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重量削減が物流費に効く設計と輸送の連携シミュレーション

目次
はじめに:重量削減は物流費の根本対策
製造業において、物流費は年々高騰する傾向にあり、2024年現在も多くの企業が頭を悩ませています。
特に調達・購買、サプライチェーン担当者、そして製品設計に携わるエンジニアにとって「いかにして物流コストを抑えるか」は経営層からのプレッシャーの一つです。
多くの現場では、運送会社の値下げ交渉や倉庫の見直しが注目されがちですが、実は「重量の削減」が本質的なコストダウンの起点となります。
本記事では、重量削減が物流費に大きく寄与する理由とともに、設計と輸送の連携したシミュレーションの重要性、そして実践的な進め方について解説します。
昭和の発想に止まらない現場視点で、今後求められる発想転換と具体的なアクションに迫ります。
なぜ重量削減が物流費削減に直結するのか
物流費の構成と重量の関係性
物流費の多くは、運賃・荷役・梱包などで構成されていますが、運賃は「重量」と「容積」に大きく依存しています。
多くの運送会社は、実重量と容積換算重量(容積比重)との比較し、大きい方で課金します。
特に鉄鋼製品や金属部品、機械装置など重量物を輸送するBtoB製造業では、「重い=コスト高」となるため、根本的なコストダウンアプローチは「重量最適設計」です。
なぜ設計変更が物流費抑制に効くのか
製品設計段階で部品や材料を軽くできれば、1回の輸送でより多くの製品を載せることができ、パレット積載効率も高まります。
また、軽量化に伴い荷役作業も安全・効率的となり、現場作業員の負担や怪我のリスク低減にもつながります。
従来のアナログ主義から抜け出せない背景
部署間の壁と情報断絶
日本の製造業、とくに歴史ある企業では、設計部門と物流担当が別々の組織で動いており、製品化の段階で「できたものを運ぶ」だけに終始しがちです。
設計者は機能・性能やコストを最優先しがちで、物流担当は限られたパレット・コンテナへの積載率向上やトラックへの積み方改善しか打ち手がありません。
現場では、設計変更=開発遅延やトラブルと捉えられがちで、本質的なコミュニケーションが生まれにくいという昭和的な構造が根強く残っています。
「今さら設計は変えられない」という固定観念
経済合理性だけでは割り切れない「長年の取引先とのしがらみ」や「変更承認にかかる社内手続きの煩雑さ」により、新たな設計へのハードルが高いのも現実です。
重量削減による物流費削減・設計の連携シミュレーションの重要性
全社視点での「トータルコスト最適化」発想の必要性
物流コスト削減は、購買部門だけでなく、設計・生産・物流・営業と一体で取り組んで初めて本質的な効果が生まれます。
1部品1kgの軽量化に成功すれば、輸送箱やパレット積載個数が増え、月間・年間の配送回数も減少。
各工程での荷役効率や保管スペースも小さくなり、在庫金利・保険料など細かなコストにも波及し、全社の利益拡大に直結します。
設計と調達・物流のリアルタイムな協働がカギ
設計者・バイヤー・物流担当が初期段階から一緒にシミュレーションを行うことで、現場の知見と理論的な重み付きコスト分析が融合します。
例えば「一部アルミ合金化で部品重量を20%カット」「取付位置・梱包見直しで1回当たりの輸送個数を1.2倍UP」など。
机上の設計で終わらせず、物流現場の実運用も織り交ぜて最適案を練ることが、競争力の源泉になります。
現場実践:重量削減から始める物流費削減シミュレーションのステップ
(1)現状把握と見える化
まずは自社製品、部品ごとの「実重量」「運送区間」「輸送頻度」を可視化します。
加えて実際のパレット・箱積載数や、1回あたりの実コストも細かく洗い出します。
これらをExcelやBIツールで集計し、重量ごとの物流単価推移を見える化することから始めましょう。
(2)設計者・バイヤー・物流担当の合同ワークショップ開催
現場担当者を横断的に集め、設計仕様ごとの「重量削減インパクト」を議論します。
アルミ化・薄肉化による強度シミュレーションや、サプライヤー提案による素材代替案など、現場ならではの改善が飛び出します。
サプライヤー側から見れば、バイヤーの「なぜ重量ダウンにこだわるか」がリアルに伝わり、差別化につながります。
(3)設計変更のリスクと経済効果を試算する
実際に試作・評価を行い、設計変更に伴う強度・信頼性担保やイニシャルコスト増加と「物流費減」のバランスをシミュレートします。
物流現場では、トライアルで新仕様を組み込んだ荷姿テストを行い、現物レベルでの載せ替え・作業性・安全性も確認します。
製造・在庫・配送・売上まで通したトータル損益計算(TCO試算)がポイントです。
(4)PDCAサイクルによる継続的改善
一度の工程改革で満足せず、出荷量推移やクレーム削減効果など物流KPIも定量的に管理します。
想定と異なる実績データが出れば、設計部やサプライヤーと再度協議し、粘り強く現場改善を継続しましょう。
重量削減×物流改革の先進事例紹介
自動車業界に学ぶマスバラエティ対応
某完成車メーカーでは、構成部品のアルミダイカスト化や樹脂成形技術の適用で一台あたり20kg超の軽量化に成功しました。
これにより主要輸送路線の年間トラック輸送回数を約12%削減、物流費換算で数千万円単位の削減に成功しています。
また、サプライヤー側も設計志向型バイヤーとの積極的な膝詰め対話により、高難度な軽量素材調達と納品のノウハウを蓄積し、長期パートナー契約獲得につなげるなど、相互の利益を追求しています。
電子部品業界の「情報連携高速化モデル」
某エレクトロニクス部品メーカーでは、設計段階から物流担当がオンラインで参加し、
3D CADと輸送シミュレーションソフトの連携により、製品サイズ・形状・重量ごとの最適梱包・最適輸送モードを即時提案しています。
設計初期で「箱詰め個数」や「王道コンテナ積載効率」が1%でも向上する設計案を重要視することで、1個あたりの物流費の微差が年間で数億円単位の差となり、競争優位を実現しました。
まとめ:重量削減を起点にモノづくり現場の意識を変える
製造業の物流費削減は、値下げ交渉や外部委託だけでは本質的な効果が限定的です。
最も効くのは「重量」そのものを減らす発想と、それを現場全体でシミュレーションし、実行に移せる組織連携です。
設計、調達、物流が一体となり、古い「縦割り」ではなく新しいラテラルシンキング=横断的思考で取り組むことこそが、
昭和型製造業から未来型製造業へ進化していくカギです。
物流費の最適化を目指す全ての方に、今こそ「重量削減設計×物流シミュレーション」を強くおすすめします。
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