- お役立ち記事
- スクリーン部材のレーザー加工とバリ残り問題
スクリーン部材のレーザー加工とバリ残り問題

目次
スクリーン部材のレーザー加工とバリ残り問題
はじめに―製造現場のリアルな課題
スクリーン部材におけるレーザー加工は、近年の製造現場において急速に普及しています。
設計変更対応の迅速さや、多品種少量生産への適合性など、その技術が切り開く新しい可能性には目を見張るものがあります。
しかし、華々しいデジタル化の陰で、実際の現場では「レーザー加工後のバリ(残存反りや突起)の発生」という、古くて新しい問題が絶えず立ちはだかっています。
このバリ残りが組立不良や品質クレームの要因となり、製造部門・調達部門・サプライヤー双方の永遠の課題となっています。
昭和から受け継がれる「現場ならではの改善活動」と、最新技術の活用が複雑に絡み合う中、どのように真の価値創造を目指せばよいのでしょうか。
本記事では、私自身の20年以上の現場経験や、大小さまざまな失敗・成功事例を交えつつ、アナログな現場でも今すぐ使える視点と、本質的な課題解決のヒントをご提供します。
スクリーン部材とレーザー加工の現場事情
スクリーン部材とは何か
スクリーン部材は、電子機器や産業機械、フィルターなどに多用されている微細な金属板やメッシュ部材を指します。
その用途は極めて幅広く、機器の埃避けや通気、光の拡散、異物遮断、静電気対策まで多岐にわたります。
材質は主にステンレスやアルミ、銅などが使われ、薄さや細密さを両立しなければならないため、精密な加工技術が求められます。
レーザー加工のメリットと現場導入のねらい
従来、スクリーン部材は油圧式打ち抜きや化学エッチングで作られてきました。
しかし、近年の傾向として
・開発スピードの加速化
・小ロット多品種への対応
・コスト低減
といった経営的な要請から、NC制御が容易なレーザー加工が活躍するようになっています。
特にCADデータをそのまま加工機に転送できる柔軟性は、工場の生産性向上にとっても大きな武器となります。
バリ残り問題の本質に迫る
バリはなぜ発生するのか?
レーザー加工は非接触・高精度と言われていますが、その加工程度や材料仕様、装置の調整状態によって、ガスによる冷却不足や融解残渣(とけ残り)が発生します。
特に薄板やミクロン単位での抜き加工の場合、レーザー照射と同時に「溶けた金属がエッジに再付着」する現象が生じやすくなります。
これが業界で言う「バリ残り」です。
昭和時代から「バリ取り」は現場技能の象徴でしたが、現代の精密加工でもこの課題は未だ完全解決されていません。
バリの影響―見過ごせない品質リスク
バリ残りがあると、以下のような問題を引き起こします。
– 組立時の引っ掛かり・曲げ加工での割れ
– 隣接部品との絶縁不良やショート
– 使用過程での異音・破損
– 塵埃となり製品内に飛散
特に自動組立ラインでは、わずかなバリでも装置トラブルや流動停止を招きやすく、納期や原価に直接跳ね返ります。
また、サプライヤー選定時の品質基準(バイヤー視点)でも、「バリ管理」は最重視される評価項目の一つです。
バリ残り対策の現場知恵―昭和の経験 × デジタル技術
バリ発生を極小化する加工条件最適化
レーザー加工におけるバリの発生には、以下のような要因があります。
-照射パワー・速度やフォーカスの微調整
-材料種による溶融温度差
-ガス流(アシストガス)の噴射量と潔癖度
ベテラン現場リーダーは、「パワーの上げ過ぎはエッジの溶け込みバリを生む」「アルミは熱伝導率が高いから余計に注意が必要」といったノウハウを経験的に語ります。
最近ではAIを搭載した自動補正技術も登場していますが、「現物を観察しながら都度調整する」という昭和以来のやり方が、いまだに最大の効果を発揮する場面も多いのが現実です。
現場で定着したバリ取り・後処理工法
バリは発生時にゼロ化できなくても、「後で取る」文化が昭和から根強く残っています。
代表的なバリ取り方法としては
– 手作業でのやすり・ブラシ仕上げ
– バレル研磨機、振動仕上げ機の活用
– 洗浄機による超音波処理
といった手法が定着しています。
一方、デジタル機器とベテラン作業者の双方が「バリ見逃し検査」を担うため、「ヒューマンエラーリスク」や「確認作業の二重化」というアナログ的な矛盾も未だ残るのが現場の実態です。
”バリゼロ”の理想主義と現実主義
バイヤーや設計者は「バリをゼロにしてほしい」と言いがちですが、現実問題として「完全なバリゼロ」は極めて困難です。
むしろ「バリの許容レベルを定量化し、クリティカルな部分にのみ注力する」ことこそ、現実的かつ効率的な戦略と言えます。
具体的には
– 組立影響部位はバリ幅10μm以下と明確化
– 製品用途ごとの出荷検査レベルの差別化
– 下工程サイド(二次加工業者)と歩留まり目標を共有
など、多面的・現場密着型の合意形成が大前提になります。
サプライヤーとバイヤーの本音と信頼構築
「言った言わない」と「思い込みトラブル」を防ぐ
現場でよく発生するのが、バイヤーとサプライヤー間での「言った・言わない」、「ここまで厳しくするの?」「現場ではいつもこのレベルで十分」という相互認識のズレです。
この溝は、現場見学や定例の品質レビュー会議を通じて、「現実的な基準のすり合わせ」と「共通言語化」を繰り返すことが唯一の特効薬です。
また、性能値だけでなく、
-「エンドユーザーがバリを気にする実際の場面」
-「自社工場の組立装置の特徴(バリ寸法が厳しい部位)」
といった、現場リアリティを共有することで、抜け漏れのない品質管理体制が築けます。
バイヤーが本当に求めているもの
バイヤー(調達担当者)の本音は、「売り手・買い手」関係より、むしろ「頼れる現場の相談相手」として、サプライヤーの現場力・提案力を重視する傾向にあります。
近年の需給変動や原材料高騰の中で、いくら単価が安くても「品質の安定供給や異常発生時の迅速な報告」がなければ、長期的な信頼関係は築けません。
単なる「仕様遵守」ではなく、
– 問題が検知される前に予防的な連絡をする
– 加工現場での工夫点・改善例を随時共有する
といった、現場の知恵を活かした提案が採用評価を左右しています。
アナログ業種からの脱却と次世代サプライチェーンの構築
デジタル化だけでは解決しない本質
昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)ブームに便乗し、レーザー加工のIoT遠隔監視やAI自動最適化などが注目を浴びています。
ですが、バリ残り問題の本質は「システム導入」だけでは決して解決しません。
最終的には
– 人の目による最終確認(現物主義)
– 経験値に基づく条件変更
– 不測の事態への臨機応変な対応
といった、工場現場ならではのアナログ力が問われる瞬間が必ず訪れます。
新しい地平線―現場×デジタル×共創の価値
新たな価値創出には、異分野の知恵の組み合わせ(ラテラルシンキング)が不可欠です。
・バリ情報のリアルタイム可視化(IoT)
・作業者間での「バリ画像データ」の共有・解析
・バリ寸法公差のデータドリブンな最適化
・最終ユーザー(設計~バイヤー~現場)が巻き込まれたエコシステム化
このような「現場×デジタル×人」の掛け合わせが、次世代のサプライチェーン競争力を生み出します。
まとめ―昭和の知恵とデジタルの融合で、ものづくりの進化へ
スクリーン部材レーザー加工におけるバリ残り問題は、単なる加工品質の課題にとどまりません。
バリ発生のメカニズム把握、後処理ノウハウの蓄積、バイヤー・サプライヤー間での絶え間ない現場すり合わせと信頼の構築、そしてデジタル技術の活用。
これら全てを繋げるのは、経験に裏打ちされた「現場の知恵」と、目の前の課題から学び続ける組織文化です。
今後も現場で得られる気づきや改善事例を集め、次世代のものづくりに貢献していきたいと強く願っています。
製造業に携わる全ての皆様と、より実践的で価値ある現場改善を目指していきましょう。