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麻混Tシャツの乾燥で繊維収縮を防ぐための低湿度循環制御と時間プロファイル

目次
はじめに:麻混Tシャツの品質と「乾燥」の重要性
麻混Tシャツは、その通気性や清涼感、天然素材ならではの独特な質感で多くの人に好まれています。
しかし、麻は他の繊維と比べて水分を含みやすく、乾燥工程において繊維の収縮や風合いの劣化が発生しやすいという課題があります。
製造業の現場、とくに縫製・仕上げ工程では、「麻混Tシャツの乾燥制御」をどう設計し、効率よく安定した製品品質を実現するのか――これは製造側にもサプライヤーにも、さらにバイヤーや商品開発担当者にも深く突き刺さるテーマです。
本記事では、製造現場20年以上の目線で、麻混Tシャツの乾燥で繊維収縮を最小限に抑えるための「低湿度循環制御」と「時間プロファイル設計」について、現場で活かせる知見とともに解説します。
バイヤーが気にする「仕上がり品質」の裏側、サプライヤーが「なぜ乾燥制御が重要なのか」を知る手がかり、業界動向の分析も盛り込みます。
なぜ麻混Tシャツは収縮しやすいのか?素材特性の理解
麻(リネン)はセルロース繊維の一種です。
その特徴は吸湿性・発散性が高く、繊維が固くて伸度が低いため、水分による膨潤・収縮に敏感です。
一般に、織物やニットに加工した際「麻100%」は縮みが大きくなりやすく、この弱点を補うためにコットンやポリエステルなどと混紡した「麻混Tシャツ」が多く流通しています。
ですが、混紡しても麻特有の収縮傾向は消えず、乾燥が急激すぎると、生地の歪みやツッパリ感、シワ、細かな繊維切れなど品質不良の原因となります。
現場にありがちな「熱風で一気に乾かせば生産効率がいい」という昭和的アプローチは、麻混アイテムでは逆効果となることが多いのです。
では、どのような乾燥工程設計が適切なのでしょうか。
収縮を抑える“キモ”は「低湿度循環制御」
低湿度循環制御とは何か
乾燥工程で目指すべきは、麻繊維に残る水分率の漸減(徐々に少なくする)です。
低湿度循環制御とは、乾燥機内の温度と相対湿度を精密にコントロールし、一気に乾かさずゆっくり水分を放出させる制御手法です。
熱と風量を上げるだけでなく、乾燥室内の空気の“循環と排気”も管理します。
これにより繊維内外の水分移動がなめらかになり、表面収縮やドライアウト(過乾燥)を未然に防ぎます。
収縮しづらいプロファイルづくりのポイント
麻混Tシャツの場合、以下のプロファイル例が推奨されます。
1. 乾燥初期(高水分期):
温度:45~50℃前後
相対湿度:60~70%
目的:繊維を急変させず、蒸散開始をゆっくり誘導
2. 乾燥中期(水分率中):
温度:55~60℃
相対湿度:50~60%
目的:生地内部から安定的に表面へ水分を移動
3. 乾燥終期(ほぼ乾燥時):
温度:60~65℃
相対湿度:35~45%
目的:繊維内の残存水分を過度に飛ばさないよう仕上げ乾燥
工場の乾燥装置が湿度コントロール対応でない場合、乾燥機内に「ダンプフィードバック」(湿った空気の戻し)を設ける、あるいは槽内にサンプル生地含水計を設置し水分残量で制御するなど、昭和的設備でも一工夫できる点が多くあります。
時間プロファイル設計:収縮を防ぐ「時間のかけ方」
なぜ“ゆっくり乾燥”が大事なのか
麻繊維は、分子レベルでみると水分で膨潤・収縮を繰り返しやすい構造をしています。
しかし、短時間で外部から熱エネルギーを与えすぎると、表層のみ急激に乾いてしまい、「外硬内生」(表面固く中しっとり)現象が発生します。
これにより、生地表層の収縮や歪みが不可逆的となり、元にもどりにくくなります。
そこで、「何分間、どの温湿度で段階的に乾燥させるか=時間プロファイル」が重要視されます。
過去の現場知見でも、「麻混Tシャツは同じ50枚でも、速乾2時間工程よりも4~5時間かけた工程のほうが、風合い・サイズ安定性が明確に良い」という差が出ています。
時間プロファイル例と現場改善
例えば、衣料用の中規模トンネル乾燥機を用いる工場での一例です。
・初期40分間は送風温度50℃、湿度65%で「肌目残し乾燥」。
・次の60分間は55℃・湿度55%へ。
・仕上げ30分間のみ60℃・湿度40%とし、生地水分を4~6%で収束。
・全部で2.5~3.5時間かけて、製品全体が満遍なく同じ乾燥度になるようライン設計。
ただし、工場ごとの生産能力や機械性能、1ロットの量、現場のスペース確保など実装ハードルは異なります。
従来型(昭和設計)の乾燥機でも乾燥段を分ける、先入れ先出しの順番管理を徹底する、ラックの積み方を工夫するなど、品質と効率を両立できる現場のアイディアが求められます。
製造現場の視点と「バイヤー」「サプライヤー」の関係性
バイヤー目線:なぜ乾燥工程が大事なのか
良品の麻混Tシャツは、寸法安定性、風合い、光沢、裁断後の取り扱い性までが重要です。
バイヤーは「縮みやすい麻だから仕方ない」ではなく、「なぜこのブランド商品は縮みにくいのか」「他社製品と比べてなぜ差がつくのか」の“現場裏事情”を知っておく必要があります。
乾燥プロセスの設計こそが、高級ブランドラインとの差別化ポイントになりうるため、OEM・ODMメーカーの現場力を見る指標となります。
サプライヤー目線:昭和から続く“慣習”と新しい動き
「とりあえず乾燥工程は任せっぱなし」「温度と時間だけ指定」して依頼しあとは現場任せ――こうした昭和時代からのアプローチはまだ残っています。
ですが、最近は大量品薄利多売から中ロット高付加価値商材へのトレンド転換もあり、「どう乾燥したか」のトレーサビリティや現場データ提出の要求が強まっています。
サプライヤーが、スペックや納期一辺倒ではなく「乾燥パターン表」や「実施プロファイル」をエビデンスとして出し、提案力を高めることでより強い関係構築ができます。
現場ラテラルシンキング:乾燥工程を業界価値へ昇華する視点
乾燥工程の改善は、「機械を入れ替える」「時間を伸ばす」だけではありません。
現場には、ノウハウ化されてこなかった職人技やちょっとした工程管理の工夫が埋もれています。
例えば、機械設備が最新でなくても、湿球温度計や含水率測定器を併用し、場当たり的な判断ではなく根拠ある工程管理を“見える化”するなど、アナログな現場特有のDX(デジタルトランスフォーメーション)が成果を生んでいます。
また、現場スタッフへの教育を重ね、「なぜここで温度と湿度を変えるのか」「工程ごとの繊維挙動」を理解させることで、バイヤーが安心して取引できる“信頼の工場”へと進化できます。
まとめ:麻混Tシャツの乾燥で収縮を防ぐ実践的アプローチ
麻混Tシャツの製造において、乾燥工程は「品質を決める最後の砦」です。
低湿度循環制御や時間プロファイル設計を現場に根付かせ、単なる“作業の慣習”から“根拠とデータに基づいた品質保証”へとアップグレードすることで、工場の競争力は確実に高まります。
バイヤーは「なぜこの工場の麻製品は違うのか」を知ることができ、サプライヤーは自社の現場力を差別化要素としてPRできます。
そして現場は、目の前の1枚1枚を丁寧に積み重ねる「ものづくりの力」を、時代に合わせてアップデートしていくことが重要なのです。
アナログ業界にあっても、一歩先を行く「乾燥工程改革」は必ず現場にもたらす価値があり、業界全体の底上げにつながります。
本記事が、製造業の現場、バイヤー、サプライヤーすべての方に新たな気づきを届けられたら幸いです。
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