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設計品質を高める設計力の論理的強化と試験製造までの実践フレーム

目次
はじめに:設計品質が製造業の命運を左右する時代
製造業の競争力を根本から左右するもの、それは「設計品質」です。
どれだけ良質な材料を用い、忠実に製造したとしても、設計段階での品質が低ければ、最終製品の品質もまた低くなってしまいます。
特に昨今は、製品ライフサイクルの短縮、カスタマイズ要望の増加、グローバル化など激しい環境変化が続いています。
ここに、従来の昭和的な「経験と勘」に頼った設計・試作プロセスだけでは太刀打ちできない新たなフェーズが到来しています。
本記事では、製造現場で20年以上培ってきた実践知と、令和時代にも通用する論理的設計力の強化ノウハウをご紹介します。
バイヤーの方、将来の調達購買を目指す方、サプライヤーの方にも役立つ、現場目線の内容です。
設計品質とは何か:仕様以上の強みを生み出す考え方
設計品質=「仕様どおり」だけでは不十分
設計品質と聞くと、「図面どおり、仕様どおりにモノができればいい」と思われがちです。
しかし、本来の設計品質とは「製品が安定して、長期間、期待性能を発揮できること」、そして「現場で確実に作れること・調達できること」も含めた広い意味を持ちます。
これらは、設計段階で図面・仕様だけを満たすこととは別次元の問題です。
例えば、部品点数が多かったり、複雑な加工を要求したり、材料のばらつきが設計で吸収できずに現場後工程で調整が必要…。
こうした「現場泣かせの設計」がまだまだ多く見られます。
設計品質を高める必要性が高まる背景
近年、設計品質の高低がますます企業競争力に直結しています。
例えば、以下のような社会的要因が背景にあります。
– サプライチェーンの多国籍化・外注化による標準化の重要性
– 「不良ゼロ」や「トレーサビリティ」など高まる品質要求
– リードタイム短縮・設計変更対応の柔軟性
– 熟練技術者の引退(いわゆる2025年問題)による暗黙知の形式知化
こうした状況で、設計品質を単なる仕様の満足や形状の成立にとどめていては、すぐに海外勢や業界新興勢力に追い抜かれてしまいます。
設計力を論理的に強化する4つの実践ポイント
設計品質を本質的に高めるには、「論理的な設計力」が不可欠です。
ここでは、現場×理論のハイブリッドな観点から、設計力を強化するための具体策をご紹介します。
1.QFD(品質機能展開)で顧客目線設計を徹底する
QFD(Quality Function Deployment)は、製品機能や顧客ニーズを徹底的に分解し、品質特性・設計仕様にロジカルに展開していく手法です。
日本発祥の手法ですが、自動車やエレクトロニクス各社で今なお重要視されています。
顧客から言われた要望や市場の声を、設計レベル、部品レベル、工程レベルまで一気通貫で「見える化」できます。
実際の製造工程や購買現場では、「なぜ、この部品にこの公差精度が必要なのか」「なぜこの材料を使うのか」という問答が必須です。
プロセスを「目的」思考で因数分解して考えることで、後工程に優しい設計、スマートな調達、現場力につなげられます。
2.失敗学のフレームワークでリスク設計を強化する
設計というと「プラス要素(できること)」を考えがちですが、優れた設計者は「マイナス要素(起こるかもしれない失敗)」も同時に検討します。
– よくある不具合パターン(過去の設計クレーム、現場トラブルの事例)
– サプライヤーでの材料破断・寸法不良・表面処理のばらつき
– 製造現場の組立作業に潜むヒューマンエラー
こうした「失敗のデータベース」を設計フェーズに活かして、限界設計・許容設計へ論理的に落とし込みます。
たとえば、FMEA(故障モード影響分析)、FTA(故障の木解析)、DR(デザインレビュー)などの仕組みを活用すると、属人性を排して設計の堅牢性・再現性をアップできます。
3.設計生産性の最大化=「製造しやすさ」「調達しやすさ」を重視する
どんなに高機能な設計でも、「作れない設計」「採算が合わない設計」になっては本末転倒です。
製造業では今なお、暗黙知で部分最適された設計や、購買コスト・工程負荷度を考慮しない設計が散見されます。
これを打破するには、設計者自身が「現場に足を運ぶ」「購買目線でサプライヤーの苦労を体感する」ことが重要です。
実際に生産ラインや外注先を見て、作りやすさ(DFM:Design for Manufacturability)、調達しやすさ(DFS:Design for Sourcing)を設計要件に組み込みます。
– 共通部材や規格品の採用(在庫最適化、サプライヤー選定容易化)
– 工程簡素化による工数削減
– 不要な高精度・高規格を設計段階で排除する合理化
こうした点を事前に設計レビューで検証することで、トータルでの設計品質向上に結びつけられます。
4.IT・自動化時代における設計ノウハウの共有・標準化
昭和的な「名人芸」「ベテラン設計者の設計メモ」に頼った体制も依然として根強いです。
しかし、業界全体がIT化・自動化へとシフトする今、「設計知の標準化・共有」なくして継続的な品質向上はありません。
具体的には、設計フォーマットやモジュール化、設計データベース(PLM)、ナレッジベース、自動シミュレーションツールなど、設計を体系的に論理化・標準化する仕組みづくりが肝要です。
これらはバイヤーやサプライヤー側から見ても、「なぜこの仕様なのか」「代替提案可能か」が検証できる材料となり、取引の透明性・円滑化に直結します。
設計から試験製造までの実践フレームワーク
設計品質を高めるには、「設計」→「試作」→「量産前評価」→「量産移行」まで、シームレスな実践フレームが求められます。
実際に工場長・設計リーダーとして現場を見てきた経験から、より実効性の高いサイクルをご紹介します。
1.仕様決定段階で現場・調達・品質部門を早期巻き込み
多くの現場でよくある失敗が「設計と現場・購買・品質部門のコミュニケーション不足」です。
製品仕様が決まった後で「この材料は納期が遅い」「この工法は外注先で生産不可」など現場の声が上がることが、未だに後を絶ちません。
理想的には、設計・購買・生産・品質それぞれのキーマンを初期段階からDR(デザインレビュー)に参加させます。
各部門の課題を仕様決定前にテーブルにのせ、全体最適の設計仕様へ導きます。
2.3D/CAE/シミュレーションによる設計検証の強化
設計意図と現場現実のギャップを縮めるためには、設計段階での客観的な検証が欠かせません。
3D CADやCAE(コンピュータ支援エンジニアリング)、流体解析、応力集中シミュレーションなど、現代のITツールは大きな武器です。
試作段階でトラブル対策をするのではなく、「設計段階でシミュレートする文化」に変えることで、不良の未然防止率が大幅に向上します。
また、解析データはバイヤーやサプライヤーとの価格・納期交渉時にも説得材料となります。
3.試作・評価は「失敗前提」でスモールスタートを徹底
設計意図どおり一発で良品試作ができるケースは稀です。
試作段階では「計画的な失敗」「迅速なフィードバック」を回転させる姿勢が重要です。
そのためには、
– 小ロット試作や複数サプライヤーでの並行試作
– 早期段階での主要特性(寸法・耐久・作業性など)のピンポイントチェック
– 試作工程でのDRや現物確認会議の実施
といった施策で、前工程(設計)の課題を後工程(生産・品質)に持ち越さないフローを徹底します。
4.量産移行時の設計評価・標準化ステップ
試作後も「設計品質審査」「生産評価」「購買リスク評価」などクロスファンクショナルな最終チェックを継続します。
ここでの合格基準やチェックリストを標準化しておくと、経験や勘に頼ることなく後継人材へのスキル継承も容易になります。
具体例を挙げるなら、
– 主要仕入先での外部監査
– 量産時の初品確認・工程FMEA
– 変更管理(ECR/ECO)の徹底
などを、「初物リスク」排除と「持続的改善」の観点で定着させましょう。
アナログ体質からの脱却:設計×現場×バイヤーがひとつになれる設計品質の新常識
昭和的な「属人的・暗黙的設計品質」から、ロジックと共創の「VUCA時代の新しい設計品質」へ一歩踏み出す時です。
– バイヤーの方はサプライヤー提案を設計理論で評価できる視座を高め、
– サプライヤーの方はバイヤーが何を重視して設計仕様を見ているのか論理的に読み取る力を養い、
– これからの設計者は、現場・購買・品質すべてを視野に入れた設計品質を追求しましょう。
設計品質の強化は、一朝一夕には完成しません。
しかし、設計と現場、購入と供給、伝統と革新──それぞれの境界線を取り払い、論理的に、誠実に、現実と向き合い続けることが、これからの製造業の最大の武器となります。
まとめ:設計品質の深化で日本のものづくりは再び輝く
製造業に携わるすべての方へ。
設計品質を「現場目線」「調達・購買目線」「サプライヤー目線」で論理的に強化することが、日本のものづくりの底力を再び引き上げる源泉となります。
この先も、絶え間なく現場で学び、設計理論と実体験を融合し、失敗や苦労もチームで分かち合いましょう。
現場で汗を流したあなたにこそできる、設計品質のイノベーション。
その第一歩を、今日からはじめてみてください。
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