投稿日:2025年9月2日

設備共用のタイムシェアで夜間割引を活かし製造原価を平準化

はじめに:製造業における課題と新たなアプローチ

製造業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。

部品や原材料の価格高騰、人手不足、顧客からのコストダウン要求、そしてカーボンニュートラルや持続可能性など、従来にはなかった課題が複雑に絡み合っています。

こうした時代に求められるのは、「効率化」と「柔軟性」の両立です。

今回は、工場設備を複数社でタイムシェアし、夜間割引などを活用することで製造原価の平準化を図る新たなアプローチについて、現場目線で実践論を紹介します。

製造業従事者・バイヤー志望者・サプライヤーの皆様に向け、実際の業界慣習や今後のトレンドも交えながら深掘りしていきます。

製造現場に根付く「夜は止める」の常識とコスト構造の現実

昭和から続くアナログな製造現場の現実

日本の製造現場では、今なお「夜間は稼働率を落とす」「一社専有」が根強い文化です。

理由は、メンテナンスコスト増、夜勤手当による人件費アップ、夜間トラブル発生時の対応力低下など。

しかし、近年の自動化・遠隔監視システムの普及により、「夜間こそ積極活用」の発想転換が可能になりつつあります。

工場のコスト構造と原価平準化の難しさ

製造業の原価は、
・材料費
・人件費(直間接)
・減価償却費
・エネルギーコスト(電力など)
・間接経費(設備保守、管理など)
で構成されています。

そして、工場という『箱』が一日24時間フル稼働する時と、日中だけ動かす時では費用対効果が大きく変化します。

固定的に出ていくコストを「時間当たり」「ロット当たり」でいかに平準化するか。

この課題に、タイムシェア&夜間稼働という武器で挑む価値があります。

設備共用のタイムシェアとは?〜新・製造モデルへのシフト〜

タイムシェアの概要とメリット

設備共用のタイムシェアとは、複数の企業が工場設備を24時間の中で時間帯を分けて利用する仕組みです。

このモデルのメリットは、
・設備投資の負担軽減(分散化)
・生産ピークの平準化
・資源の有効活用
・設備稼働率の最大化

さらに、電力会社の夜間割引を利用すれば、エネルギーコストも大幅圧縮が期待できます。

夜間割引の現実的な効果

日本国内の多くの電力契約では、「昼間料金」と「夜間(深夜)料金」で単価が異なります。

特に大口需要家向けには、夜間の電気料金が昼間の半額近くにまで下がるケースもあります。
(例:昼間17円/kWh、夜間8円/kWh)

こうした夜間割引を積極活用すれば、「同じ製造量でも夜間に生産すればコストが下がる」構造となります。

また、CO2排出の平準化を求められる企業にとって、ピークシフトや省エネにも有効です。

現場目線で考えるタイムシェア・夜間稼働の課題と解決策

共用時の品質・保安管理リスク

複数社の製品を、一つの設備・ラインで切り替えながら製造する場合、混入やトラブルリスクが高まります。

そのため、
・段取り替え時のルール徹底
・工程内清掃・監査
・設備パラメータの自動切替え(IoT活用)
・共用利用規約の明文化
が必須となります。

長年一社専有の古い体制で来た場合、現場レベルの作業ミスやルール違反が大きな事故・ロット不良に直結するため、品質管理部門との密接な連携が求められます。

夜間稼働における人材マネジメントと自動化の重要性

夜間稼働では、人手によるリアルタイム管理・保守が昼間より難しくなります。

現場では、
・遠隔監視システムの導入
・トラブル対応のリモート化
・夜間専門スタッフの配置(シェア型常駐要員など)
・本質的な自動化(例:AGV搬送、ロボットアーム、セル生産など)
が効果的です。

ベテラン技術者による夜間トラブル時のオンコール体制や、夜間用のQCチェックリストを整備するなど、昭和的な現場対応力と最新技術のブレンドが求められます。

コスト配賦・契約の透明性

タイムシェアには公正なコスト配賦が欠かせません。

電気代は時間帯・使用量で分けやすいですが、
・設備減価償却や保守費用
・1日あたりの清掃点検費
・消耗部品代・トラブル修理負担
など、「どの会社の責任か」を明確にする必要があります。

付け焼き刃なエクセル計算に頼らず、クラウド型の共用管理システムを用意し、データに基づく透明なルールを共用会社間で締結しておきましょう。

実際の現場で生まれているイノベーションの事例

金属加工工場A社の取り組み

A社では、一部のプレス機・工作機械をタイムシェア化し、夜間は近隣の中小企業と協業しています。

夜間の自動運転を実現するため、カメラ・IoTセンサー・稼働管理システムを導入。

さらに、工具などの消耗品管理をクラウドでリアルタイム共有し、「使った分だけ従量課金」方式を確立しました。

結果として、1年間で
・設備の稼働率3割向上
・工場全体の製造原価11%削減
・夜勤人件費を4割カット
・協業先からの受注増加
につながったと報告されています。

化学メーカーB社のケース

B社は複雑なバッチ処理の装置を3社で共用しています。

ここでは、品種毎のレシピ切り替えや、前後工程の段取り調整をAIで自動最適化。

さらに、各社のバイヤーが自社で直接稼働状況をモニタリングできる仕組みをクラウドで構築し、不正や不具合発生時の責任の所在も即時共有されています。

この結果、
・小ロット多品種への即応
・ムダな空き時間の削減
・エネルギーコスト15%低減
といった働き方改革・省エネ両面で成果を上げています。

バイヤー視点・サプライヤー視点から見る未来のものづくり戦略

バイヤーとして考えるべき「共用メリット」

・短納期かつ柔軟な供給体制の構築
・原価ダウン提案の説得力向上
・環境への配慮や労働時間平準化

バイヤーはサプライヤーに「工場共用」「夜間稼働型コストモデル」を提案することで、よりフレキシブルな価格・納期対応が可能となり、自社の競争力強化に直結します。

サプライヤーの立場からの実践ポイント

・夜間活用による受注拡大(ピンチをチャンスに)
・共用時の品質・メンテナンス・保安ルールの徹底
・共用設備の予約・生産計画のIT化

掴むべきは「顧客との連携強化」「ベースロードの拡大」という攻めの視点です。

古い体制から抜け出し、時代に合わせて価値提供の幅を広げましょう。

今後の業界動向・将来への展望

DX人材・業務改革の推進とリスキルの必要性

タイムシェア・夜間稼働には、旧来型現場力+DX(デジタル変革)が不可欠です。

・設備IoT化・AI活用
・共用業務のデジタル管理
・リスキル(新技術の現場教育)
が、将来の生産効率化・高付加価値化を左右します。

ITベンダーが持つ生産管理システムだけでなく、現場発の「改善魂」との融合が成功のカギです。

製造業が進むべき「共創」の時代

もはや「自社の設備は自社だけ」「夜は止める」が絶対正義の時代は終わりました。

協調と共創による設備のタイムシェア・夜間生産が、業界全体の競争力維持につながります。

「働き方改革」や「カーボンニュートラル」など、社会的要請にも応える持続可能な工場運営が今後の主流となるでしょう。

まとめ:地に足のついた工場改革こそ未来を創る

製造業の現場は、現実的なリスク管理や安定供給が大前提です。

ですが時代は大きく変化しています。

タイムシェア&夜間割引という新たな武器を賢く使いこなすことで、製造原価の平準化、生産リードタイム短縮、環境対策、現場の柔軟性すべてを同時にアップデートできます。

一歩踏み出す勇気と、現場目線の知恵、その融合が日本の製造業の未来を支えるのです。

先端と伝統、デジタルとアナログのハイブリッドで、「今よりもっと良いものづくり」を目指しましょう。

皆さんの挑戦と工夫が、次世代の産業をつくります。

以上、現場からの知見をもとに、「設備共用のタイムシェアで夜間割引を活かし製造原価を平準化」するための指針をご共有しました。

今こそ、共創し、新しい工場運営の地平線を一緒に切り拓いていきましょう。

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