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ロット逆引きは受注番号と日付の二キーだけで運用開始

目次
はじめに:ロット追跡の重要性を再認識しよう
製造業の現場で「ロット管理」と聞くと、どうしても面倒で複雑なイメージが先行しがちです。
特に昭和時代から続くアナログな工程では、膨大な紙とエクセルファイルが積み上がり、いざトレーサビリティが必要なときに「探し物」が始まります。
しかし、現代の厳しい市場環境・品質要求を考えると、「どの製品が、いつ、どこで、誰の指示で作られたのか」を正確に追跡することは避けて通れません。
本記事では、「ロット逆引き」を、「受注番号」と「日付」というたった二つのキー(指標)だけで運用を開始する独自ノウハウを徹底解説します。
複雑なシステムを入れる前に、多くの町工場や中小製造業でも今日から真似できる“現場発想”でトレーサビリティを強化できる方法にフォーカスします。
バイヤー志望の方や、サプライヤーが顧客視点を理解するヒントとしても必読の内容です。
ロット逆引きとは何か?現場用語で徹底解説
まず「ロット逆引き」という専門用語ですが、これは製品や不具合発生品から「さかのぼって」その生産履歴や使われた部品情報、作業者、工程データなどをすばやく特定する行為です。
たとえば、顧客から「納入品の不具合」が連絡されたとき、
– いつ作られたか
– どのロットの材料を使ったか
– 誰がどんな順番で作業したか
この情報をしっかり特定しないと、原因追及が永遠に終わらず、再発防止策にもつながりません。
そのため、現場の従業員は、製品に付いている「ロット番号」や「ラベルNO」、時には「シリアル番号」などを頼りに帳票をめくり、「生産日→受注NO→作業帳票→部材の記録」という流れで情報を探し出しているのが現実です。
ところがこれが手間も時間もかかるし、転記ミスや抜け漏れがあると途中でデータが辿れなくなる“昭和型”運用の弱点になります。
業界の「ロット管理」の現状:なぜ混乱が多いのか?
多くの製造業工場で、今も“ロットは紙で管理”が主流です。
エクセルでロット台帳を作って管理する現場もありますが、
– 作業が繁忙期になると「後でまとめて記入」となり最新情報からズレる
– 担当者が変わるとファイルの記入ルールが違い、検索しにくい
– ラベルや伝票に書くロットNOの表記が現場によってばらばら
といった混乱が起きています。
これらの問題は、自働化やITシステム以前の「現場運用上の不統一」が根本原因なのです。
そのため、大手企業でも「最近まで紙台帳だけで、逆引きできずお客様からの問い合わせに3日もかかった」「担当者しか分からない『暗号』のような記録になってしまっている」という“失敗談”がよく聞かれます。
なぜ「受注番号」と「日付」なのか?2つのキーの圧倒的メリット
そこで提案したいのが、「受注番号」と「日付」だけを一元的に運用するという新発想です。
この二つのキーは、
1. どんな工場でも必ず記録している
2. 現場での伝達や作業票に必ず書かれている
3. 関連部署(営業・生産管理・品質管理など)も共通で認識できる
という、非常に応用範囲が広い情報です。
たとえば「受注番号」は、お客様と営業部門・出荷部門・生産現場が“同じ単位”で管理するための分かりやすい共通言語です。
「日付」も、帳票や伝票、ラベルなどあらゆるフォーマットで付与されているため、手がかりとして鉄板の指標になります。
この2つを軸にして、逆引きで「ロット履歴」がたどれる運用体制を組むことで、
– 担当者の異動や休職時も、情報が分かりやすい
– 古い台帳やファイルでも、最短で見つかる
– データベース化する場合もシステム開発の手間が減る
といった明確な効果が出ます。
具体的な運用手順:今日から始められる実践ノウハウ
これまでの製造現場の運用を壊さず、“地味だけど強い”運用改善を紹介します。
1. ロット台帳に「受注番号」と「日付」欄を追加
まず最初に、紙のロット台帳やエクセル管理表に“必ず”「受注番号」と「日付」欄を加えましょう。
昔からある「ロットNO」「ラベルNO」「製品名」だけの台帳を温存したまま、見やすい位置にこれら欄を設置しましょう(推奨は一番左列)。
新しい入力ルールは「いつもの記帳+受注NOの記入“だけ”追加」とし、現場の負担を最小化します。
2. 現場ラベルや伝票にシンプルなフォーマットを作る
日々の製造現場や倉庫作業で貼り付けるラベル・伝票にも「受注NO – 日付」のフォーマットを印字もしくは手書き記入させます。
この時、工程内で「複数回」作業がある場合は、特定しやすいように時刻を入れても構いません。
例:231005A-20240605(受注NO-年月日)
これにより、“どんな現場ラベルもおおよその履歴がたどれる”状態になります。
3. 関連帳票を「受注NO – 日付」でひも付ける意識付け
生産指示書や作業日報、仕掛品伝票にも同じく「受注NO – 日付」を入れましょう。
一つの製造プロセスが複数の工程にまたがっている場合でも、「受注NO – 日付」だけで経路がつながるため、
– 品質トラブル発生時
– 工程飛びや順番違いのチェック
にも対応できます。
4. 古い履歴・台帳のデジタル化は“受注NO – 日付”単位で効率的に
既存の膨大な紙台帳、エクセル管理のデジタル化は大きなテーマです。
が、何も「すべての過去データ」を一気に電子化する必要はありません。
問い合わせが多い「直近2年分」や「重要取引先」など、重要度の高い案件から「受注NO – 日付」の組み合わせで検索できるように整理しましょう。
そのための台帳フォーマットをまず新設し、“部分最適”の段階から運用を始めることで現場の混乱を防げます。
バイヤー・サプライヤーが知っておくべき「ロット逆引き」の真の意味
製造業バイヤー(購買・調達担当者)の方が知っておきたいのは、「ロット逆引きの精度=その会社の生産安定度・品質保証力」だという現実です。
大手の調達部門がサプライヤー評価を行う際、“トレーサビリティ機能”“不具合発生時の対応速度”を重視します。
なぜなら、
– 不具合即応力(Recall回避、納入遅延リスクの事前回避)
– 部品や原材料のリスク分散策(同一ロット内の展開防止)
など、調達側のリスクマネジメントに直結するからです。
つまり、きちんとした「ロット逆引き」体制は、営業部員や品質管理部門のみならず、バイヤーから“選ばれる条件”でもあり、価格競争力以外の実力評価にもつながります。
サプライヤーの方も、これを理解し「うちは受注NOと日付が分かれば、すぐ原因追及できます」とバイヤーに説明できれば、信頼構築の重要な武器になります。
IT化・デジタル化のその先:「アナログ文化」からの一歩を現実的に
2020年代に入り、IoTやAIを活用したスマートファクトリーが叫ばれて久しくなりました。
しかし、町工場や古い体制の会社でよくあるのが、
「現場の紙・伝票が完全になくならない」
「パソコン端末が苦手なベテラン作業員が多い」
「高価なシステム投資は現実的でない」
という生々しい課題です。
そこで最初に“全部IT化”を目指すのではなく、
– 紙・エクセル運用を残しつつ
– 「受注NO」「日付」などキー項目だけを明確化
– “人中心”のプロセスに合わせてルール化
– 小規模/部分的な進化(例:重要顧客分だけクラウド管理)
この段階をひとつひとつ積み上げることが重要です。
こうした「時代にあった地に足のついた現場改善」が、多くのアナログ型中小製造業にこれから求められています。
まとめ:今日からできるロット逆引き強化、まずは二つのキーを徹底せよ
製造業の品質保証・生産安定度の根幹は、「どこまで遡って問題を特定・対策できるか」にかかっています。
複雑なERPや生産管理システムを導入する前に、
– 受注番号
– 日付
この二つのキーだけは、どんな現場、どんな帳票、どんなラベルにも“全て記載する”というルールを作りましょう。
見かけは地味ですが、逆引きできる体制があるかどうかは、工場だけでなく、その会社全体の実力・信頼性を裏打ちする力になります。
現場から新しい時代へ。
アナログな業界習慣に一石を投じながら、ラテラルシンキングでよりシンプル、かつ強い工場を目指しましょう。
製造業のバイヤー・サプライヤーを問わず“現場の当たり前から現場力強化が始まる”。
そんな現実的で意義ある改善策をご提案します。
明日から、あなたの現場でも「二つのキーによるロット逆引き」を始めてみてはいかがでしょうか。
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