのではなく、“現場にとって意味があり、役立つデータ活用”による小さな成功体験の積み重ねから始めてみてはどうでしょう。
現場の温度を上げ、現場の声を経営の判断軸にのせることこそ、いま製造業に問われている“新しい昭和”からの進化だと実感しています。
これからの製造業の発展に向けて、現場から生まれるリアルな知恵を惜しみなく経営へ活かしましょう。
バイヤーを志す方も、サプライヤーの方も、現場で今何が起きているかを知り、その現実を原点に据えた仕組み作りの大切さを、ぜひ一緒に考えていければ幸いです。
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