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投稿日:2026年1月3日

ガード部材の軽量化が安全性を下げる落とし穴

はじめに:現場が直面する“ガード部材軽量化”の潮流

製造業の世界では、生産性とコストダウンは永遠のテーマです。
その中でも多くの企業が、ガード部材をはじめとした設備・部品の軽量化に取り組んでいます。

一見、軽量化は「物流コストの削減」「設置工数の短縮」「省資源化」「作業者の負担軽減」と、企業にとってメリットが多そうに感じられます。
しかし、軽量化が裏目に出てしまう場面が現場では多々発生しています。
特に“安全性”の低下という深刻な落とし穴を見逃してはいけません。

この記事では、20年以上製造現場の最前線で培ってきた現場目線で、なぜ軽量化が安全性の劣化につながるのかを掘り下げます。
さらに、その背景にある業界の常識や調達購買の判断、サプライヤー側の考え方なども取り上げ、現場と経営の両立に向けた実践的な知見をお伝えします。

ガード部材の“軽量化バイアス”が生まれる背景

コストプレッシャーが生む調達購買の落とし穴

今、多くの製造業では調達購買において「コスト最優先」の文化が根強く残っています。
昭和世代から続く“現場でなんとかすればいい”という精神と、“量産は1円単位の勝負”という固定観念です。

その結果、設計段階でも仕様打合せ・見積徴収の際にも
「ガード部材に最も安価なアルミフレームや樹脂板で充分だろう」
「パイプ肉厚は極限まで薄くしてコストを削りたい」
といった考えが優先されがちです。

調達購買担当者の評価はコスト削減割合で測られることが多く(特に大企業ほど)、彼らには“安全性まで踏み込んだ補足提案”が求められていません。
ここに構造的な盲点が潜んでいます。

サプライヤー側は“指示どおり”でリスクヘッジ

サプライヤーもまた受注競争の激化で
「発注条件を満たすこと=顧客のニーズを満たす近道」
と考えがちです。

結果として
「これで仕様を満たしていますよ」「お客様が求める重量・価格です」
といった表面的な納品が横行しがちです。
本来ならば
「この肉厚では安全基準不足が考えられます」
「衝撃試験を追加提案します」
「現場での取付時に事故リスクがあります」
こうしたアドバイスがほとんど出てこない特徴が、アナログ的なメーカー・サプライヤーの構造的な弱みと言えるでしょう。

ガード部材軽量化による“安全性低下”の実例

実例1:荷重に耐えられず一撃で損壊

例えば、ライン上の機械ガードをアルミ押出材の薄肉パイプで作っていたケースです。
フォークリフトや搬送カートとの接触事故時、ほぼ一撃でグニャリと潰れてしまい、機械も作業者も守れない状態となりました。
これでは本末転倒といえます。

多発する要因として
・設計荷重の定義が曖昧
・“共用で使い回せる既製品”という安易な発注
・調達コスト低減圧力による最小スペック指向
がありました。

実例2:省スペース・軽量化の罠による映像漏洩

軽量なポリカーボネート板で作った安全ガードが、想定外の物体衝突で割れ、映像管理設備がむき出しになりました。
結果、知的財産流出のリスクも発生。
ガードの“衝撃強度”に関して、設置担当も調達担当も「現場取付性」「コスト」しか重視していませんでした。

実例3:メンテナンス中の落下事故リスク増大

薄型鋼板を使い簡易的に作ったカバーの場合、サイズが大きいにも関わらず“剛性計算・曲げ強度評価”を省略。
メンテナンス中の一部が意図せず外れ、天井から作業者に落下する事故が発生しました。
このような軽量化偏重は、本来「守るはずの人命」を危険にさらす結果となります。

“現場の知恵”が活かされない昭和的構造問題

設計・調達・現場の分断

製造業の多くでは、設計・調達・現場作業がそれぞれの論理や目的に従い“縦割り”で動いています。

設計は「カタログスペック・コスト」ばかり重視し、実際の使われ方や現場リスクには疎くなりがちです。
調達現場は「より早く、より安く」に駆られます。
現場作業者は、与えられたガードを「なぜこの材質・厚みなのか」理解しないまま使わざるを得ません。

この分断が、事故やトラブルが起きてから「誰の責任か?」の押し付け合いにつながります。

アナログ業界特有の“省略・慣習”も拍車をかける

昭和から続く慣習には
・「去年まで大丈夫だったから今年も大丈夫」
・「図面を転用して安全計算を省略」
・「現場作業者の腕に頼ればいい」
などの”属人力”依存体質が根強く存在します。

このため「設計思想から抜け出して、本当に必要な強度解析や安全基準への見直し」が後回しになってしまうのです。

“現場目線”から考える軽量化と安全性の両立策

1. ガード設計には“使い方”起点で要件を整理する

まずは現場でどんなリスクがあり、どんな使われ方をするのか、設計初期段階で現場メンバー・メンテナンス担当者も交えた議論が必須です。
「何トンの荷重がかかったらどうなるか」
「どんな落下物や接触事故が起こりうるか」
「メンテ中にどういった取り外し作業があるか」
具体的事例を緻密に抽出し、スペックや材質決定の根拠とすることが大切です。

2. 軽量化提案には“リスク評価”の視点を組み込む

部材の軽量化を進める際は、薄肉化や代替素材の強度評価・耐久試験を必ず実施しましょう。

調達担当者がサプライヤーに
「同じ材質で薄肉化した場合の強度試験データを提出願います」
「ポリカーボネート使用時の衝撃試験結果を見せてもらえますか」
といった“現場リスクへの具体的な根拠資料”を付けて判断し、それを現場へ説明するプロセスが大切です。

3. サプライヤーにも“安全提案文化”を浸透させる

発注者(バイヤー)側の意識転換も求められます。
単なる“安さ競争”ではなく、「ガードの役割とリスク」を伝え、
「こういった現場リスクも想定しますが、御社から追加リスクのご指摘はありませんか?」
「価格以外にも安全性評価での技術提案を重視します」
といった“共創型の発注姿勢”が、サプライヤー側の行動・提案力強化につながります。

4. 軽量化メリットと安全投資の最適ラインを探る

ガード部材全体のトータルコスト(製造、設置、メンテ、事故リスク)で考えることが重要です。

単価が多少上がっても“事故率低下”や“現場作業効率向上”という定量的なメリットがある場合、「安全投資」であることを社内で数値としても示しましょう。
この“費用対効果”が示されれば、調達・経営層も「安全性への予算投資」を納得して進めやすくなります。

今、製造業に求められる“新しい現場起点のラテラル思考”

製造業はコスト至上主義からの脱却が強く求められています。
ガード部材の一つを取っても、軽量化の陰にある“安全性”を、現場目線・生活者目線・人命目線に戻すことが、現代における真の価値創造なのです。

ラテラルシンキングとは、「既存の枠にとらわれず多角的・創造的に問題を解決する力」でもあります。
設計・調達・サプライヤー・現場――それぞれが“上流から下流への流れ”だけでなく、“横断的・現場起点”で考え抜くことで、真に強い現場・安全な現場・新しい製造業の地平が見えてきます。

まとめ:軽量化は“目的”ではなく“手段”、本質は守る力にあり

ガード部材の軽量化は、時代の流れとして必要不可欠なトレンドです。

しかし「軽量化=安定・効率・安全」では決してありません。
本質は「人や機械を守る」というガード本来の役割を実現できているかどうかにあります。

コストも軽さも、目的ではなく手段にすぎません。
現場から発信できる“気づき”を生かし、本当の意味での強い・安全な製造現場を一緒に作り上げていきましょう。

サプライヤー、調達担当、設計者、現場作業者――
全ての立場からガード部材のあり方に目を向け、
“昭和の常識”を乗り越えて、製造業全体のレベルアップにつなげていきたいと思います。

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