投稿日:2025年6月28日

接着基礎と異種材料を強力に接着する最新構造用接着剤応用ポイント

はじめに:製造業の「接着」進化論とは

「接着」と聞くと多くの方がイメージするのは、文房具の糊や工業用の接着剤かもしれません。
しかし、近年の製造業現場、とりわけ自動車・家電・電子機器・航空宇宙などの分野では、従来のボルト締結や溶接ではなく、異種材料同士を強力に結合できる最新の構造用接着剤への期待が非常に高まっています。

現場ではいまだアナログ的な手法や経験則が根強く残っている一方で、日々多様化・複雑化する製品仕様や軽量化・コストダウンの要求へ応えるために「ラテラルシンキング(水平思考)」による材料選定や工法の組み合わせも重要になってきています。
本記事では、基礎から応用までを分かりやすく整理し、現場目線でのノウハウや最新の業界トレンドも交えてご紹介します。

なぜ今「構造用接着剤」なのか

時代の要請が変えた接着ニーズ

従来、産業用で部材を留める主役は「ねじ・リベット・溶接」などの機械的結合が担ってきました。
これは強固で信頼性が高く、加工・検査も容易だったためです。

しかし
・軽量化(自動車や航空機)
・異種材料の多用(アルミ×樹脂、CFRP×金属 etc)
・材料・部品コストの削減
・ライン自動化への対応
といった時代の変化により、金属や樹脂、複合材料といった「異種材料同士」を安定して接合できる手法が求められています。

一方、リベットや溶接を使えば両方に穴あけ・加熱・変形といった負荷が避けられず、せっかくの複合材料のメリットが十分に活かされない局面が増えてきました。
この課題をクリアできるのが「構造用接着剤」の役割なのです。

接着の先入観―昭和の現場からの脱却

昭和時代から続く現場(特に老舗企業や多品種少量生産の現場)では、「接着剤=接着力が心配、寿命が見えない」といった先入観が根強く残っています。
特に厳しい品質保証や、最終用途が命に関わる製品の場合はなおさらです。

しかし、最近の構造用接着剤は耐久温度や衝撃・振動耐性に優れ、RI(放射線)耐性や難燃性を備えたグレードも登場しています。
特に多層構造・複雑形状の組み立てには「接着+リベット」「接着+スポット溶接」など、冗長設計(バックアップ工法)を採り入れることでリスク分散も図れるのです。

接着基礎の押さえるべきポイント

接着の原理を現場的に解説する

構造用接着剤で強固な接着が得られるかどうかは、下記の三点がカギとなります。

1. 表面処理と清浄度
2. 適切な塗布量・形状設定
3. 加圧・硬化プロセスの管理

表面の油分・サビ・水分・粉塵が残っていると十分な密着力は得られません。
製造現場では、IPA(イソプロピルアルコール)やアセトンでの脱脂、サンドブラスト、プライマー塗布などを状況に応じて使い分けます。
また、構造物ごとに必要な接着強度・接着面積を「構造設計」段階で正しく見積もることがトラブル防止に必須です。

異種材料接着を成功させる“設計段階”の工夫

例えば「樹脂とアルミ」や「CFRPと鉄」といった異種材料を強力に固定したい場合、接着面だけで強度を担保する設計では破断リスクが高まります。
現場では下記のような工夫を盛り込むことが多いです。

・平面ではなく段差・ギザギザ・穴を設け「せん断力」を受け止めさせる
・部品形状/接合ラインでストレス分散する
・加圧固定具や治具の精度を高め、接着ズレを防止する

また、バイヤーやサプライヤーは事前に「期待強度」「使える材料」「工程制約(温度、硬化時間)」を細かくすり合わせておかないと後々余分な手戻りやクレームの温床になりがちです。

最新の構造用接着剤事情

主要グレードの特徴

最近注目されている主要な構造用接着剤の種類をいくつかご紹介します。

・エポキシ系
超高強度、短時間硬化、金属/樹脂/無機材料に幅広く対応。
自動車・医療・航空宇宙で定番。

・アクリル系
被着体の表面処理レスで使えるグレードも多く、作業性に優れる。
アルミダイカストやステンレス、特殊ガラスの接着で強み。

・ウレタン/シリコーン系
弾性・粘着性に優れ、温度・湿度変動追随性が高い。
大型構造物や防振・クッション性が必要な部品に多用。
耐薬品性も良好。

・ハイブリッド型(複数材の長所どり)
短時間硬化&衝撃耐性アップなど、課題克服型の“いいとこどり”グレードも増加中です。

選定時に“絶対外せない”チェックポイント

・期待する接着強度、剪断・剥離・引張・衝撃各方向の要求
・被着材質と形状(平面?曲面?多孔質?)
・環境耐性(温度、湿度、UV、薬品、屋外/屋内)
・作業条件(塗布/硬化時間、オートメーションへの適合)
・リワーク性や廃棄性、安全関連法対応

たとえば「混合比誤り」「予想以上の硬化時間」「接着前洗浄不足」などは、“あるあるトラブル”の代表です。
PO(購買発注)~納入段階でバイヤーやサプライヤーがどこまで先回りしたリスク管理ができているか?
この差が現場の止まりや品質トラブル、納期延長の有無を分ける要素になっています。

現場が語る実践ノウハウと最新事例

現場でよくあるQ&A・トラブル事例

Q:「うちの現場は1台ずつ手作業ですが、最新接着剤って本当に使えるの?」
A:はい、近年はエポキシやアクリルでも「1液型」「常温硬化」「光硬化」対応など小ロット対応品も進化しています。
ただし季節・温度ごとの硬化性の違いや、混合比のトレーサビリティ管理は必ず押さえてください。

Q:「分解やリサイクル時に、接着剤が弱点にならない?」
A:分解性グレードや脱着性を高めた設計(剥がれやすくする材料、部分接着可)も選べます。
設計初期でのリサイクル対応検討が重要です。

Q:「海外サプライヤーから新しい接着剤を提案されたが、何を基準に評価するのがベスト?」
A:カタログデータだけで判断せず、サンプル評価で自社材料との相性・実工程での検証が不可欠です。
現場工程における塗布・硬化方法も含めて比較検討を怠らないようにして下さい。

業界動向:DX化・自動化と接着工法の急接近

IoTやAI活用が叫ばれる21世紀の工場において、「接着工程の自動化」「ロボット塗布トラッキング」「硬化のリアルタイムモニタリング」技術が急速に進化しています。
自動車工場のバッテリー部位組み付けや、電機業界の基板実装、住宅メーカーのパネル貼付ロボットにも広く応用が広がっています。

昭和的な「人の腕」に頼る時代から、「工程全体の品質保証システム」にシフトする流れに、構造用接着剤の選定・管理ノウハウは将来ますます重要なファクターになるといえるでしょう。

まとめ:現場感覚とラテラルシンキングで未来を掴む

接着技術、とりわけ異種材料の構造用接着剤活用は、“これまでの常識”が驚くほど早く塗り替わっています。
古い現場の先入観にとらわれず、「本質的な結合力は何か」「どうすればトラブルと無縁になるか」「自社の工程のどこでカイゼンのきっかけになるか」。
ラテラル(水平思考)で課題を多角的に“深掘り”し続けることが、現場や購買、サプライヤーをつなげ、産業界の未来を切り拓く方法です。

今こそ、先入観を捨て、“強く優れた”最新接着技術を味方につけ、現場のイノベーションを加速させていきましょう。

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