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サプライチェーンの可視化が不十分でトラブル原因追跡に時間がかかる問題

目次
サプライチェーンの可視化が不十分でトラブル原因追跡に時間がかかる問題
はじめに:現場目線でサプライチェーンの可視化を捉える
長らく日本の製造業は、緻密な現場管理と長年培った経験値に支えられて発展してきました。
しかし、近年のグローバル化や複雑化する調達・生産体制の中で、サプライチェーンの可視化が不十分なためにさまざまなトラブル対応が遅れ、ビジネス全体に大きな影響を及ぼす事例が増えています。
私自身、20年以上工場現場と管理職の両方の立場で様々な困難に直面してきました。
発注ミスや品質不良、納期遅延の原因を追跡しようとしても、「情報が点在し、現場の誰に聞けば分かるのか」「サプライヤーとのやり取りが紙やFAXで属人化している」など、昭和時代から抜け出せないアナログな業務が足かせとなっています。
本記事では、現場目線でサプライチェーン可視化の現状と課題、そして具体的な解決のヒントを提示します。
製造現場の方、バイヤー志望者、サプライヤー担当の方々が明日からできる実践的アクションに繋がる内容を目指します。
なぜサプライチェーンの“可視化”が進まないのか?
現場のリアルな課題:「情報が紙と人に依存」
多くの中堅・大手製造業の現場では、調達や生産に関するデータが依然としてExcelや紙、FAX、電話などアナログ手段に頼っています。
例えば資材が届かない場合、倉庫担当者が入荷伝票を持ち出し、バイヤーに電話をしてサプライヤーに確認を依頼、それでも分からなければ生産部門や物流担当にも聞きまわる必要があります。
このような「紙と人力で追いかける仕組み」が、実際にはサプライチェーン全体の“見える化”を阻害し、トラブル時の迅速な対応を難しくしています。
部門間の壁と属人化したオペレーション
部門ごとに情報システムや帳票のフォーマットが異なり、「同じ案件でも違う呼び方」「進捗状況の記録方法が異なる」など、情報連携の壁が高いのも根本的な原因です。
特に部署を横断するトラブル(例:部品の品質不良による納品停止、緊急の調達先変更など)の際、関連する関係者すべてが正確な情報に辿り着くまでに非常に時間を要します。
業務が属人化し、担当者が休んでいれば情報がブラックボックス化してしまうのも大きなリスクです。
IT投資の後回し、レガシーシステムの負担
「製造業=合理化と現場主義」という伝統が、IT投資や業務プロセスのデジタル化を後回しにする温床でした。
ERP導入やサプライチェーンマネジメント(SCM)システムのアップデートも、現場の忙しさや「今までやれてきたから…」という心理が障害になります。
結果として、部分最適のシステムが乱立し、全体を俯瞰できないまま時が過ぎていきます。
サプライチェーンの可視化がもたらす具体的なメリット
トラブル対応の迅速化と原因究明力の向上
サプライチェーン情報をリアルタイムで可視化することで、「いつ、どこで、何が起きたか」を全関係者が即座に把握できます。
特にトラブル発生時、履歴データを遡って原因となる仕入先やロット、生産ラインまで特定できるため、現場での復旧活動や顧客対応が圧倒的に速くなります。
計画精度や予測力の向上
調達・生産・物流の各工程の可視化は、需要変動や部品遅延などのリスク予兆を早期に察知し、柔軟にリスケジュールできる力につながります。
これにより、過剰在庫や機会損失を削減し、全体の生産性向上にも寄与します。
取引先・サプライヤーとの信頼関係強化
取引先と情報をリアルタイムで共有し、透明性の高い関係性を築くことで、品質不良や納期遅れなどの問題発生時も迅速に協力体制を敷くことが可能です。
日本の「現場力」は、こうした相互信頼のうえに成り立っています。
その基盤を強化するためにも、情報の透明性と可視化は欠かせません。
アナログ業務が根強く残る理由――昭和体質の弊害
「人が頑張れば回る」文化と現代的リスク
現場のベテラン担当者が「全体を把握し、臨機応変に捌く」ことで、サプライチェーンは何とか回ってきました。
しかし、その人が突然退職・異動したり、コロナ禍で出社できなくなった場合、現場はすぐに混乱状態に陥ります。
また、外国人材の活用や、リモートワークの普及が求められる中、こうした属人化オペレーションは明らかに限界を迎えています。
“見える化”=管理が厳しくなる? 現場と経営のジレンマ
「サプライチェーンの可視化を進めると、全員の仕事が細かく管理され、“監視されている感”が強くなる」
現場ではこうした声も根強く、導入推進側(経営・管理部門)と現場実務担当者との間で温度差が生じがちです。
必要なのは「可視化は管理強化ではなく、現場を守るためである」という本質的価値の共有です。
サプライヤーや外部との連携意識の欠如
「ウチはあくまでメーカー。サプライヤーや商社の問題は彼らの責任」と切り分けてきた過去の商習慣も、サプライチェーン全体の統合的な最適化を妨げてきました。
ESGやサステナビリティ、BCP(事業継続計画)への対応が世界的要請となっている今、社内外の壁を超えた連携意識が問われています。
現場でできる“サプライチェーン可視化”への第一歩
1. データ記録フォーマットの統一
調達・生産・物流の各担当が、最低限共有すべき情報(例:注文番号、ロット、納期、品質判定結果など)について、フォーマットを統一しましょう。
パソコンが苦手な現場なら、まずはExcelテンプレートやチェックリスト形式でスタートし、送信と保管場所も必ず決めます。
2. 情報共有の“見える箱”をつくる
社内のネットワークフォルダやクラウド型ストレージ(例:Googleドライブ・Box.comなど)、あるいは簡易的なグループウェアなど、関係者全員がアクセスできる「情報保管庫」を用意しましょう。
「伝票はこのフォルダに格納」「出荷日報は全員が見られるカレンダーに書き込む」などの運用ルールを定め、小さくても“みんなが見える”実感から始めることが大切です。
3. 定期的なクロスレビュー会議の実施
調達・生産・品質・物流といった部門横断メンバーで、サプライチェーン上のトラブルや進捗をレビューする場を必ず設けましょう。
「誰が、どの段階で、どんな情報を見落としたのか」「現場にはどの情報が不足していたか」など、実際の案件をもとに振り返ることで、見える化と業務改善の早道になります。
製造業の未来を切り拓くために:ラテラルシンキングで考える
“自社最適”から“全体最適”へ、発想の転換を
これまでの製造業現場は「自社内で完結する最適化」を志向してきました。
しかしグローバルなサプライチェーンの時代、材料調達から最終製品に至るまで、関係者全員の情報と役割が連動しなければ、本当の意味での“現場力”は発揮できません。
「うちの困りごとは、パートナーや仕入先にとっても困りごと」
「相手の情報が透明なら、こちらも相手を助けやすい」
このように発想をラテラル(水平)に広げ、みんなのために“情報の共通基盤”をつくることが重要です。
昭和の知恵を、令和のテクノロジーで補完する
現場の泥臭い経験には、時代を超えて有効な知恵があります。
しかし、その知恵を活かすには、「人だけで何とかする」時代を終わらせ、最新のITや自動化技術をプラスする必要があります。
IoTセンサーによるリアルタイム品目管理、AIによる需給予測、RPAでの情報転記・集計自動化など、最先端のツールを“現場目線”でアレンジしましょう。
まとめ:明日から始める“見える化”で、トラブル「ゼロ」体質へ
サプライチェーンの可視化は「便利そうだけど、大変そう」という壁があります。
ですが、小さな仕組み・ルール作りからでも十分始められます。
これからは、「情報を見える化する=みんなが助け合い、困ったときにすぐに動ける」体質が、製造業界の新たな現場力となるはずです。
バイヤー、サプライヤー、工場現場――その全員が主役となって、より強靭でトラブルに強いサプライチェーンを築いていきましょう。
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