投稿日:2025年9月1日

自動化装置の制御・通信設計委託先募集

はじめに:ものづくり現場を変える「自動化装置の制御・通信設計」

製造業における省人化、効率化の流れは止まることを知りません。

人口減少や熟練工の退職、働き方改革…さまざまな課題を乗り越え、今なお「現場」を支えているのが自動化装置です。

そして、その心臓部とも言えるのが「制御・通信設計」の分野です。

私自身、製造業の現場で20年以上にわたり調達購買や生産管理、工場の自動化に関わってきました。

そこで培った経験から言えるのは、「制御・通信設計に強いパートナーこそが、工場改革のカギそのもの」だということです。

今回は、自動化装置の制御・通信設計をアウトソーシング(委託先募集)するにあたり、現場目線の実務ポイントや、業界の最近の動向、バイヤー・サプライヤー双方のメリットについて解説します。

サプライヤーとしてバイヤーの「本音」をつかみたい方にも役立つ内容です。

自動化装置の制御・通信設計委託がなぜ求められているのか

人材難と世代交代、DXの加速が背景に

日本の製造業は今まさに「変革期」にあります。

IoT(モノのインターネット)、AI活用、デジタルツインなどDX(デジタルトランスフォーメーション)が業界全体に求められ、単なるPLC制御から「ネットワーク統合」「遠隔監視」など、高度化するニーズへとシフトしています。

その一方、現場の知見を持つ技術者は高齢化し、若手人材の確保も困難です。

限られたリソースをコア事業に集中させるためにも、設計業務のアウトソーシングは極めて現実的な選択肢となっているのです。

なぜ今、「外部委託」なのか

1. 社内に必要な技術や経験が足りない
2. 内製化では人員・納期・コストの限界がある
3. 最新のネットワーク・IoT/ⅡoT技術にキャッチアップできていない
4. 設計品質と生産性の劇的な両立が求められる

このようなケースでは、むしろ制御・通信設計のプロフェッショナル集団にアウトソースした方が、競争力の向上に直結します。

委託先に求めるスキルと対応力

単純な技術知識だけでなく、「現場感覚」が重要

バイヤーの立場で制御・通信設計の外部パートナーを選定する際、システムとして動くものをちゃんと設計できるか。

さらに、現場で本当に役立つか。

この2点が最も重要です。

例えば、制御盤のレイアウト設計だけでなく、配線接続後の動作チェックやトラブル対応力、製造ライン全体とのインターフェース設計力が問われます。

特に昭和の時代から残るアナログ装置との接続や、既存ライン改造時には独特のノウハウが財産となります。

強い委託先の特徴

– シーケンサ(PLC)は三菱、オムロン、キーエンス、シーメンス、ロックウェル…など実機経験が豊富
– ロボット・センサ・カメラ・AGV・搬送機器など多種多様な機器を実装可能
– 通信プロトコルに強い(Ethernet/IP、PROFINET、CC-Link、Modbus、OPC UA等)
– ネットワーク設計・上位システム連携(MES/SCADA連携)の実績がある
– トラブル発生時の現地対応力、リモート保守の仕組みまで提案できる
– 顧客の秘密保持、製造事情を深く考慮した設計ができる(工場稼働中の導入や改造等)

これは見積書や会社案内だけでは見抜けない部分です。

実際の引渡し後も「小さな困りごと」に気づき、現場に寄り添う姿勢こそが、強い委託先の証です。

昭和からの脱却:アナログ現場とデジタル委託の落とし穴

日本特有の「段取り八分・現場主義」と設計外注のギャップ

長年現場に根差してきた日本の製造業は、昭和から続く“職人芸”や“勘どころ”が今も生きています。

制御盤の電線1本、センサの配置ひとつが生産性や不良発生率に大きく影響し、予想外の現象も現場で日々起きます。

この「現場感覚」を外部の設計者にどこまで伝えられるか。

ここが“外注設計”最大の落とし穴です。

現場の声と設計書だけでは絶対に足りない

例えば、
– サイクルタイムを短縮したいが、不良排出が多発
– 増設ラインとの通信が不安定
– 繁忙期の生産スケジュールが変更しやすい設計がほしい
こうした課題は、単なる仕様書には書ききれません。

委託先に現場視察を依頼したり、実運用まで伴走してもらう文化が必要です。

アナログ現場とデジタル設計の間の溝を、丁寧なコミュニケーションで埋めること――それが、委託成功のカギです。

制御・通信設計委託のメリットと、よくある誤解

主なメリット

– 自社リソースを開発や生産革新に集中できる
– IoTやネットワーク連携など新しい技術を柔軟に導入できる
– トラブル発生時にも他社での類似対応ノウハウが活きる
– 仕様変更・追加要望への対応力を強化できる
– 工場全体の最適化(コスト・品質・スピード)を実現しやすい

よくある誤解・リスク

– ノウハウが外部へ流出するのでは?→NDAや設計資産管理でリスクヘッジ可能
– 社内で運用できなくなるのでは?→引渡し後の操作教育や、ドキュメント徹底でカバー
– 運用後のトラブル時対応が遅れるのでは?→リモート保守、リピート案件の場合の優先対応契約などで解決

アウトソーシング(外部委託)は単なる“コストダウン手段”ではありません。

むしろ「自社技術のアップデート」「現場力の底上げ」として積極的に活用すべきです。

プロの視点で「委託先選び」成功のポイント

1. 仕様打合せを“徹底”すること

FAXや数枚の仕様書だけで外部設計に丸投げするのは絶対にNGです。

現場立ち合い&細部ヒアリングを欠かさずに、仕様に記載しきれない“勘どころ”まで丁寧に情報共有しましょう。

また、プロトタイプ評価やシミュレーションを早い段階から実施し、現場からのフィードバックを設計へ反映するサイクルが肝心です。

2. 継続的なコミュニケーションとフォロー体制を確認

トラブル発生時に即応できる体制、改造や障害対応に柔軟であること。

メール・電話のみならず、Web会議や現地立会等を通じて「顔の見えるパートナー」であることが安心につながります。

3. アフターサービス・ドキュメント力を見る

トラブルシューティングマニュアルの充実度、社員向けの教育プログラムの提案力。

“設計納品物”に加え、“サポートサービス”までをパッケージで評価しましょう。

バイヤー・サプライヤーそれぞれの立場からみた「求められる行動」

バイヤー(委託側)の目線

– 現場が困っている「生々しい課題」を惜しみなく伝える
– 継続的なパートナーシップを前提に、意図や目的を共有する
– 発注仕様をオープンにし、委託先に意見をもらう

サプライヤー(受託側)の目線

– 最新技術・標準化動向だけでなく、「現場運用」の悩みも先取りする
– 曖昧な仕様や暗黙知を吸い上げる“ヒアリング力”を重視する
– 運用開始後も含めた「責任感のある対応」をアピールする

まとめ:自動化装置の進化は「現場×外部パートナー」が鍵

現場の生産性向上や品質改善において、自動化装置は重要な武器です。

しかしそれを最大限活用するためには、制御・通信設計のエキスパートとの共創が欠かせません。

昭和の勘どころを引き継ぎつつ、令和のデジタル化へ踏み出すための“現場とパートナーの対話”こそ、工場イノベーションの第一歩です。

いま委託先を探している方も、サプライヤーとして挑戦したい方も、本記事をヒントに新たな一歩を踏み出してください。

製造業の未来は、現場と外部の知恵が融合することでさらに開けていくはずです。

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