投稿日:2025年12月31日

抄紙機のワイヤーパートで使われる主要部材とその役割

はじめに

製紙業界において、抄紙機は紙の製造工程の中心的な存在です。
抄紙機の中でもとりわけ「ワイヤーパート」は、紙の原材料であるパルプが薄い紙状へと形成される非常に重要な段階です。
この記事では、現場経験者だからこそわかる実践的な視点を交えながら、ワイヤーパートで使われる主要な部材とその役割、さらに昭和から続く現場の慣習や最新動向にも触れて深堀りします。
サプライヤーやバイヤーを目指す方、現場で働く方々にも役立つ内容となるよう、多角的に解説します。

ワイヤーパートとは何か?

抄紙機は大きく分けて「ワイヤーパート」「プレスパート」「ドライヤーパート」に区分されますが、ワイヤーパートは紙がまだ水分を多く含んだ“ウェット”な状態で、パルプから薄い紙(ウェブ)を形成するパートです。
ここでの条件設定や部材選定が、その後の工程や最終製品の品質に大きな影響を及ぼします。

伝統的な工場と最新トレンド――現場の変化

抄紙機のワイヤーパートは、意外にも現場の「職人技」や「長年の勘」が活きている分野です。
デジタル化・自動化が進行する中でも、人間の経験知が今なお強く求められています。
一方で近年はIoTを活用したモニタリング、合成繊維を用いた高性能メッシュなど新素材の導入が進み、アナログとデジタルの融合が見られる現場です。

ワイヤーパートの主要部材とその役割

ワイヤーパートでは、主に以下のような部材が使われています。
「紙」という身近な製品の裏側で、これほど多様な技術が支えていることはあまり知られていません。
以下で、各部材の役割やポイントについて詳しく見ていきましょう。

1.フォーミングワイヤー(抄紙ワイヤー、メッシュ)

もっとも中心的な部材が「フォーミングワイヤー」です。
これはパルプを受け止めて均一なシートとして成形するベルト状の素材で、合成繊維(主にポリエステルやナイロン)が使われます。
以前は金属製もありましたが、現在は軽量で耐久性に優れ、清掃も容易な合成繊維製が主流です。

ワイヤーの目の細かさや織り方が抄紙品質に直結します。
例えば、目が細ければ細かな繊維やフィラーを逃しにくいですが、脱水が遅くなります。
逆に目が粗いと水分は抜けやすくなりますが、紙に「ピンホール」や「穴抜け」などの欠点が発生しやすいです。
サプライヤーは用途や紙種(新聞紙、印刷紙、特殊紙など)に合わせた最適なスペック提案が問われます。

2.ダブルワイヤー、ツインワイヤーシステム部材

より高品質・高速度の抄紙を行うために、一部の抄紙機ではダブルワイヤーやツインワイヤーと呼ばれるシステムが導入されています。
上部と下部で2枚のワイヤーがパルプウェブを挟み込み、より均一な紙厚と迅速な脱水が可能となります。
この構成では、ワイヤーのテンション調整やガイドロールの精度が一層重要となり、設備投資やメンテナンスノウハウが問われます。

3.サクションボックス、サクションロール

ワイヤーパートの下に位置しているのが「サクションボックス」です。
これは真空を利用してワイヤーを通過するパルプから水分を吸引・除去するための設備です。
ワイヤー上面からはパルプの中の水が下向きに引かれ、急速に脱水が進みます。

サクションボックスは内部で材質やスリット(穴)の形状が異なっており、抄紙する紙の種類や目標品質によって最適なものを選定する必要があります。
耐摩耗性や静電気対策も求められ、セラミックや特殊樹脂で作られることが主流です。
現場の消耗品管理や定期交換タイミングのノウハウが、ライン運営の安定性を左右します。

4.ガイドロール(ワイヤーロール)

ワイヤーを支えたり進行方向を制御したりするための回転ロール群です。
テンションロール、ドライブロール、ガイドロールなど複数種類があり、それぞれ機能が違います。

特に重要なのがテンションロール。
ワイヤーのたるみを適度に調整し、均一なテンションを保ち続ける仕組みは、ライン全体の安定動作や紙厚均一化に不可欠です。
あらゆるロールの精度は、たとえば1/100mm単位の精度が求められることもあり、昭和時代から受け継がれる現場技能が重要です。

5.デッキル、フォーミングボード、タンブラ、シュート

これらはワイヤーの上に設置され、パルプウェブの水流や繊維配向、脱水速度を調整するために使われます。
例えば「デッキル」は微妙な角度や位置調整によってファイバー配向へ影響を与え、紙の機械方向(MD)、横方向(CD)の強度バランスに反映されます。
調整は一見地味ですが品質に大きな違いをもたらし、ベテラン職人の”手感覚”やノウハウが今も現役で活きています。

6.スプレーノズル、クリーナ

ワイヤー表面には繊維のカス(スライム)、フィラー、化学薬品などが付着しやすいため、ワイヤー洗浄用のスプレーノズルやワイヤークリーナが設置されています。
ここが機能しないと、トラブルや品質不良が発生しやすくなります。
自動化洗浄と現場巡回での目視点検のハイブリッド管理は、今も多くの工場で現役です。

ワイヤーパートの部材選定とバイヤー視点

バイヤー、購買担当者の現場業務は「コストの最適化」だけではありません。
むしろ、安定生産や品質保証への責任・現場からの信頼確保といった側面が、購買業務の重要なミッションです。
製紙工場の現場担当者と密接に連携しながら、最適なワイヤーや周辺部材選定、サポート体制構築に尽力することが求められます。

昭和的商習慣とこれからの購買

昭和時代からの伝統的な調達慣行として、サプライヤーとの「長期的な付き合い」「馴れ合い」「現場要望>本社判断」といった文化が根強く残っています。
一方でグローバル化やコスト競争が進む中、バイヤーや調達部門には、多様なサプライヤーの中からベストな選定をする冷静な目線、サプライヤーの技術進歩や新素材・新工法への知見拡大も要求されます。

サプライヤーの立場から見れば、単に価格競争力をアピールするのみならず、紙種や工場特性に即した技術サポート、トラブル対応力、消耗品管理提案などに幅広く貢献できることが、競争力の源泉となるでしょう。

ワイヤーパートが抱える品質課題と最新動向

異物混入・ピンホール発生対策

抄紙ワイヤーにゴミや異物が付着すると、紙面に「折れ筋」や「ピンホール」など重大な欠点が発生します。
ナイロン繊維の進化や自動監視装置、微細クリーナーの導入で異物除去は以前より向上しましたが、やはり目視や現場の定期巡回、”音や匂いの違い”といったアナログセンサー技術も不可欠です。

高効率化・省エネへの期待

抄紙機全体の高速化、省エネルギー化が進むなか、ワイヤーパート部材にも低摩擦、耐薬品性、長寿命、高速対応といった性能アップが求められます。
IoTセンサーでワイヤーテンションや摩耗状態を常時モニタリングし、AIが自動調整・補修提案を行うスマートファクトリー化も一部実現しはじめています。

現場目線のまとめ――部材選定がもたらす現場の安定と飛躍

抄紙機のワイヤーパートは、紙づくりにおける「縁の下の力持ち」です。
フォーミングワイヤーを中心とした各部材の最適化には、現場での日々の保守・点検・トラブル対応が欠かせません。
バイヤーやサプライヤー、現場管理者が密接に連動し合い、世代を超えた現場知と最新技術のハイブリッド化こそが、これからの製紙工場の安定稼働と競争力アップに直結します。

紙の未来は、時代が変わっても現場で生き続ける職人技と、絶え間ないイノベーションへの挑戦――その両輪で支えられています。
現場目線でワイヤーパートの要諦を見つめ直し、より良い紙づくり・製造業の進化につなげていきましょう。

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