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UVインクTシャツの乾燥で照射ムラを防ぐための光量センサー制御

目次
はじめに
UVインクを使用したTシャツ印刷は、デザインの鮮明さや作業効率の面で、近年急速に広がっている印刷手法です。
特にアパレル製造業では、小ロット・多品種化が進行する中で、UVインクジェットプリンターによるオンデマンド印刷の導入が加速しています。
しかし、現場で運用する上で避けて通れない課題が「乾燥時の照射ムラによる品質トラブル」です。
この記事では、20年以上工場の現場に携わってきた経験と、管理者として培った知見から、「UVインクTシャツの乾燥で照射ムラを防ぐための光量センサー制御」について、実践的かつ現場目線で解説します。
さらに、アナログ体質が根強く残る製造業の変革を意識したラテラルシンキングの視点も盛り込みます。
なぜUVインクTシャツは乾燥ムラが問題になるのか
UVインクジェット印刷の品質は、インク塗布後の“硬化”および“乾燥”工程で大きく左右されます。
UVインクは、紫外線(UV)を照射することで瞬間的に硬化し、定着します。
ところが、工業用プリンターのランプの経時劣化やTシャツ素材の微妙な凹凸、機械の移動速度不均一、さらには現場特有のほこりや温湿度条件の変動といった、さまざまな要因が乾燥ムラ=照射ムラを引き起こします。
照射ムラが発生すると、インクの発色が悪くなる、耐久性が落ちる、着用中に色落ちやひび割れが生じる、といった品質クレームにつながるため、特にOEM生産や業務受託案件を多く扱う製造業者にとっては重大なリスクになります。
現場で“照射ムラ”が多発する真の原因
令和の今も、意外と多くの現場で見受けられるのが「人の目」による品質チェックが当たり前という体制です。
UVランプの照射は自動制御されているはずでも、実は現場担当者のカンや経験によって「見た目でOK/NG」が判定されている例は決して珍しくありません。
また、機械メーカーが提示する「推奨設定」に漫然と依存し、実際の光量管理を疎かにしている工場もあります。
さらには、設備投資コストを抑える目的で、センサーやモニタリング装置の導入を見送った結果、ランプが劣化したまま長期間運転してしまう、といった事例も多く報告されています。
製造業の根深いアナログ思考、デジタル活用の遅れが、「照射ムラ」という“見えない損失”を生んでいるのです。
労働人口減の今こそ、現場自動化の発想転換を
少子高齢化と共に、ものづくり現場もますます人材確保が難しくなっています。
ベテランの暗黙知に頼る旧態依然の管理体制から、センサーやIoTによる「データに基づく現場管理」へと舵を切るタイミングは、もはや待ったなしです。
光量センサー制御とは何か
乾燥ムラ・照射ムラ対策のカギになるのが「光量=紫外線出力」のリアルタイム管理です。
光量センサー制御とは、UVランプ付近、またはプリントエリア直上に「UVセンサー(光量センサー)」を設置し、実際の照射強度を常時モニタリングするシステムを指します。
これにより、ランプ個体差や劣化、周囲条件の変化による出力変動を自動検知し、その情報をもとに
・ランプ電源の出力自動補正
・Tシャツ搬送速度の調整
・乾燥時間の再計算
などをシームレスに制御できるようになります。
従来型と比べた主なメリット
・人の目、カン、経験に頼らない“安定品質”の実現
・個々のTシャツ/インクに合わせた最適化
・異常時(例えば光量低下)を自動で検知・アラーム発報
・省人化、無人化ラインへの適用が容易
・品質クレーム、再加工コストなど“隠れ損失”削減
光量センサー制御の現場実装:実践ステップ
実際の現場に光量センサー制御を導入するためには、以下のような具体ステップを踏むことをおすすめします。
1. 印刷ライン全体の工程分析
Tシャツ搬送/印刷/乾燥/仕上げ、の各段階で“品質ムラ”が生じるリスクポイントを洗い出します。
現状のランプ照射パターンやTシャツ搬送速度、設備稼働率、トラブル履歴も併せて把握します。
2. 最適な光量センサー機器選定
紫外線波長(一般的にUV-A, UV-B, UV-C。UVインクに応じた選定)、測定レンジ、現場の埃や衝撃耐性、オンライン対応(IoT・PLC連携)、メンテナンス性などを多角的に比較します。
国内・国外のセンサーサプライヤを比較検討し、必要であればサンプルテストを実施します。
3. 制御ロジックの構築・テスト
UVランプ光量データを、制御盤(PLCやPC)に取り込みます。
本来は装置メーカーとも連携しながら、「光量低下時の自動補正」や「アラーム発報・自動一時停止」といった制御ロジックを緻密に設定します。
短期的な現場試運転で光量変動とTシャツ印刷品質の相関チェックも行い、最適アルゴリズムを追求します。
4. 現場スタッフの教育と標準作業化
最終的には設備が自動制御しても、異常時の対処や点検・清掃など、人が介在するポイントも必ず存在します。
導入メリットを分かりやすく共有し、現場主体での“日常管理”を根付かせます。
特にアナログ志向が残る職場では、「新技術は難しいもの」という抵抗感を丁寧に払拭する教育が不可欠です。
バイヤー・サプライヤー双方にとっての価値
UVインクTシャツ製造で光量センサー制御を導入することは、設備保有者(OEM/ODMメーカー)はもちろん、バイヤーや委託生産を依頼する発注側企業にも以下のような価値を提供します。
バイヤーの視点
・同一条件での品質バラツキ低減により、クレーム・返品リスクが大幅減
・納期遅延や緊急再加工といった“見えないコスト”の排除
・第三者への「工程見える化」をPRでき、企業価値の向上にも寄与
・将来的なサステナビリティ調達(水や電力のムダ削減)にもつながる
サプライヤーの視点
・自社の製造技術・自動化力を武器に、新規取引のチャンス拡大
・「品質保証」が曖昧な職人頼みから、数値根拠を持った“提案営業”へ
・設備トラブルや人的異常への“事後対応”でなく、“予防管理”による稼働率向上
・省人化による採用・教育コスト削減、既存スタッフの負担軽減
業界全体のDX推進に向けて:昭和から令和の工場改革へ
UVインクTシャツの乾燥品質管理にとどまらず、「工程の可視化」「センシング自動化」「異常時の迅速フィードバック体制」は、製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)の大きな推進軸となっています。
今後はAIや機械学習と連携することで、「乾燥ムラ」の予兆検知や、印刷パターンに応じたリアルタイム制御も現実となるでしょう。
特に日本の製造業では、
・ベテラン職人の定年退職
・技術伝承の難しさ
・コスト競争激化と人件費高騰
など、アナログな現場力頼みから「データドリブン」な現場運営へと急速な変革が求められています。
その最初の一歩として、身近な課題であるTシャツ印刷の「照射ムラ」撲滅からDXの一歩を踏み出すのは、極めて効果的です。
まとめ
UVインクTシャツの乾燥工程において、照射ムラの発生は小さなようでいて、実は“品質”も“コスト”も大きく左右する見過ごせない要素です。
旧来のアナログな作業プロセスを脱却し、光量センサー制御による「データに基づいた現場マネジメント」を推進することで、製造業の現場は大きく進化します。
バイヤーとサプライヤーにとっても、品質保証力・提案競争力・コスト競争力を高める土台となります。
これからの時代のものづくりは、「ヒトの勘」に「データとテクノロジー」を掛け合わせる発想が不可欠です。
ぜひ現場で一歩踏み出し、昭和から令和へ、持続可能な工場経営へとつなげてください。
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