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現場でデータ活用が進まず属人的対応が残る課題

目次
はじめに:製造業における「現場の属人化」とデータ活用の壁
製造業の現場では、近年「デジタル化」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。
経営層や企画部門では、IoTやAIを駆使した生産性向上、品質向上、コスト削減といった華々しいビジョンが語られています。
一方で、実際の現場では未だ多くの業務が「人に依存」したまま属人的におこなわれています。
せっかくデータを収集しても、それが活かしきれず目先のトラブルやベテラン頼みの対処が目立つ――
こうした課題は、日本の製造業全体が長らく抱えている「昭和から抜け出せないアナログ体質」に直結しています。
本記事では、現場目線でなぜデータ活用が進まないのか、その業界根深い背景や実情を分析しながら、「脱・属人化」に向けた現実的なヒントをバイヤーやサプライヤーの方と共有します。
なぜ製造現場はデータ活用が進まないのか?
1. 昭和的な現場文化と「勘・コツ」信仰
日本の製造現場の多くでは、「ベテランの勘・コツ」が重宝されてきました。
熟練技術者が長年培った経験や現場の感覚こそが品質や安定稼働の源泉と考えられてきたからです。
この価値観は、昭和〜平成初期にかけて製造業が世界をリードした成功体験に根ざしています。
「マニュアルよりも現場の声」「異常があれば体で感じとる」「データよりも人を信じる」という発想が、今もなお根強く残っています。
単なる古さだけでなく、設備や生産品ごとの多様性、属人技術による微妙なチューニングといった柔軟な対応力を強みにしてきた側面もあるため、この土壌を変えるのは容易ではありません。
2. デジタル情報と現場ノウハウの乖離
IoTやセンサー技術が進化し、機械やラインから膨大なデータが取れるようになった今でも、
それらが「現場で使える知恵」に昇華されず、データは見るもの・集めるものになりがちです。
データの解析は本社のIT部門や経営スタッフなどが主導し、現場の担当者は「レポートとして目を通すだけ」。
一方で、本当の現場トラブルは、ベテランが目や耳・指先で異音や振動を感じ取り、
「データでは異常値が出ていないけれども、これは危ない」と嗅ぎ分ける中で対処している――
こうした乖離が、せっかくのデータ活用の入口を狭めています。
3. データ化のための作業負担増大と現場の「やらされ感」
紙の日報やExcel手入力といったアナログ管理から脱却するには、データ化プロジェクトが必要です。
しかし、その過程で現場が受ける印象は「また余分な仕事が増えた」「このデータ、何に役立つのかわからない」「今のやり方のほうが早い」など、消極的なものが大半です。
これは「なぜそのデータが必要か?」の説明や納得が不十分なまま、上意下達ですすめられるケースが多いためです。
業務や価値観の変革には、当事者が「これは価値がある」と腑に落ちる体験、ストーリーが不可欠です。
属人的な業務が残ることのリスクと課題
1. ベテランの退職や世代交代によるノウハウ消失
大手メーカーで20年以上働いてきた実感として、「まもなく還暦を迎える職人」や「30年以上同じ工程に携わってきたベテラン担当者」が多い現場があります。
彼らがいなくなった途端、「あのタイミングの調整がうまくできない」「突発トラブルへの対処法がわからない」といった問題が噴出します。
これは、現場で必要なノウハウや判断基準が「人の頭の中」に閉じ込められているため、新人や中堅が成長する時間的余裕がない現実を映し出しています。
2. ミスやトラブルの再発・属人化による統一基準の欠如
属人的なオペレーションでは「人によってやり方が違う」「応用が利かない」という欠点があります。
たとえば同じ材料受け入れでも、Aさんは一本一本厳しく検品し、Bさんは流れで大まかに確認、と品質差が。
また、何度も同じトラブルが再発しやすくなり、PDCAやカイゼン活動が形式化・形骸化しやすくなります。
3. サプライチェーン全体の見える化遅れと競争力低下
調達・購買・生産管理などの分野でのデータ活用が遅れると、原材料のコスト変動や納期遅延、在庫過多・欠品のリスクが常につきまといます。
属人的な購買判断では、複数サプライヤー間の最適発注や予防的な契約切り替えが難しく、
「なぜこの決断をしたのか」「どこに隠れコストがあるか」という全体最適の視点が持てず、バイヤーの力量頼みになります。
このような属人的体質はサプライヤー側にも波及し、パートナーシップより「個人間の信頼」「根回し」優先の昭和的度合いが強く残ります。
現場データ活用のためのラテラルシンキング的アプローチ
1. ノウハウ伝承を「見える化」するための工夫
属人的技術を形式知化するためには、現場の体験や判断プロセスを「言語化」「数値化」し、データベースへ落とし込むことが重要です。
ただし、単純なヒアリングや紙マニュアルではベテランの感覚や暗黙知が埋没してしまう危険があります。
おすすめは「動画撮影+ナレーション」、現場で生起したトラブルや微妙な調整について、「なぜ・何を考えてその判断をしたか」を本人の言葉で記録しておく方式です。
こうした映像+言葉の組み合わせは、AI解析や今後の教育ツール活用にもつながぞます。
2. データは「何のため」に活用するか――現場主導の問題設定
データ活用推進で陥りがちなのが「とりあえずデータを集める」こと自体が目的になってしまう罠です。
大切なのは、現場が本当に困っていること、たとえば「歩留まりが安定しない」「原材料ロスが読めない」といった実感に根ざした問題を明確に全員で定義し、
その解決手段として必要なデータや仕組みを絞り込むプロセスです。
ベテランも巻き込んで小さな目標を設定し、成功体験(「このデータがこう役立った!」)を積み重ねることで、「データ=現場を助けるツール」という認識が醸成されます。
3. バイヤー・サプライヤー間の透明性と連携強化
バイヤーの観点からは、サプライヤーの納品品質や安定供給力を、属人的な関係値だけでなく「データ+ストーリー」で評価する流れにシフトすることです。
「納期遵守率」「品質異常件数」「対応速度」などを数値指標で見える化しつつ、それをベースに「どう改善してきたか」「現場でどんな工夫をしているか」を具体的に話し合う文化に変えていくこと。
これによって「あの人がいないと困る」といった個人依存体質を減らし、両者の「組織力」「現場力」強化につながります。
アナログ業界こそ、データ活用でチームの底力を高めよう
現場目線でのデータ活用とは、「全員が同じ判断軸を持ち、情報を共有しながら最適解を出せる仕組み」づくりです。
昭和的な属人化体質やアナログ管理には、歴史的な必然や強みがあったことも事実です。
ですが、AI・IoT・RPAといったツールが一般化するこれからの時代「人の感覚とデータをどちらも生かす」ラテラルな思考が求められます。
たとえば、AIによる異常予知アルゴリズムの構築においても、初めは「ベテランAさんの異音検知」を基準モデルとし、
複数の条件やノイズを現場で検証しながら更新していく。
現場でしか拾えない知恵を「データ化」し、そのフィードバックを人が読むことで、徐々に属人的な部分が薄まり、「誰がやってもうまくいく」小さな成功が積み上がります。
まとめ:現場に寄り添ったデータ推進が「強いモノづくり」への道
製造業の現場には、膨大なノウハウや知恵が眠っています。
それを属人化のまま放置するのではなく、データと融合させる――この課題に正面から取り組むことで、競争力のある強い現場が生まれます。
経営層・バイヤー・サプライヤー・現場それぞれが、「なぜデータが必要なのか」を納得できるストーリーを共有し、小さなカイゼンを愚直に積み重ねていくこと。
それが、昭和から続く日本のものづくりの伝統と、未来への新しい地平線を開拓する唯一の道だと私は確信します。
この気づきと実践が、製造業全体の発展と、そこで働く一人ひとりのやりがいにつながることを願っています。
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