調達購買アウトソーシング バナー

投稿日:2026年1月27日

採用後フォロー不足がIT人材不足を加速させる構造

はじめに:製造業におけるIT人材採用の現状

日本の製造業は、長らく世界的に高い品質と効率を誇ってきました。
しかし近年、デジタル化やグローバル競争の激化により、従来のやり方だけでは生き残れない時代に突入しています。
その中で特に深刻化しているのが、IT人材不足です。
大手メーカーも中小製造業も、IoTやビッグデータ、AIを活用したスマートファクトリーへの対応が急務となっています。

ですが、多くの企業でIT人材の「採用後フォロー」が不十分であるため、せっかく採用した新しい人材が早期の離職や戦力化の遅れ、さらなる人材流出を招いている現実があります。
なぜ採用後のフォロー不足が、ここまでIT人材不足を深刻にしてしまうのか。
現場目線、そして管理職・バイヤーとしての経験からその構造を紐解き、実践的な対策についても考察します。

IT人材不足の本質的な構造:なぜ「採って終わり」になってしまうのか

昭和の人事慣行が残る現場

多くの製造業現場では「OJTで見て覚えろ」「現場になじむのは本人次第」という昭和的なマネジメントスタイルが根強く残っています。
従来は、技術やノウハウは現場で先輩が丁寧に教えるのではなく、空気を読んで自分で学ぶことが求められていました。
この文化は調達や生産管理、品質管理、そして現場の自動化でも顕著です。

しかしITやデジタル領域では、知識の専門性が高く、既存社員側にも知見が不足しがちです。
IT人材に「現場に入って勝手に学んで慣れてくれ」と丸投げしてしまうと、孤立・不安・モチベーション低下を招き、数カ月で転職してしまうことが少なくありません。

中途IT人材にありがちな「戦力化ギャップ」

製造業が中途採用するIT人材は、IT企業やコンサル出身者が多く、コードを書けたりシステム設計に詳しかったりします。
しかし製造現場独特の業務プロセスや現場文化、調達調整、生産管理のリアルな運用がわからない人が多数です。

逆に現場社員もITに精通した人はまれであり、互いに「共通言語がない」という状態になりやすいです。
現場視点からすると「システムなんて導入して結局現場が手間増えるだけじゃないか」とIT人材を煙たがり、IT人材側も「何も情報が共有されない」と感じて疎外感を覚えることがよく起こります。

評価・育成制度のミスマッチ

伝統的な製造業の評価制度は「年功序列+現場での経験年数」が重視される傾向にあります。
IT人材は変化に強く実績主義を志向しがちですが、成果物が見えづらい企画やシステム系の業務は評価しにくく、正しく評価されないと感じてしまいます。
自身の成長やキャリアパスも不透明なままになり、「この会社にいても成長できない」と戦力化を待たずに離職してしまうのです。

採用だけではなく“採用後フォロー”がなぜ重要なのか

オンボーディングの目的と現状のギャップ

「オンボーディング」とは、新入社員を組織や業務にスムーズに適応させる取り組みです。
本来、最初の数ヶ月で会社のミッションやバリュー、業務の流れ、人脈づくり、期待される役割などを伝え、定着率やパフォーマンスを最大化する目的があります。

ところが現場リソースが足りず、IT人材の採用担当は「採用がゴール」となりがちです。
入社後は人事からの形式的な説明だけで、部門や現場が自発的にサポートする体制ができていません。
それ故、IT人材は「自分だけが異質な存在」として苦しむことになります。

“ミスマッチ”の具体例とその代償

例えば、AIを使った自動外観検査システムのプロジェクトに配属されたエンジニアが、材料の流れや現場作業の手順を知らないまま要件定義を開始することがあります。
現場へのヒアリング機会も十分に与えられず、現場側も「面倒くさい」と非協力的なことも珍しくありません。
その結果、現場に合わないシステムが出来上がり「使えない」「無駄な投資だった」と失望されてしまう。

このケース、一人のエンジニアが辞めたり、プロジェクトが頓挫するだけでなく、“IT導入の失敗体験”として現場全体のITアレルギーが進行し、ますますデジタル人材が定着しなくなるという悪循環を生みます。

昭和から抜け出せない背景:業界特有の構造的要因

職人気質・現場主義が強く残る文化

製造業、特に現場オペレーターや調達購買担当の多くは、自分の経験・勘に絶対的な自信を持っています。
「外部や新参者に現場がわかるか」という排他志向は根強いです。
また「失敗は許されない」「なんとなくうまくやってきた」という成功体験がイノベーションの導入を遅らせます。

これがデジタル系人材の早期戦力化・定着を一段と難しくしているのです。

ドキュメント文化の未整備

多くの現場では工程標準書や業務マニュアルすら十分に整備されていません。
「担当者の頭の中こそが業務知識だ」という属人的な運用がまかり通っています。
そのため、IT人材が「仕様書が読めない」「現場判断がわからない」と困っても聞く人がいない、ドキュメントもないという状態に陥ります。

このアナログ文化が“暗黙知”の壁となり、異文化人材の定着を阻みます。

「採用後フォロー」強化で生まれる現場の変化とメリット

現場×IT人材のコミュニケーション設計

成功している企業は、IT人材と現場担当者の間に「通訳」と「橋渡し」を担う人材や仕組みを設けています。
たとえば、現場経験のあるデジタル推進リーダーがIT人材のOJT指導を担当し、現場からのヒアリングや日常の業務説明を積極的に行います。

また、現場の“隠れた課題”を一緒に現場回りをしながら体感してもらい、「何を変えるべきか」を納得感を持って考えるプロセスを設計するのです。
これによりIT人材の理解が一気に進み、企画設計~運用サポートまで主体的に取り組む流れが生まれます。

キャリアビジョン・役割の見える化と評価制度の再設計

採用初期段階で「会社の中でIT人材にどんな成長や役割を期待するか」「現場社員にはどんなリスキリングやIT連携スキルを期待するか」を明確に伝えることが重要です。
また評価制度も、従来の年功序列や形式的な評価から、プロジェクトでの成果・コミュニケーションでの貢献を積極的に評価する仕組みに変える必要があります。

このような環境が整うことで、IT人材も「自分がここで長く働く意味」を感じやすくなり、現場も「自分たちも変わっていく」という納得感を醸成できます。

バイヤー・サプライヤー視点の“協働型”人材育成

調達・購買の視点から見ても、デジタル化が進むほどサプライヤーとの協働が不可欠となります。
サプライヤー側が、バイヤーの「IT投資の本音」や「業務効率化の狙い」、また購買現場特有の現場ニーズを理解できるよう研修や勉強会を設ける企業が増えています。

互いの壁を越えた情報交換や協業プロジェクトを進めることで、業界全体のデジタル人材育成と定着、競争力強化につながるのです。

IT人材が定着する企業の特徴と実践的取り組み事例

ケース1:日立製作所の「現場共創型DX推進」

日立は、単なるIT部門の独立運用ではなく、各工場や業務部門に「DX推進担当」を設置し、入社初期から現場オペレーターや購買担当者とのワークショップや現場体験を実施。
双方向の知見共有を推奨しています。
これにより、採用直後のIT人材が「自分が現場のパートナーである」と実感できる仕掛けを作っています。

ケース2:トヨタ自動車の「TPS+デジタル」の融合

トヨタは、IT人材にも“現地現物主義”を徹底。
「現場で課題を自分の目で見つけ、関係者と議論する」というカルチャーを強調。
AIやIoT導入も、ITそのものを目的化せず現場の「ムダ取り」「業務標準化」と結び付けることで、IT人材と現場の壁を溶かしています。

ケース3:中堅サプライヤーの“合同研修”

ある中堅部品メーカーでは、サプライヤー・バイヤーの若手IT人材を合同研修に参加させています。
調達購買・製造現場・IT部門が横断的に課題を話し合い、互いの業務を相互理解する場を設けることで、入社後のフォローが「会社をまたいだフォロー」へ発展。
定着率・戦力化率が大きく向上しています。

まとめ:採用後フォローこそが製造業再生のカギ

「採用だけで終わり」の慣習と決別し、採用後のフォロー、定着・戦力化への投資が、今後の製造業にとって最重要の課題であることは間違いありません。

昭和の人事文化・現場文化に囚われず、「現場とIT人材の相互理解」「オンボーディング・育成体制の刷新」「キャリアパスと評価の見える化」を進めましょう。

人、現場、技術が三位一体となったとき、IT人材不足は必ず打開できる。
そしてそこに日本のものづくりの新しい競争力が生まれていくのです。

IT人材の採用を「スタート地点」と捉え、その後の共創・共育こそ大切にしていきましょう。

調達購買アウトソーシング

調達購買アウトソーシング

調達が回らない、手が足りない。
その悩みを、外部リソースで“今すぐ解消“しませんか。
サプライヤー調査から見積・納期・品質管理まで一括支援します。

対応範囲を確認する

OEM/ODM 生産委託

アイデアはある。作れる工場が見つからない。
試作1個から量産まで、加工条件に合わせて最適提案します。
短納期・高精度案件もご相談ください。

加工可否を相談する

NEWJI DX

現場のExcel・紙・属人化を、止めずに改善。業務効率化・自動化・AI化まで一気通貫で設計します。
まずは課題整理からお任せください。

DXプランを見る

受発注AIエージェント

受発注が増えるほど、入力・確認・催促が重くなる。
受発注管理を“仕組み化“して、ミスと工数を削減しませんか。
見積・発注・納期まで一元管理できます。

機能を確認する

You cannot copy content of this page