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適切な劣化対策に活かすための機械設備の状態監視技術とその最新事例

目次
はじめに:製造業の現場における状態監視技術の重要性
製造業では、日々多種多様な機械設備が稼働しています。
これらの機械設備は、工場の生産活動の中核を担い、品質・納期・コスト競争力を左右します。
一方で、機械の稼働時間が長くなればなるほど設備の劣化や故障リスクは着実に高まります。
設備の停止は、そっくりそのままラインの停止、納期遅延、コスト増につながる深刻な経営課題となります。
このような背景から、設備保全・予防保全の充実は昭和時代から絶え間なく議論されてきました。
しかし、未だに「故障してから修理する」という事後保全に頼る現場も少なくありません。
いわゆる「昭和の勘と経験、根性頼み」は、多くの工場現場で色濃く残っています。
そんな現場に新たな革新をもたらすのが、「状態監視技術」です。
設備の状態をリアルタイムで把握し、異常の予兆を早期にキャッチ。
最適なタイミングで保全を行い、想定外のダウンタイムと無駄なコストの両方を減らす。
この記事では、現場で本当に使える状態監視技術の本質と最新動向、さらにサプライヤー・バイヤー目線のメリット・課題についても実践的に解説します。
機械設備の劣化プロセスと現場が抱える課題
設備はどのようにして劣化するのか
機械設備の劣化は、摩耗・腐食・疲労・腐敗など多様なメカニズムによって徐々に進行します。
特に以下のような劣化要因が多くみられます。
・駆動系の摩耗(ベアリングやギアの損傷)
・熱ストレスや振動による部品の疲労
・潤滑油の劣化による焼付き
・配線やセンサー類の経年劣化
・粉塵や湿度など外部環境による腐食
これらの劣化の「前兆」は、ごく微細な温度上昇や振動パターンの変化、異音、電流値の異常値などとして現れます。
この“わずかなサイン”を人間の五感や経験だけで察知するには、限界があります。
アナログ現場の課題「異常把握の属人化」
多くの日本の製造現場では、ベテラン作業者の巡回点検やオペレーターの作業感覚に大きく依存してきました。
このため、退職や配置転換で「現場の勘」が継承されず、異常の早期発見や的確な保全タイミングの判断が難しくなる傾向があります。
「壊れてからでないと修理しない」「予防的に全部交換する」など非効率な運用も見られます。
ここに、状態監視技術が果たす役割は非常に大きいといえます。
状態監視技術の基礎と進化の歴史
状態監視技術とは何か
状態監視技術とは、設備や部品の温度・振動・電流・音・画像など様々なデータをリアルタイムで収集。
その変化や異常傾向をデジタル的に解析する技術です。
1台1台の機械設備の“健康状態”を定量的かつ客観的に管理できます。
状態監視の主な手法には以下のようなものがあります。
– 振動センサーによるベアリング異常検知
– サーモグラフィによる熱異常モニタリング
– 電流・電圧値の常時計測
– 音響診断や画像解析
昭和から令和へ、IT・AI活用による進化
かつては振動計やサーモカメラでの“その都度測定”に留まっていました。
しかし、現在ではIoTセンサーの常設配置や、無線によるデータ収集、AI・機械学習による解析が普及し始めています。
目視や目検では発見し得ない微細な変化も、高性能なセンサーネットワークとクラウド解析によって早期に把握できるようになりました。
状態監視技術の最新事例 〜現場の使い方と成果〜
ここで実際に、日本の製造業・工場現場で導入が進む最新の状態監視事例を紹介します。
【事例1】ベアリングの振動解析による予知保全
精密工作機械メーカーでは、主要部品であるスピンドルのベアリングに高感度振動センサーを常時設置。
異常がなくても常にデータロガーが記録を行い、“異音が出る前”の微小な振動変化をAIが解析しています。
その結果、ベアリンググリースの劣化、ミクロな損傷の兆候が即座に検知できるようになりました。
これにより、手遅れになる前の計画停止で保全作業を実施。
突発故障による生産ライン全体の停止が激減し、年間数千万円のコスト効果が出ています。
【事例2】大型プレス工場のサーモグラフィ監視
自動車部品の大型プレス工場では、金型やモーターの各部にネットワーク対応のサーモグラフィカメラを設置。
日々の温度分布データを時系列で管理し「特定部位の温度が急騰する予兆」を数値で可視化。
現場担当者は、管理画面で異常エリアが色で分かるため、即座に必要な箇所の点検・メンテナンスが可能になりました。
「突然の停止ゼロ」「ムダな一斉交換ゼロ」を実現しています。
【事例3】コンプレッサーの遠隔監視によるスマートメンテナンス
エアコンプレッサーのメーカーでは、新規納入のコンプレッサー全台にIoT通信機器を内蔵。
納入後も、メーカーがクラウド経由で稼働・状態データをモニタリングします。
振動・異音・電流値の異常を検知すると、メーカー保守員に自動アラートを発報。
お客様への迅速なメンテナンス訪問や部品先出し対応で、「故障してからの修理待ち」を激減させています。
バイヤー・サプライヤー双方が恩恵を得る最新モデルといえるでしょう。
状態監視技術を導入するメリットと、導入時の課題・注意点
【導入のメリット】
・突発故障の減少、停止ロスの大幅削減
・熟練者に依存しない設備保全体制の構築
・最適な予防保全でムダな部品交換や作業コスト低減
・品質トレーサビリティの強化(重大事故やクレームの未然防止)
また、サプライヤー企業側にとっても、アフターサービスや遠隔サポートの質・スピード向上という強みになります。
状態監視データの活用は、単なる点検作業の効率化ではなく、“新たな価値創造”の源泉となっています。
【導入時の課題・注意点】
・センサーやデータインフラ導入コストの初期負担
・現場オペレーターのITリテラシー、運用スキル不足
・データの見方・解析力がブラックボックス化しやすい
・サイバーセキュリティやデータ保護への配慮
現場で最大効果を出すためには、単なる「仕組み導入」だけでなく、現場ごとの運用設計や人材育成が不可欠です。
ベンダー任せにせず、自社の課題・あるべき保全体制から逆算したうえで最適な技術・サービス選定が重要になります。
バイヤー・サプライヤー双方にとっての「状態監視」の真価
バイヤー側である製造拠点の購買担当者や工場長は、単なる価格交渉だけでなく、「状態監視」による提案力や保全サポートもサプライヤー選定の重要な要素として捉え始めています。
特に、調達購買の現場では「買った後の保守は誰がやるのか」「ダウンタイム時の対応スピードは?」といった点が大きな差別化要因となります。
状態監視技術とアフターサービスの組み合わせこそ、真の付加価値型パートナーシップを実現します。
サプライヤーにとっては、設備・機器単体の納品から「データを活用した予知保全・価値提供型」への転換が求められる時代です。
現場の情報を遠隔から把握し、クレーム発生前に手を打つ。
この新しい枠組みに、顧客との中長期の信頼関係が生まれています。
まとめ:現場の知恵×テクノロジーで未来の工場運営へ
昭和時代の「あたりまえ」だった勘と経験、そして“故障したら直す”から、“状態監視データで予兆を察知し自律的に保全する”時代へ。
このシフトチェンジは、単なるIT化・DX化以上の製造現場の未来像です。
バイヤーを目指す方や、サプライヤーの立ち位置にいる方にも、状態監視技術の仕組みと実効性を深く理解することは、今後のキャリア・ビジネスチャンス獲得の大きな武器となります。
現場目線の知恵とテクノロジーを掛け合わせ、“止まらない工場”“無駄のないオペレーション”を実現するため、まずは自社の現場・設備から一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
製造業に携わる皆さまが、より安全で持続可能なものづくり現場を創り上げていけることを願っています。
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