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リチウムイオン電池安全性規格対応と品質試験リスク低減策

目次
はじめに
リチウムイオン電池は、スマートフォンやノートパソコンから電気自動車、さらに再生可能エネルギーの蓄電池まで、現代社会に欠かせないエネルギー源です。
高エネルギー密度や軽量性といった利点がある一方で、発火や爆発につながるリスクも抱えています。
そのため「リチウムイオン電池安全性規格」に適合すること、および実効性のある品質試験と製造現場でのリスク低減策の徹底が、製造業界全体の信頼を支える大きな使命となっています。
本記事では、約20年にわたり製造現場の最前線で調達・生産管理・品質管理・工場長職を経験してきた現場視点から、リチウムイオン電池の安全規格対応および品質試験の重要性、そして実効性のあるリスク低減策について、アナログ性が根強く残る現場文化や最新の業界動向も交えながら詳しく解説します。
サプライヤーとしてバイヤー視点を把握したい方、現場で自ら技術や品質力を高めたい方に向けて、現実的かつ実践的な内容をお届けします。
リチウムイオン電池の主な安全課題と事故事例
リチウムイオン電池は、過充電・過放電・内部短絡・高温など、さまざまなトラブルを引き金に発火・爆発のリスクが高まります。
実際、世界的メーカーのノートパソコンやスマートフォンのリコール、電気自動車の火災事故など、記憶に新しい大規模インシデントも発生しています。
なぜこうした事故が絶えないのでしょうか。
現場目線で見ると、部材サプライヤーの品質斑(ばらつき)、組立工程での微小異物混入や溶接不良、設備メンテナンスの遅れ、規格に対する認識の甘さなど、さまざまなヒューマンファクターと現場事情が複雑に絡み合っています。
特に昭和的な「暗黙知」「現場の勘」に頼り、規格の本質が浸透しきっていない現場では、リスクが顕在化する可能性が高くなります。
リチウムイオン電池の主な安全性規格とは
1. 国際規格(IEC62133、UL1642など)
IEC62133は国際電気標準会議(IEC)が定める、安全性試験の基準で、家庭用や産業用を問わず、あらゆるリチウムイオン二次電池に対して適用されます。
UL1642(アンダーライターズ・ラボラトリーズ規格)は主に北米市場向けで、米国やグローバルな家電製品・IT機器に組み込まれる電池の評価基準となっています。
2. 日本国内規格(PSE、JIS C8711/8712)
PSEマーク(電気用品安全法)の適合は、国内で一般消費者向けに販売する電池では必須です。
加えて、JIS C8711/8712など日本独自の厳しい評価も求められるケースが増えています。
3. 車載・産業用独自規格(UN38.3、ISO12405など)
グローバル物流対応や車載バッテリーシステム向けには、国連規格(UN38.3)や自動車メーカー独自の評価プロトコル(ISO12405、JASO規格など)の適合が必須となります。
このように規格は多岐にわたり、ターゲット市場や用途によって最適な試験や対応レベルを見極めるバイヤー/エンジニアの眼力が必要です。
安全性試験の具体的な内容と現場での着眼点
主な安全性試験の概要
これらの規格に適合するため、以下のような多様な安全性・信頼性試験を実施します。
– 過充電・過放電試験
– 外部短絡試験
– 温度変化(サーマルサイクル)試験
– 振動・衝撃試験
– 釘刺し・圧壊(クラッシュ)試験
– 端子強度・ねじり試験
– 水没試験
– 恒温恒湿試験
どの試験も事故を未然に防ぐためのものですが、現場では“カットアンドトライ”ではなく、設計から工程、設備、人的管理まで全体を見渡して結果を鵜呑みにせず、なぜこの試験が必要か、どこに危険が潜むのか「規格の本質」を深く理解することが重要です。
品質試験の実施現場にありがちな課題
例えば、下記のような“起こりがち”なリスクがあります。
– 一部の試験がマニュアル的かつ形式的になり、異常検出力が低下
– サンプル抜き取りの偏りや、ロット外れの見逃し
– フロア間や中国工場など拠点間での基準ばらつき
– 新規センサーや検査設備への更新遅れ
– 不適合結果の情報伝達・是正措置が途中で止まる
バイヤーや調達部門は、「この試験結果にどこまで信頼性があるのか」を現場に“本気で”確認しに来ます。
特にサプライヤーの立場であれば、形式的な適合ではなく『どう生産現場で異常を根絶する体質をつくれているか』『想定外リスクを早期に検出・対策するスピード感』もバイヤー評価の重要指標となっています。
安全性規格・品質試験のリスク低減策
1. Unsafeなアナログ作業・属人化からの脱却
多くの製造現場ではいまだに、日々の検査やデータ取り、検品作業を紙記録や手作業で進めているケースが少なくありません。
人的な“見逃し”“うっかり”は、品質や安全性の最大の弱点となります。
ではどうするか。
– 画像認識やIoTセンサを活用した自動検査・異常検知
– 検査記録の電子化・トレーサビリティ確保
– 教育・訓練とチェックリストの標準化
– アンケート的ではない現場ヒアリングやKYT(危険予知トレーニング)の新手法導入
こうしたアプローチが、現場に根付いていない場合はトップダウン施策と現場リーダーの両輪で地道に意識改革を進め、“昭和流”から徐々に脱却する必要があります。
2. 工程設計から「安全性ビルトイン」思想を貫く
トラブルは最終検査で発見するもの……という考え方は今後通用しません。
設計段階からフォールトツリー解析(FTA)や故障モード影響解析(FMEA)を徹底し、どんな微細な不具合も事前にリスクマップとして洗い出します。
さらにAIやクラウド活用による工程内モニタリング、部品単位ごとの流動検査、協働ロボット導入による人手工程の最小限化…といった、拡張的アイデアが今後求められてきます。
3. サプライチェーン全体での「共創」リスクコミュニケーション
大手バイヤーは“ノーリターン、ノー事故”をサプライヤーに求めるのが当たり前です。
現代では、ユーザー・バイヤー・サプライヤーがひとつのチームとなって潜在リスクに向き合い、情報共有と現場改善をコミュニケーションしながら推進する「共創型リスク管理」の思想を実践しなければなりません。
– バイヤー側が現場へ出向き、定期的な監査・作業観察を実施
– サプライヤーとの工程FMEAレビュー会開催
– 問題共有だけでなく“失敗談”から学ぶ仕組み化
– 上流から下流まで工程間ノウハウのオープン化(委託関係の壁を越える)
これらが業界全体の品質底上げに不可欠です。
昭和流の現場文化に対する新アプローチという視点(ラテラルシンキングで)
現場には、伝統的な「指差呼称」「帳票手書き」「言われたことを黙々と繰り返す」といったアナログ文化が広く根付いています。
しかし、その文化を無理に否定することでは現場の協力は得られません。
むしろ、昭和流の「人の目」「作業手順へのプライド」をうまく活用しつつ、デジタルテクノロジーやアジャイル改善思想と融合させる発想が重要です。
たとえば、
– 旧来の帳票に見える化ツールやリアルタイム通知アプリを重ね合わせる
– ベテランのノウハウをデジタルワークフロー上に可視化して“現場AI”として使う
– 「ヒヤリハット」や「現場異常」の経験を、現場メンバー自身が投稿できるインターナルSNSやチャットボット仕組み導入
– アナログ検査工程にもIoTタグ機能やQR記録を装着し、ベテランの“肌感覚”をデジタル情報とリンクさせる
こうした工夫で現場参加意識を高め、古いだけでなく“進化し続ける現場文化”を創造することが、これからの日本型製造品質の新しい競争力になります。
まとめ:バイヤーとサプライヤー両視点で求める安全・品質とは
リチウムイオン電池の安全規格の適合、そして本質的な品質試験・リスク低減策は、単なる検査項目の追加や設備投資にとどまりません。
設計・現場・サプライチェーン全体を貫く「本気の現場体質づくり」「規格を超えたリスク先読み」「昭和流とデジタルのハイブリッド」が欠かせない時代となりました。
バイヤーを目指す方は、書類・スペックだけでなく、現場の管理手法や人の動き・異常感知力まで観察し、リスクに強い現場評価・改善力を持つことが競争力です。
サプライヤーの方は、バイヤーの「規格ありき+現場本質評価」を読み解き、自社の生産現場が“偶発的事故”ゼロに向けてどこまで進化できるかを問い続けてください。
安全・品質管理は、何よりも“地道な現場改善”と“規格・現場の知恵”の融合に未来があります。
製造業のさらなる発展のため、今後も現場から新しい価値を生み出し続けましょう。
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