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飲食店がOEM先を選ぶときの「味への共感性」を見抜く質問リスト

目次
はじめに
飲食店が新しい商品開発や自社ブランド商品の立ち上げに取り組む際、OEM先選びは避けて通れない重要なプロセスです。
近年、地域色や個性を活かしたオリジナルメニューの需要拡大に伴い、OEM(受託製造)を活用する飲食店は増加傾向にあります。
しかし「コスト」「納期」「品質管理」などの条件が良いだけで選んでしまい、大切な“味のこだわり”が伝わらず失敗してしまう事例も後を絶ちません。
今回は、現場で長年OEM先の選定や品質管理に携わった経験から、飲食店が「味への共感性」を見抜ける質問リストと選定ノウハウをご紹介します。
製造現場ならではのリアルな視点で、昭和的なアナログ対応に埋もれがちな業界の裏側も踏まえて解説しますので、これからOEM活用を検討する方も、現在進行中の方も、自信を持ってパートナー選びができる内容になっています。
なぜ「味への共感性」が重要なのか
飲食業界において“味”とは、商品価値そのものを左右する核心です。
OEMメーカーの技術や生産能力はもちろん大切ですが、「この味の良さ」「この店の思い」に心から共感し、細部まで一緒にこだわる姿勢がなければ、本当に満足できる商品化は叶いません。
OEM選定を経験した現場目線で言えば、「製造工程を厳密に管理できていれば、どこでも同じ味が出せる」という考えは非常に危険です。
なぜなら、多くのOEM工場は、クライアントからの指示通りのスペック・レシピで淡々と量産するスタンスが根強く、現場サイドの『なぜこの比率?』『この材料にはどんな意図?』といった問いを持つ文化が育ちにくい傾向があるためです。
そして、「なんとなくこんな感じで…」の現場感覚や、人手による“さじ加減”が生きる商品ほど、仕様書だけでは伝わらない“共感力”が決定的な差になります。
つまり、味への共感性が高いOEM先ほど、結果として本来の個性や魅力を最大限再現してくれるのです。
具体的な質問リストと意図
それでは、実際に候補となるOEMメーカー担当者へのヒアリングに使える「味への共感性」を見抜くための質問リストと、そのポイントをひとつずつ解説します。
1.「実際に当店の商品を召し上がったことはありますか?」
これはシンプルな質問ですが、OEMメーカーが事前に試食し、その体験をどこまで重要視しているかを測るリトマス試験紙です。
「これからいただいてみたい」と返してきた場合でも、その後すぐに訪問・試食し感想を語ってくれるかが分かれ道です。
味への共感性の高いメーカーは、「最初に実際に食べて、その感動をスタッフ間で共有している」「まず現物を自腹で購入し徹底的にリサーチした」など、行動が伴っていることが多いです。
2.「味の再現や商品設計の過程で、貴社が最も大切にしていることは?」
「衛生管理やコスト最適化」といった標準的な製造観点しか出ない場合は、現場側で味を最優先事項にできていない傾向があります。
一方、「まずお客様がなぜこの味にこだわっているか理解すること」「試作を何度も繰り返し感覚をすり合わせること」といった意識が感じ取れれば、共感性の高い担当者だといえます。
3.「試作品へのフィードバックをどこまで対応してくれますか?また、その際どんな体制ですか?」
OEMメーカーによっては、2回目・3回目以降は“有償”や“回数制限”を設けているケースもあります。
これは現実問題として仕方ない一方、本当に味に共感し長期的パートナーを目指す会社は、「最初から細かな修正を重ね一緒に追い込んでいきたい」との考えをもっています。
「修正対応は何度まで無料です」という条件だけでなく、「開発担当者も現場職人も試作会に同席します」「嫌がられない範囲で積極的に意見交換できますよ」といった姿勢が出るか見極めましょう。
4.「このレシピで重要なのは何だと思いますか?」
あえてオープンクエスチョンで意見を聞きます。
表面上の素材や味つけ以外にも、「後味の余韻」や「具材の切り方」「食べた時の食感のストーリー」など、実際に商品に触れ、顧客視点で考え抜いたコメントが聞ければ、共感性は高いと言えます。
逆に、スペック表だけ読み上げるような回答では、現場の温度感まで理解しているとは言えません。
5.「これまでで最も難しいと思った味の再現エピソードは?」
この質問からは、これまでの経験値および製造現場で「なぜ苦労したか」「どのような工夫で乗り越えたか」を具体的に聞き出す狙いがあります。
共感性の強いメーカーは、「どうしたらお客様の理想の味を再現できるか、深く議論できる環境がある」「メーカー、顧客、現場が一体となってPDCAを回す」というカルチャーを持っています。
6.「今後、どんな商品開発や味づくりに挑戦したいと思いますか?」
これはOEMメーカーの“進化意欲”を探る質問です。
「定番の味や看板商品ばかり開発しています」との回答ではなく、「地域素材やトレンドにも目を向けている」「今までにない美味しさを提案したい」といった答えが出てくれば、新しい提案やコラボを期待できます。
実体験に学ぶメーカー選定時の落とし穴
昭和から続くアナログな観念が根強い業界では、「上意下達」や「お付き合いの長さ重視」でパートナーを決めがちです。
ですが「伝統の味」を工場で再現するほど実は難しいタスクはありません。
現場目線で言えば、以下のような“落とし穴”があります。
味見をせずに製造をスタートしてしまう
意外に多いのが「レシピと指示書だけ渡し、あとはお任せで…」というパターンです。
例えば、具材を機械でカットする際のミリ単位の誤差や、調理プロセスの温度管理ひとつで、同じ材料を使っても“全く違う味”になることもしばしばあります。
現場力の差は、こうした微細な違いを許さず、実際に五感で確認できる“共感型”OEMなのです。
製造キャパやコストだけで選び、味作りを妥協
現場サイドの工場長や生産管理担当としてよく経験するのが「とにかく大量に安く作ってほしい」という依頼です。
量産に特化したOEM先は、短納期・低コストでソツのない仕事をしてくれますが、その背景には「商品ごとの手間や想いをコストで切っていく」文化が根付いていることも多いのです。
結果、味や食感に不自然な違和感が生じても、「このスペックなら十分合格」というスタンスのまま商品化されてしまいます。
ここで発注側も“味にうるさい”姿勢を崩さないことが重要といえます。
バイヤー・サプライヤー双方にとっての「味の共感性」の価値
この「味への共感性」は、バイヤーにとっては商品の独自性や顧客満足度、ブランディングに直結します。
一方、サプライヤー(OEMメーカー・工場)から見れば、「食の現場を理解している」と評価されることで、長期的な信頼関係や追加発注、他の紹介案件獲得にもつながります。
さらに、現場職人やエンジニアの“モチベーション”にも良い効果を与えます。
ただ言われた通り作る「作業員」から、「味の設計者」として企画段階から深く関われるのです。
味に妥協しないOEM選びで未来を拓く
飲食の現場も、今やDX・自動化・品質管理強化などデジタル化の波が日々押し寄せています。
ですが“味づくり”の現場は、どこまで進化しても、最終的には人の感覚=「共感力」に終始します。
本記事で紹介した「共感性を見抜く質問リスト」を活用し、コストや納期だけでない“味”に集中したパートナー選びを実現してみてください。
発注者・OEMメーカーが一緒に食卓を囲み、「これはこの店/この土地ならではの美味しさだね!」と納得できる、その瞬間こそが唯一無二の競争力となるはずです。
製造業界関係者や、これからバイヤー・サプライヤー共に成長を目指す皆様は、ぜひ“アナログな現場力”と“ラテラルな発想力”を両立させ、次世代の「食」の価値を共創していきましょう。
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