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開発者同士の情報共有が不足し同じ失敗が繰り返される根本問題

目次
はじめに:なぜ同じ失敗が工場現場で繰り返されるのか
日本の製造業において、開発現場では「似たようなミスが毎年のように繰り返されている」「誰かが指摘した課題が次の担当者に伝わっていない」といった悩みをよく耳にします。
このような状況は、ときに安全や品質トラブル、生産効率の低下にまでつながります。
なぜ、開発者同士の情報共有がうまくいかず、同じような失敗を繰り返してしまうのでしょうか。
本記事では、現場目線で見た課題の根本を深掘りし、アナログな業界体質や日本的組織文化に根差した要因、また情報伝達や知識継承の実践的な改善法について考察します。
さらに、これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーの立場でバイヤーの思考を知りたい方にも役立つ内容を提供いたします。
現場で繰り返される「同じ失敗」の実態
身近な典型例:過去のミスが活かされない現象
たとえば新製品立上げの際、「この工程設計は前回同じように失敗したのに、また繰り返してしまった」「試作時のトラブル内容が量産に伝わっていない」といった状況があります。
これは規模の大小関わらず、多くのものづくりの現場で見られる現象です。
実際に私の経験でも、5年前にトラブった内容が、組織的な引き継ぎや記録に残されないまま、別プロジェクトで再発し、大きな損失となった例もありました。
現場の責任者や工場長経験者として「こんな非効率がなぜ繰り返されるのか」とやりきれなさを感じることもたびたびありました。
作業者・開発者の心理側面
多くの現場担当者は、「忙しさで伝える暇がなかった」「自分が辞めたら関係なくなると思っていた」といった本音を抱えています。
また、失敗を記録したり報告することで「責任追及されるのでは」という心理的な抵抗感も根強くあります。
こうした背景には日本の「ミスは隠すべき」「過去より前向き」という感情的文化も横たわっています。
なぜ情報共有が行われないのか?根本的な障壁を探る
1. アナログな業界慣習と組織のタコツボ化
昭和の時代から受け継がれる「紙と口頭伝達」が、いまだに主要な情報共有手段として残っている現場は多いです。
議事録やノウハウも「ファイルサーバのどこか」や「ノートの中」、「ベテランの頭の中」でしか管理されていません。
結果として、異動・退職・定年などで知見の断絶が容易に起こってしまいます。
また、部門ごとに「縦割り」で動きがちで、設計・生産技術・品質保証などの間で十分な情報の往来がありません。
本来バリューチェーンの川上(設計)から川下(生産、調達、品質)まで知見が共有されるべきですが、「自分の部署のことしか知らない」というタコツボ意識が壁となります。
2. 形式知化の困難さ
知識や失敗例は、語り継がれるべき「暗黙知」と、記録・マニュアル化可能な「形式知」に分けられます。
日本の現場では、語り合い・空気で理解し合う文化の影響で、失敗事例のノウハウが体系的に整理されず、同じ現場に長くいる人以外には伝わらない傾向が非常に強いです。
新人教育で「先輩の背中を見て覚えろ」という風土は、一方で引き継ぎの属人化・失敗知の消失を助長します。
3. システム・ツール導入だけでは解決しない「人」の問題
昨今はDXやナレッジ共有ツールの導入も進んでいます。
ところが、単なるシステム導入だけでは、本質的な問題は解決しません。
「誰も見返さない」「書けと言われるから形式的に残すだけ」「本音や背景まで書かれていない」など、実用的な知識継承にはなっていません。
システムはあくまで手段であり、情報を共有する意義・習慣・目的意識が組織全体で育まないと、せっかく共有基盤を作っても形骸化してしまいます。
バイヤーやサプライヤーも直面する「情報の壁」
バイヤーの視点:情報共有不足が生むリスク
調達・購買部門のバイヤーにとっても、過去の購買トラブルやサプライヤー選定ミスが繰り返されることは避けたいリスクです。
かつてA社を使った際に納期遅延や品質トラブルが出た、あるいは技術的な相性が悪かった、そうした経験が十分に次代の担当者まで伝わらないことが多いです。
新しいサプライヤー開拓やコストダウン策を講じる際、「どこから情報を集めるか」「どこまで社内の過去情報を生かせるか」が、バイヤーの力量の一つの軸になります。
一方で、購買部門側も属人化しやすく、異動や退職が発生すると過去の知見が丸ごと消える危険性を内包しています。
サプライヤーの立場から見た「バイヤー情報」の価値
サプライヤー側にとっても、「あの会社は過去にどういう課題を気にしていたのか」「どんな頻度で原料コストに意識するのか」など、情報共有されていればもっと有利に立ち回れた場面は多数あります。
実際には、サプライヤー側がヒアリングで知りえる範囲以上のバイヤー側課題が、十分に伝わっていないため、無駄な提案や誤ったアプローチをしてしまう事態が起こりがちです。
このように、製造業の川上・川下のいずれの立場でも、「情報共有の質」がビジネスの成果を大きく左右することを、あらためて自覚する必要があります。
情報共有不足がもたらす経営・現場への副作用
1. 品質・安全トラブルの再発
同じ失敗が繰り返されることで、重大な災害やリコール、顧客クレームとなって顕在化するリスクが高まります。
特に長期視点では、品質の評判や顧客基盤そのものを脅かしかねません。
2. 生産性やコスト競争力の低下
トラブルが再度発生すれば、都度人手・時間・コストがかかります。
本来避けるべき調達ミスや設計不良によって、余計な付帯作業や再設計費用が頻発し、ひいては企業全体の競争力にダメージを与えます。
3. 人材育成や組織活性化の阻害
ナレッジの断絶は、若手・中堅層の教育にも負の影響を与えます。
属人化・ブラックボックス化した仕事は若い人にとって魅力的な職場にはなりません。
優秀な人材の流出にもつながる根本原因となります。
製造業で「同じ失敗」を根絶するための現場実践策
1. 知識の可視化:情報を「探す」から「使う」へ
現場が活用するためには、まず情報が「見える化」されていることが不可欠です。
過去の失敗事例をわかりやすいフォーマット(例:失敗年表、要因カテゴリー別リスト、フローチャート形式)でまとめ、担当者異動や世代交代時に必ず共有する仕組みが求められます。
また、館内掲示や朝礼で「今日の失敗事例」をクイズ形式で紹介するなど、失敗情報が日常的に全員の目に触れる工夫も有効です。
2. 情報共有の「文化」を根付かせる
システムやツールも大事ですが、もっと重要なのは「情報は共有するのが当たり前」という組織文化です。
たとえば報連相の徹底やOJT時の知識継承ルール、失敗事例の共有会の定期開催など、制度として継続して根付かせることが大切です。
さらに「失敗を報告した社員を咎めない」「失敗をオープンにすることは貢献」といった心理的安全性が担保されていると、情報の流れが格段に良くなります。
3. バイヤー・サプライヤー間でも“知見の共有”を意識
バイヤーは、単なる価格交渉や発注先選定だけでなく、「なぜその方針になったのか」「過去何が問題だったのか」まで自部署・部内で明文化し、社内ナレッジとして残しましょう。
これにより、新担当者でも同じトラブルを未然に回避できます。
サプライヤーは、バイヤーから積極的に「過去の経緯や失敗事例」をヒアリングし、提案活動の“質”を上げましょう。
また、バイヤーと定期的に失敗事例や反省点、今後の方針をディスカッションする場を設けるのも重要です。
4. 「当たり前を疑う」ラテラルシンキングの実践
表面的なルールやMS-Officeで共有しただけでは不十分です。
なぜ仕組みが形骸化したのか、その背景にはどんな感情や慣習・業界特有の大前提があったのかを深く掘り下げましょう。
他社成功事例の模倣ではなく、自分たちの現場・組織文化に合った共有の仕組みをゼロから再設計する柔軟な発想(ラテラルシンキング)が、新たな地平線を切り開く鍵となります。
まとめ:失敗を「成功の母」に変える組織を目指して
繰り返す現場の失敗は、決して「現場力がない」からではありません。
根本には日本製造業の体質や組織文化、心理的な壁、情報の形式知化の難しさなど、複数の要素が絡み合っています。
しかし、失敗を真正面から捉え、情報共有の壁を打破することで、驚くほど生産性も品質も向上します。
製造業に携わるすべての方、バイヤーやサプライヤーの立場を問わず、「同じ失敗を繰り返さない」知恵と仕組みづくりに、今こそ本気で取り組んでみませんか。
自分の経験・失敗が、次の世代の力となり、会社や業界の発展につながる未来を、一緒に創っていきましょう。
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