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投稿日:2025年12月9日

材料ロット差が大きく条件出しが毎回リセットされる問題

はじめに:製造業における「材料ロット差」問題の本質

製造業の現場で日々頭を悩ませていることの一つが、材料ロットごとに発生する「特性・性能差」の問題です。

同じ規格書、同じ仕様のはずなのに、ロットが変わるとまるで別物のように条件がずれる。

「前回の条件ではまったくうまく行かない」「生産ラインの立ち上げに想定外の時間やコストがかかる」。

このような“毎回リセット”される条件出しは、日本のアナログな製造業、とりわけ中小~大企業の現場でも根強い課題です。

今回は、
・なぜ材料ロット差の問題がここまで根深いのか?
・バイヤーや生産管理、現場作業者は何を意識すべきか?
・昭和的アプローチから一歩脱却するための実践策
の3点を中心に、実体験も踏まえて深堀りしていきます。

材料ロット差とは何か?

ロット(Lot)とは

ロットとは、同じ条件・時期・方法で製造された、一定量の製品や材料の単位です。

製品バーコードや納品書によく「Lot No.」が記載されているのはこのためです。

たとえば「9時から10時の間に製造された、同じ設備の樹脂ペレット100袋」など、条件を揃えてある程度一貫性を確保しています。

しかし、現実には“完全一致”は非常に難しく、ロットごとに細かな「ばらつき(差)」が発生します。

なぜロットごとの差が生じるのか?

理由はさまざまです。

・原材料そのものの個体差(鉱物・化学品・農産物などは顕著)
・製造設備の経年劣化や個体差
・製造時の外気温や湿度、原料供給タイミングなど、微細な外的要因
・作業者のスキル、管理方法の違い
・原材料メーカーごとの管理水準のばらつき

大手化学メーカーだからといってロット差がゼロになるわけではありません。

時代がいくら進んでも、自然現象や人の作業が介在する限り、ばらつきをゼロにはできないのが現実です。

毎回条件出しが“ゼロから”になる弊害

生産効率の低下

毎ロットごとに最適条件を一から模索し直すとなると、段取り替えや条件出しの時間が大幅に増加します。

「昨日OKだったはずの条件で、今日の材料は焼き付きや不良が多発」。

いわゆる「立ち上げロス」「条件合わせロス」は目に見えない生産コストです。

品質保証リスク

条件合わせが不完全なままの生産切り替えは、不良品・クレームの温床です。

検査担当者・品質管理者にとっても、判断基準を都度変更する必要があり、混乱や伝達漏れにつながります。

「品質の安定」は、材料ロット差のコントロールに根本があります。

現場のストレスと属人化

工場現場では「ベテランのAさんでなければ調整ができない」といった“属人化”が進みがちです。

材料ロットごとにノウハウで調整できる経験者がいないと、条件出しに手間取る、トラブルが続出するといった事態を招きます。

若手や新規参入者にとってはハードルが高く、人材育成や働き方改革も進みません。

なぜ材料ロット差は昭和から改善されないのか

標準化の遅れと「仕方ない」の諦め

日本の製造業は、長らく「現場力」「人の技術」頼みの風土が根強く、標準化・データ可視化といった取り組みが遅れてきました。

設備の自動化・デジタル化が進んでも、材料の「ばらつき」をきちんとデータ化し、分析するカルチャーが浸透していません。

「多少のロット差は仕方がない」
「うちは歴代の職人技で乗り切ってきたから大丈夫」

こういった暗黙の了解や“現場まかせ”が、データ派の若手を遠ざけ、長期的な課題解決を阻んできたのです。

購買部門と現場の“壁”

バイヤー(調達・購買)が価格・納期・仕様書だけで材料を入手し、本当の現場ニーズやばらつきへの知識が乏しい。

現場から「この材料は使いづらい」と声を上げても、購買側は「仕様どおりで問題ない」と突っぱねる。

この組織の“壁”が、材料ロット問題を永続化させる大きな要因です。

サプライヤーの視点「仕様書至上主義」

サプライヤーとしても、「要望されたスペック内で納品しているから問題ない」というロジックが根強く、積極的な特性分布の情報開示、ダイナミックな条件最適化協力が進んできませんでした。

サプライヤーは「これ以上は生産コストが・・・」という経済的事情も含め、むしろ「顧客(バイヤー)は本当は困っていないのでは?」とすら考えているケースも少なくありません。

現場目線による「材料ロット差」対策の最前線

(1)ロットごとの特性「見える化」から始めよう

「勘と経験」から脱却するには、まず“データの蓄積・共有”です。

・各ロットの物性値(例:粘度、硬度、純度など)
・加工条件、歩留まり(良品率)データ
・異常発生時の履歴

これらを、できる限り数値化してエクセルやクラウドへ蓄積。

「A社の冬場ロットは湿気に弱い」「B社のこのLotでは強制条件の調整が10℃必要」など、傾向値を社内で可視化できれば、調整作業の属人化も減り、再現性が高まります。

(2)バイヤー・購買担当者に求められること

購買部門は、コストや納期だけでなく、*「現場視点」*を武器にすべきです。

具体的には
・ロット間の品質ばらつきをサプライヤーに開示要求
・安さよりも「安定重視」の購買戦略
・現場からの“使いづらい材料リスト”をフィードバックとして吸収
など、部門横断の連携が肝になります。

現場の声を翻訳し、サプライヤーとテクニカルな対話ができる人材こそ、これからの“できるバイヤー”に求められる能力です。

(3)サプライヤーとのパートナーシップ強化

サプライヤーには「要求仕様だけ守ればいい」ではなく、
・ロットごとの特性分布情報の開示
・現場見学やテストワークの共同実施
・共通課題の解決へ継続的な意見交換
などを積極的に求めましょう。

「よい結果も、悪い結果も隠さず伝える」コミュニケーションは、長期的な品質・コスト改善に繋がります。

(4)自動化・AI活用の“上手な使い方”

近年は、画像処理AIやIoTセンサーを利用して、ロット特性や加工状態を自動検知する取り組みも進んでいます。

・生産ラインの主要ポイントにAIカメラ/センサーを設置し、リアルタイムで材料のばらつきを検知・記録
・異常傾向をAIで自動診断し、最適条件をフィードバック
・条件出しパターンをAIに学習させ、自動で調整アドバイスを生成

こうした仕組みを「人と機械」の役割分担で“道具”として使いこなすことが、現場力の次世代化のカギです。

まとめ:アナログ業界にこそイノベーションの伸びしろがある

製造業のロット差問題は、一朝一夕で解決できる簡単なテーマではありません。

しかし、「仕方がない」で思考停止せず、現場データの見える化、部門を超えた連携、サプライヤーとの対話、AIなどの新技術の導入を、少しずつ積み上げていくことが重要です。

特に、これからの製造業においては
・現場で“再現可能”なノウハウの言語化
・バイヤーによる現場目線の課題吸収力
・サプライヤーとの“ものづくりパートナー”意識
が不可欠です。

材料ロット差が大きいということは、ひっくり返せば「まだまだ改善余地=競争力向上のチャンス」があるとも言えます。

長年の昭和アナログ文化、属人作業では突き抜けられない「新しい地平線」は、意識とコミュニケーションから始まります。

この記事が、調達・購買、生産管理や品質管理、現場作業者はもちろん、これからバイヤーやメーカー間連携を志す方々にとって、発想転換や行動変革の一助となれば幸いです。

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