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地方製造業の連携がもたらす調達の多元化と価格安定化の効果

目次
はじめに:地方製造業の連携が求められる背景
日本の製造業は長年にわたり、効率性や品質で世界をリードしてきました。
しかし、近年では人口減少や少子高齢化、さらにグローバル化による競争激化など、従来の成功モデルが揺らいでいます。
特に地方の製造業においては、「下請け型構造」や「価格競争頼みの調達」、さらには「属人的な情報収集」といった昭和時代からの慣習が色濃く残っています。
今、多くの現場が感じている危機感の一つが「調達リスク」です。
そのなかで注目されているのが、地方製造業同士の連携による調達の多元化と、価格安定化に向けた新たな取り組みです。
本記事では、工場現場で感じてきたリアルな課題を踏まえつつ、多元化・連携による成果や課題、そして未来の展望まで、現場目線で解説していきます。
調達の一元依存が抱えるリスクとは
サプライチェーンの脆弱性が露呈した平成から令和へ
1990年代のバブル崩壊以降、日本の製造業は「コストダウン」と「効率化」を至上命題に掲げてきました。
その結果、多くの企業が安価な単一サプライヤーへ発注を集中し、部品点数の削減やジャストインタイムなどが取り入れられるようになりました。
一方で、これは調達先が一社に依存する「一元化」の促進にもつながりました。
例えば、2011年の東日本大震災、2020年以降の新型コロナウイルス危機。
いずれも一部サプライヤーの操業停止による部品調達難が社会問題となり、サプライチェーンの脆弱性が一気に浮き彫りになりました。
価格交渉力の低下とイノベーションの減速
一社依存が長期化すると、調達先との関係が固定化し、競争原理が働きにくくなります。
その結果、価格交渉力は低下し、万一コストアップ要因が発生しても、緊急時に新規調達先を開拓するのが困難となります。
また、調達先が入れ替わりにくいことで、最新加工技術や新素材といったイノベーションの入口も狭まるリスクが生じます。
地方製造業の連携による調達の多元化とは
多元化(マルチソーシング)の基本的な考え方
調達の多元化、すなわちマルチソーシングとは、重要な部品・材料の調達先を複数社確保する戦略です。
この方法は古くから自動車メーカー(OEM)等で実践されてきましたが、地方中堅・中小の製造現場ではまだ十分に浸透していません。
特に伝統的な業界ほど「馴染みの取引先からしか買わない」「新規開拓はコストとリスク」といった固定観念が根強く残っています。
今こそ、地場企業同士が垣根を超えてネットワークを作り、多元化を進めるべき時代なのです。
地方連携の進め方:組合・共同体・オープンネットワーク
地方製造業の連携強化には以下のアプローチがあります。
・商工会議所など地域経済団体を活用した「情報交換会」
・異業種交流会から発展した「共同受注体制」
・地元自治体や金融機関の仲介による「連携マッチング」
・ITプラットフォームを利用した「需要・供給ネットワーク」の構築
工場ごとに想いや事情はさまざまですが、小さい規模で始めて、小さな成功体験を積み重ねていくことができます。
調達の多元化がもたらす具体的な効果
サプライチェーンリスクの軽減
多元化最大のメリットは、思わぬ災害や経営悪化、為替変動など外部要因による調達ストップのリスク分散です。
複数の調達先を持つことで、予備調達体制や緊急バックアップ体制が築け、いざという時の対応力が格段に高まります。
価格の適正化と安定化
複数の仕入ルートが確保されていると、単独取引に比べて価格競争力が働きやすくなります。
これにより、極端な値上げを抑制したり、条件交渉に幅が生まれるのです。
加えて、共同購買によるスケールメリットや、地域でのコストシェアによる価格安定化も達成できます。
イノベーションの機会創出
各社がそれぞれの得意領域・新技術を持ち寄れば、今までにない製品や工法の誕生が期待できます。
連携を通じて情報交換を密にすれば、「自社では実現が難しかった付加価値提案」や「改善事例の水平展開」も推進しやすくなります。
現場から見た、連携・多元化推進のリアルな課題
アナログな商習慣・文化・心理的ハードル
現場で日々感じてきた課題は、やはり「昭和型のアナログ商習慣」です。
「よそ者」「新規参入」に対する抵抗感、「顔の見える関係」に偏重した付き合い、伝票やFAX頼みの手配フローなどです。
また、「技術やコスト情報を他社と共有したくない」「今のやり方を変えるのは不安だ」といった心理的ハードルも根強く存在します。
管理コスト・調整作業の増加
調達先が増えることで、品質管理、納期管理、価格管理といった業務が煩雑化します。
「マルチ対応」「複雑な仕組み」=「管理コスト増」「担当者の負担増」という現場実感も否めません。
一方で、これらをITや標準化、マニュアル整備等でカバーする企業も増えはじめています。
事例に学ぶ:地方製造業連携の成功パターン
共同購買でコスト削減した精密部品工業団地の事例
東日本のある精密部品工業団地では、従来は各社がバラバラに図面追い・価格交渉を行っていました。
ある時、共通部材(ボルト・ナット・アルミ材)をまとめ発注するスキームを立ち上げ、年間約10%のコストダウンを実現しました。
さらに最終的には、共同倉庫を持つことで「在庫切れリスクの低減」「マイクロ物流の効率化」にまで拡張しています。
加工ネットワークで高付加価値製品を生み出した工場グループ
ある関西圏の中小工場が集まったグループは、自社の強み(精密切削・溶接・塗装など)を活かし、共同で一貫生産体制を構築しました。
案件ごとに最適工程を生み出すことで、1社単独では難しかった医療機器やIoT関連部品など新規案件獲得に結び付きました。
各工場が「自分たちだけで全部抱えない」「得意分野への集中」を徹底したことで、納期遅延や品質問題もほぼ発生しなくなったのです。
昭和からの脱却へ:現場がまずできること
まずは情報を“ひらく”、顔を合わせて話すことから
どんなプロジェクトも「情報を閉じる」発想からの脱却が第一歩です。
たとえば、仕入価格までは出せなくても、「この部品のこの加工、他社でできる?」という小さな相談から始めてみましょう。
工場見学や商品説明会への参加も、信頼構築の礎となります。
IT・デジタル活用は待ったなし
DX(デジタルトランスフォーメーション)は大企業だけのものではありません。
見積もり依頼、品質管理、発注履歴など、できるところからIT化を進め、業務の「見える化」と「省力化」を推進します。
最近はクラウド型調達プラットフォームや、製造業向けマッチングサイトなども充実しつつあります。
小さな仕掛け、小さな成功から始める
いきなり大々的な組織改革を目指さず、まずは調達先の分散化や共同購買など、小さな成功例を積み上げることが肝心です。
その成功を共有し、現場担当者が「やってよかった」と感じる事で、次第に組織に連携文化が根付いていきます。
これからの製造業現場とバイヤー・サプライヤーの共存戦略
調達の多元化・連携は単なるコストダウンやリスク分散に留まりません。
「地方でモノづくりを続けたい」「雇用や地域経済を守りたい」という想いを持つ仲間と供に、持続可能な産業生態系を育むトライ&エラーの現場力が重要です。
バイヤーにとっては「選ぶ力」「条件交渉力」を磨き、サプライヤーにとっては「何を差別化ポイントとするか」「いかに信頼を勝ち取るか」が、これからますます問われます。
業界の垣根や古い商習慣を乗り越え、“共創”こそが最大の競争力になる時代です。
まとめ:現場から変わる、地方製造業の未来
調達の多元化・連携は決して一朝一夕に実現できるものではありません。
しかし、小さな現場の一歩一歩が集まれば、確実に「守り」だけでなく「攻め」の製造業が実現できます。
現場同士が信頼し合い、情報をオープンにし、ともに成長の戦略を描く―。
その積み重ねが、これからの地方製造業の強靭な“ものづくり力”を生み出していくのです。
未来のバイヤー、サプライヤー、そしてすべての製造現場で働く皆さんと、共により良い産業の地平線を開拓していきましょう。
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