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受発注チャネル統合でFAX依頼をゼロにしたレガシープロセス刷新プロジェクト

目次
受発注チャネル統合による業務改革の必要性
ものづくりの現場では、いまだに根強く残るFAXによる受発注依頼に頭を悩ませている方が多いのではないでしょうか。
アナログなプロセスは属人的な運用になりやすく、伝票の未着や人為的ミスの原因となることもしばしばです。
また、取引先ごとに異なる受発注ルートや対応ルールも混在し、統一された業務フローの構築が難航しがちです。
しかし、このようなレガシーな慣習を見直し、デジタル化と業務プロセスの標準化に舵を切る企業が少しずつ増えてきています。
今回は、筆者が実際に手掛けた「受発注チャネル統合」によるレガシープロセス刷新プロジェクトを題材に、現場目線でその意義や推進ポイント、成功の要因について詳しくご紹介します。
昭和から抜け出せない製造業現場の課題
FAX依存の実態と根強い理由
多くの製造業現場では、取引先・社内双方でFAX受発注が現在でも重要なチャネルとして残っています。
その理由は、取引先のITリテラシー格差や従来からの慣習、紙媒体の安心感、法規制への適合、さらには「録(メモ)を残す」文化など、単にシステム化すればよいといった表面的な問題にとどまりません。
現場の担当者からは「本当にこれを変えて大丈夫なのか」「FAXだと上司のチェックが入りやすいし、証拠が残る」といった慎重な声も多く寄せられます。
一気にデジタルへシフトするのではなく、現行プロセスの詳細な現状分析からスタートすることが重要です。
多様な受発注チャネルによる業務の煩雑化
FAX、メール、電話、EDIなど複数チャネルが乱立し、注文書式や手配フローも取引先ごとにバラバラというケースが多く見られます。
この状態では、受注担当者ごとに暗黙知としてノウハウが蓄積されやすく、属人化した運用から脱却するのは困難です。
万一担当者が急に離席・退職した場合、混乱やミス、不着による納期遅延のリスクも高まります。
製造リードタイムの短縮や多品種少量生産への対応を進めるためには、受発注チャネルの集約と業務標準化が避けては通れません。
受発注チャネルの統合とは何か?
チャネル統合の狙いとメリット
受発注チャネルの統合とは、紙・FAX・メール・電話など、多様化している受発注ルートを一定のルールやプラットフォームで一元管理する仕組みづくりです。
この統合が実現すれば、以下のようなメリットが生まれます。
– 入力・伝達ミスによる手戻りや確認作業の削減
– 受注明細の可視化・リアルタイム進捗管理
– 属人化からの脱却と業務の効率化・標準化
– 監査や内部統制、トレーサビリティ対応の強化
取引先や社内関係者との調整次第では、将来的な自動発注・需給連動など生産全体の最適化にも繋げられます。
最新の統合プラットフォーム動向
最近は、SaaS型の受発注管理システムやWeb-EDI、チャットボットを活用した自動化基盤など、多様なサービスが登場しています。
複数拠点・工場間、系列サプライヤー間での受発注統合も現実的になってきました。
ただし現場レベルでは、導入システムが現行の帳票(注文書、納品書等)文化とどこまで親和性があるのか、取引先のデジタル対応状況、現場オペレーションの手間増減などにも着目する必要があります。
現場主導で進める受発注刷新プロジェクトの進め方
現状分析と課題の“見える化”
いきなり「FAX禁止」「Web化100%」を打ち出してもうまくいきません。
まずは担当者ごとの受発注実務(1日何件のFAXが来るのか、誰がどこでボトルネックになっているか等)を細かくヒアリング・マッピングします。
さらに、各取引先のオーダーフォーマットや運用ルール、想定される例外パターンを“見える化”しましょう。
ここで重要なのは、受注側(バイヤー目線)だけでなくサプライヤー側の事情や懸念も丁寧に観察・吸い上げることです。
小さな成功体験の積み上げ
パイロット取引先や一部製品群からWeb発注への切り替えをスタートします。
典型的なアプローチは、「まずはFAX依頼と並行」での運用です。
システムの使い勝手、現場の承認フロー、納品後のフォローアップまで丁寧に進めます。
小さな成功体験・トラブル対応を現場で共有することで、「できた!」「前より早い」の共感が広がり、全体展開への糸口となります。
現場巻き込みと心理的障壁の克服
「今までのやり方を本当に変えて大丈夫か」「自分の役割がなくなるのでは」という現場の心理的障壁にも配慮が必要です。
プロジェクトチーム内の各部門キーパーソンを定期的に集め、課題・悩みを共有、オープンに議論できる場を作ることが肝心です。
現場担当者の意見や工夫をプロジェクト推進側にフィードバックし、二人三脚で運用ルール・帳票フォーマットを柔軟に見直していきます。
サプライヤー側から見たバイヤーの本音
サプライヤー(供給側)はしばしば「大手バイヤーが一方的にIT化を押し付けてくる」という印象を受けやすいものです。
しかし、バイヤー側にも「人手不足で業務負荷が限界」「納期短縮・トレーサビリティ強化による顧客要求対応」など切実な現実があることを理解することが大切です。
逆にサプライヤーも「自社の生産管理とどう連携するか」「現場担当がシステム入力できるのか」など、自社業務へのインパクトや乗り越えるべき課題があります。
ここで重要なのは、一方的な押し付けではなく、双方の課題を率直に対話し、お互いが“どうしたら楽になるか”という目線でシステム運用を設計することです。
FAX依頼ゼロを実現した成功事例
大手製造業A社のレガシープロセス刷新
筆者が関わった大手製造業A社では、70社を超えるサプライヤーと年間3万件以上の受発注をFAXでやり取りしていました。
このためヒューマンエラーによる納期遅延、伝票紛失、重複発注など多くの問題が表面化していました。
そこで、まずは主要10社にパイロットプロジェクトを打診。
既存の受注フォーマットをベースにWeb受発注システムをカスタマイズし、現場のフィードバックを反映しながら運用開始。
稼働から3ヶ月後には、FAX依頼件数が9割削減。半年で完全にFAX依頼をゼロ化することに成功しました。
重要だったのは、サプライヤー側にとっての「入力作業の手間」「帳票印刷のコスト・工数」を見える化し、本質的な業務負荷削減メリットをしっかりと伝えたことでした。
また、特急手配や例外品についてはチャット・電話でのフォローを併用し、現場の混乱を吸収した点も大きな成功要因となりました。
現場が変わることによる副次効果
受発注チャネルを統合した結果、業務効率が向上しただけでなく、現場担当者同士のコミュニケーションの質も上がりました。
「納期レスポンスが早くなった」「進捗管理がしやすくなった」といった現場の声が増え、部門間の信頼関係も強化されています。
また、受発注履歴のデジタル蓄積により、定期的な受発注分析・コスト改善のPDCAが回しやすくなり、より戦略的な購買・生産管理への進化を実感しています。
今後の製造業に求められる受発注業務の姿
製造業のグローバル化、多様化、そして深刻な人手不足時代において、受発注プロセスのデジタル化・統合は「待ったなし」のテーマです。
一方で「現場を無視した見せかけのDX」や、「一方通行の押し付け」では効果は限定的です。
アナログ文化とデジタル技術の間に立ち、現場目線・サプライヤー目線で腹を割った対話を続ける——。
それこそが、昭和から脱却できない業界でも着実に変革を起こすための本質だと言えるでしょう。
まとめ:受発注統合で開かれる新たな地平線
受発注チャネル統合は単なるFAX廃止やシステム導入ではありません。
「業務を変えること」に現場もサプライヤーも自信を持ち、新たな働き方・生産性を共創するためのきっかけです。
失敗や苦労も多くありますが、ラテラルシンキングで本質課題を捉え直し、一歩ずつ進んでいくプロセスこそが製造業に未来をもたらします。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーとしてバイヤーの本音を知りたい方、製造業の現場で改革を進めたい全ての方へ、 “受発注チャネル統合”の大きな価値と可能性を、ぜひ自社の現場で実践してみてください。
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