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材料特性の理解不足が設計不具合を引き起こす王道トラブル

目次
はじめに:材料特性の理解が製品の命運を左右する
ものづくりの現場で幾度となく繰り返されるトラブルに「材料特性の理解不足による設計不具合」があります。これは製造業にとって決して他人事ではありません。現代の製造業界はデジタル化が進んでいますが、依然として材料選定や特性把握にアナログな慣習や昭和時代の考え方が深く根付いています。そのため、現場では同じような設計ミス、仕入先との誤解、品質問題が繰り返されているのが現実です。
この記事では、長年の現場経験と管理職視点から「なぜ設計段階で材料特性を軽視してしまうのか」「どのようなトラブルが起こり得るのか」、また「現場で役立つ具体的な対策」まで、実践的な内容を盛り込み解説します。これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの思考を知りたい方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
なぜ材料特性の理解不足が生まれるのか
設計者と現場の分断が招くミスマッチ
近年、設計現場と生産現場の接点が以前よりも希薄になっています。かつては設計者が現場に足を運び、材料の特性や加工性を肌で感じていたものですが、IT化による効率化の波の裏で、コミュニケーションはデータや図面のやり取りだけに留まりがちです。この分断が「現物の本当の姿」や「材料ごとのクセ」を見落とす大きな原因となっています。
材料メーカー任せの安易な選定
サプライヤーのカタログや提案資料を鵜呑みにし、自社製品に合わせたカスタマイズ検討を十分に行わず材料選定をしてしまうことも、よくあるパターンです。例えば「当社の標準品であれば十分対応可能」と提案された材料が、量産時に問題を引き起こした実例も枚挙にいとまがありません。
昭和の経験則と最新技術のギャップ
現場で根強く残る「昔の成功体験」や「慣例」に引きずられ、実際の材料特性の変化や、設計要件との不一致を見過ごしてしまうケースも多々あります。たとえば、最新の加工技術や熱処理プロセスの進歩によって、従来問題なかった材料が急に“鬼門”になることもあり得ます。
実際に起こる王道トラブルの事例
トラブル1:低温域で割れる樹脂部品
ある家電メーカーでは、長年使ってきたABS樹脂をそのまま採用。ところが出荷地域が東南アジアから北米に拡大し、極寒地でクレームが多発しました。原因はABSの低温脆性でしたが、設計段階で想定温度条件に十分なマージンをもたせていませんでした。出荷時点で問題は出ていなくても、現地で割れる現象が次々報告され、リコール騒ぎに発展しました。
トラブル2:熱膨張差による組み立て不具合
自動車業界では異種材料同士を組み合わせるケースが増えています。アルミ×樹脂、ステンレス×銅など。しかし設計段階で「線膨張係数」の違いに無頓着だった結果、熱サイクル試験で合わせ面に大きな隙間や歪みが発生。最悪の場合には気密保持ができず、製品不良として突き返される羽目になりました。
トラブル3:見かけの硬さで選んだ部品の摩耗・腐食
生産現場では、短納期やコストダウン圧力から安直に「一番安い高硬度材料」を選んで失敗する例があります。ある精密部品では、硬度が高いにもかかわらず耐摩耗性や耐食性が要件を満たさず、摩耗や腐食で工程停止に追い込まれました。「硬さイコール丈夫」という思い込みが悲劇を生みました。
設計現場・調達・サプライヤー三者の視点で知っておきたい落とし穴
設計者の「シミュレーション万能信仰」への注意
近年のシミュレーション技術は非常に発展しており、材料選定もデータベース上で簡単に行えます。しかし、「CAEでOKだったから大丈夫」という安易な判断に落とし穴があります。現場でよく耳にするのが「理論上では問題なかったのに、現物で想定外の変形が出た」「微妙な公差のズレが積み重なり、組み立てができなくなった」などです。
バイヤー/調達担当のリスクマネジメント力
部材の調達は往々にして「コスト」「納期」「安定調達」を優先しがちですが、材料特性の「ばらつき」や「ロット間差」に敏感になることが重要です。とくにグローバル調達化が進む中、同じ規格・同じスペックでも、国や工場ごとに品質の安定性には差が出ます。「試作はOKだったが、量産ロットでNGが多発した」といった事例は後を絶ちません。
サプライヤー側の訴求ポイントのズレ
材料メーカーやサプライヤーでも「こんな特性が強みです!」と標準スペックばかりをアピールしがちです。しかし、エンドユーザーやバイヤーが本当に求めているのは、「自社のプロセス」「設計の要求性能」を満たせるかどうかです。このギャップを埋めるためには、単なる物性値の提示だけでなく、実際の使用シーンや過去の適合事例など、顧客目線での提案力が求められます。
現場で活かせる「材料特性」マスターのためのアクション
1. 過去トラブルの棚卸とナレッジ化
トラブルが発生した際に、そのまま封印するのではなく「なぜ起こったのか」「どんな材料特性を見落としたのか」を徹底的に分析し、部門間でナレッジ共有することが重要です。たとえばトラブル履歴データベースを作成し、設計と品質保証が定期的にレビューする仕組みを設けることで、再発防止・知見の蓄積が図れます。
2. 実物の試作・評価を徹底する
シミュレーションや机上のデータだけで判断せず、「現物を作って評価」する文化を徹底することが、アナログなものづくり現場ではとても大切です。設計検証やプロトタイプ段階で、計測条件を現実に即して設定、実際の使用環境でストレステストすることで、見落としがちな材料特性の課題を早期に発見できます。
3. サプライヤーとの双方向コミュニケーション
サプライヤー任せにせず、調達・設計・品質が一体となって直接材料メーカーや加工業者と対話する場を定期的に設けましょう。「こういう加工がしたいが、どの材料が向いているか」「この設計要件を満たせる材料は何か」など、具体的な要求を伝えて意見・アドバイスを受けることで、設計不具合の芽を早期につむことができます。
4. 現場の肌感覚とデータの融合
昭和のベテラン職人が持つ「経験値・勘所」と、若手設計者の「最新知識・デジタルデータ」をミックスさせる環境づくりも効果的です。たとえば、社内の異部門交流会や多能工研修などで、実際の加工体験・失敗事例を共有することで、次世代設計者の「材料選定の目利き力」が高まります。
まとめ:材料への深い理解がものづくりの要
材料特性の深い理解なくして、設計・調達・製造・品質は成り立ちません。目の前の数字やスペック、安易な“標準思考”ではなく、「実際に自分たちが作る製品にとって、何が本当に大事な特性なのか」を繰り返し問い直し、実物や現場で確かめる姿勢こそが王道トラブル回避のカギとなります。
これから製造業に飛び込む方や、現場改善を目指す皆さんにとって、材料特性に注目することは“目からウロコ”の新たな一歩になるはずです。これまでの成功体験を継承・アップデートし、デジタルとアナログ、両方の視点を駆使することで、未来のものづくり現場を支えましょう。
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