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投稿日:2026年1月21日

日用品メーカーのコストダウン相談で経営視点が欠ける場面

はじめに:日用品メーカーの現場に根付くコストダウン活動の“落とし穴”

日用品メーカーの生産現場や調達部門では、常に「コストダウン」が至上命題として語られています。
特に昨今の原材料価格高騰や物流費の増加を受けて、経営層から調達・購買部門へのコスト圧力がさらに強まっています。
一方で、現場で実際にコスト削減活動に取り組むうちに、「経営視点」よりも「現場都合」や「部門最適」が優先されてしまい、結果的に思うような成果が得られないケースも少なくありません。

今回の記事では、日用品メーカーで20年以上工場長も経験した私が、実際の現場で体感した「経営視点が欠けたコストダウン施策」の実例を踏まえ、なぜそのような“ズレ”が生まれるのか、そして経営的な観点を持った実践的なコストダウンのアプローチ方法まで、業界のリアルと新しい地平線を提案します。

コストダウン活動に潜む“昭和的慣習”とその限界

形式的な会議と帳尻合わせの目標設定

現場で繰り返されるコストダウン活動の多くは、稟議書や会議資料を“整える”ことがゴールになりがちです。
たとえば毎年、前年実績から一律3%のコストダウンを義務付ける…。
このようなルールは、日本の大手メーカーでよく見られますが、なぜ3%なのか、業界動向や自社の戦略と結びついているのかは現場で説明できないケースが多いものです。

その結果、短絡的な「サプライヤーへのコストダウン交渉」や、「安価な材料への単純な切り替え」に頼ることとなり、中長期の企業成長や価値最大化という経営視点を見失ってしまいます。
この点は、昭和時代に根付いた、“やった感”重視の慣習が、今でも多くの企業で残っている証と言えるでしょう。

部門ごとに最適化される“部分最適”の罠

「調達部門は安く買えば良い」「生産現場はとにかく歩留まりを上げれば良い」「開発は機能を盛り込めば良い」。
こういった発想に基づく“サイロ化”は、現場の効率を阻害し全体最適からどんどん遠ざかっていきます。
例えば、調達部門が無理に低価格な部材を導入しても、生産工程の不具合や品質不良が増え、結果としてトータルコストが上昇したといった事例も少なくありません。

全社的に本当の意味での「コスト最適」を考えるには、単なる購買コストではなく、サプライチェーン全体を俯瞰したTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)で評価する仕組みが求められます。

経営視点を欠くと生じる“本質的な問題”

短期的な成果が長期的成長を阻害する

よくある例が「今期のコストダウン目標だけを意識した交渉」です。
例えば、ある日用品メーカーの事例。
調達担当者がサプライヤーに5%のコストダウンを一方的に要求。
その場しのぎで一時的な価格低下は実現できましたが、生産ラインでのトラブルや部材品質の不安定化が続出。
サプライヤー側の利益圧迫により技術開発・改善提案も進まず、結果的に製品不良率や返品率が上昇し、中長期的な利益を毀損してしまいました。

経営視点とは、単に短期の数値目標達成ではなく、「未来の顧客価値」「持続的成長」「イノベーション創出力」といった企業価値全体の向上を見据えて、コストダウンを“経営戦略”の中で位置づけることです。

現場起点の“改善”が企業ブランドを毀損するリスク

調達や生産部門主導のコストダウン活動は、時として企業ブランドそのものを損なう危険性もあります。
たとえば、材料のグレードを下げてコスト削減に成功したとしても、顧客から「以前より使い心地が悪くなった」「品質が落ちた」という声が挙がれば、企業イメージは大きく傷つきます。
近年のSNS時代では悪評が瞬時に拡大し、ひとたびブランド価値が損なわれると回復に多大な時間と労力が必要となるため、経営視点でのバランスの取り方が不可欠なのです。

なぜ“経営視点”が現場で欠落するのか:その構造的要因

縦割り構造による“情報の断絶”

日本の大手メーカーでは、部門ごとに役割やKPIが厳格に分かれていることが多く、現場担当者に経営方針や全体戦略が十分に伝わっていません。
調達購買の担当者が日々の価格交渉や契約更新に追われる中で、自社の中長期ビジョン、顧客価値への貢献、新技術との連携…といった経営テーマを意識することは難しくなっています。
管理職側も“現場重視”に引きずられ、経営層との橋渡し役割を十分に果たせていないケースが散見されます。

評価制度の限界:数字だけに縛られた現場

実績評価や昇進・昇格の基準が「コスト削減額」や「仕入単価の低減」のみで決められる文化が根強く残っています。
この結果、社員一人ひとりが「一円でも安くすることが正義」と思い込み、リスクや“隠れコスト”“品質価値”には目を向けなくなります。
持続的な競争力向上に必須の「現場からの提案型改善」や「サプライヤーとの共創」「新たな仕組み作り」は評価対象外となり、“守りの購買活動”に陥ってしまうのです。

経営視点で見るべきコストダウンの本質

TCOの観点から総合的に判断する

経営視点を持ったコストダウンとは、単なる物品価格の削減だけにとどまりません。
TCO(Total Cost of Ownership)視点を導入し、調達・物流・保管・生産・品質・流通・アフターサービスまで一つの線で評価することが肝要です。
例えば、少し高価な部材でも、ランニングコストや耐用年数、トラブル発生率の低減、二次的な保管・物流コストの低減などトータルで見ればコストパフォーマンスが高くなる例は多数存在します。

サプライヤーとのパートナーシップ型アプローチ

古い時代の「買い叩き」ではなく、サプライヤーとWin-Winの関係を築き、ともに改善・革新活動を進めることが、現代のコストダウンには不可欠です。
実際、大手日用品メーカーではサプライヤーと合同でKaizen活動を実施し、工程ごとにコスト要因やムダを洗い出すことで、双方の利益最大化を図るケースが増えています。
このようなマインドセットの変革抜きに、これからの時代に求められる“競争力あるコストダウン”は実現しません。

実践的な経営視点のコストダウン推進ステップ

1.“会社の方針”に現場目線でコミットする

経営戦略や中期計画に盛り込まれている具体的な「目指す姿」を、現場言葉や行動にまで落とし込むことが大前提です。
たとえば「今後5年でグローバル売上比率を○○%に引き上げる」という方針ならば、調達品も海外調達比率・ロジスティクス改革・現地サプライヤー育成などの観点からコストダウン策を組み立てる必要があります。

2.全社共通KPIの見直しと部門連携

購買部門・生産部門・品質管理部門・開発部門などでKPIを統一し、「部門間最適」から「全体最適」への発想転換が重要です。
具体的には、単位原価だけでなく、不良率・返品コスト・サプライヤー提案による開発リードタイム短縮・環境コスト削減などを共通KPIとし、全員が“同じゴール”を目指す仕組みとしましょう。

3.サプライヤー評価軸の多軸化

単なる価格だけでなく、品質・納期遵守・技術提案力・改善活動への協力度・環境負荷低減・リスク分散など多軸での評価・選定を行います。
経営視点で「どのサプライヤーと組むことで市場競争力を高められるか」を長期的観点で選んでいくべきです。

4.デジタル変革による情報の“見える化”

現場と経営をつなぐには、データドリブンな管理が必須です。
IoTやAIを活用した生産・調達データの集約により、全社で現状分析・課題抽出・改善進捗を“リアルタイム”で把握できれば、想定外のムダやリスク、見逃されてきた価値を即座に発見・対処できるようになります。

まとめ:未来の競争優位は“現場起点+経営視点”で生まれる

これからの日用品メーカーにおいて、本当に価値あるコストダウンとは“単なる価格交渉”や“不必要な値引き要求”ではありません。
現場の知恵を最大限活かしつつ、経営視点から顧客価値や企業成長にどのように結びつくかを常に問い続ける――。
その姿勢が、結果としてサプライヤー・社内各部門・最終顧客までの信頼構築へとつながり、持続的な競争優位を生み出します。

昭和的アナログ文化に縛られず、「経営」と「現場」の両輪で進化できるか。
それが製造業の未来を切り拓く鍵となるのです。

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