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衣料品製造で使われる主要なミシンの種類と縫いの仕上がりの違い

目次
衣料品製造現場におけるミシンの重要性
衣料品の製造現場は、多様な工程と機械に支えられています。
その中でもミシンは、縫製工程における主役です。
ミシンの選定や使いこなしは、製品の品質、コスト、作業効率に直結します。
現代の衣料品市場は、低コスト大量生産のファストファッションから、少ロット高品質のオーダーメイド品まで、実に幅広いニーズがあります。
多様化する市場に応えるためにも、適切なミシンの選択と技術理解は欠かせません。
本記事では、衣料品製造で主に使われるミシンの種類ごとに特徴と仕上がりの違いを、現場目線で詳しく解説します。
また、アナログ文化が根強い日本の縫製工場事情にも触れつつ、今後必要とされるミシン選びの視点をお伝えします。
主要なミシンの種類と各機種の特徴
1. 本縫いミシン(直線縫いミシン)
衣料品製造で最もベーシックかつ汎用的なミシンが「本縫いミシン」です。
1本針あるいは2本針仕様が一般的で、ストレートな直線縫いが特徴です。
本縫いミシンの魅力は、「縫い目がシンプルで美しい」「あらゆる生地に対応可能」「耐久性が高い」ことです。
シャツやスラックスの主要縫製、袖口やウエストなど様々な場所に用いられています。
仕上がりは最もオーソドックスで、表面に縫い糸が並ぶ整然とした印象になります。
一方、伸縮性のある生地や、強度が求められる箇所には不向きです。
そのため、特殊な機能には特化したミシンと使い分ける必要があります。
2. オーバーロックミシン(ロックミシン)
オーバーロックミシンは、生地の端をかがりながら切断し、ほつれ止めと縫い合わせを同時に行うのが特徴です。
カットソーやニット製品、Tシャツ、スポーツウェアなど、伸縮性のあるアイテムで多用されます。
縫い目の特徴は、端がきっちりと包まれており、ほつれにくい点です。
また、複数本の糸(通常3~5本)を使用することで、柔軟性のある仕上がりとなります。
一方で、本縫いほど直線的な精密さは期待できません。
ロックミシンには、2本針4本糸タイプや3本糸タイプなどがあり、用途や生地に合わせて使い分けられています。
3. インターロックミシン(フラットシーマ)
インターロックミシンは、表裏両方の縫い目に糸が現れ、フラットな仕上げができる専用ミシンです。
「フラットシーマ」とも呼ばれ、主に下着やアンダーウェア、スポーツ衣料、ベビー服など、肌に直接触れる製品に使われます。
特徴は縫い合わせ部分が非常に平坦で、肌へのストレスが少ないことです。
また、伸縮性にも優れているため、着心地を重視する高級衣料品にも多用されています。
仕上がりは独特で、縫い代がかさ張らず衣類のラインがすっきりとしています。
しかし導入コストが高く、縫製技術の習得にも経験を要します。
4. チェーンステッチミシン
チェーンステッチミシンは、下糸が鎖状につながるステッチを生み出します。
ジーンズの裾縫い、シャツの側面、ベルトループの縫い付けなど、強度や伸縮性が必要な箇所に適しています。
このミシンで縫製された部分は、やや「ボコボコ」とした立体感ある縫い目が特徴です。
デニムパンツの裾上げでよく見られる「アタリ」や色落ちの味わいも、チェーンステッチならではの魅力です。
ただし、縫い目がほどけた際は一気にほぐれるリスクがあるため、使いどころに注意が必要です。
5. ボタン付けミシン/穴かがりミシン
ボタン付けミシン・穴かがりミシンは専門性が高く、シャツやジャケットのボタン・ボタンホール加工に特化しています。
人手で行うと時間も精度もばらつきが出やすい工程ですが、専用ミシンでは高速かつ均一な仕上がりとなります。
特にメンズシャツの量産では、1分以内に10個以上のボタン付けが可能な機種も増えてきました。
ボタン穴の美しさや強度も、品質クレームに直結します。
したがって、導入は製造現場の生産性・品質管理の両面で大きなインパクトを持っています。
6. 特殊ミシン(装飾、刺繍など)
装飾性や付加価値を高めるために使われるのが、刺繍ミシンやパターン縫いミシンです。
企業ロゴ、ブランドアイコン、特殊デザインの縫製などで使われています。
特注や小ロット対応が求められる製品への差別化手段として、今後ますます注目が集まっています。
縫いの仕上がりに与える違いと現場の工夫
ミシンの種類やステッチ(縫い目)は、衣料品の機能性・デザイン性を左右します。
同じデザインでも、ミシンや糸・針のセッティング、職人の熟練度によって仕上がりは大きく異なります。
現場では、生地の厚みや伸縮性、使用目的に応じてミシンやアタッチメントを細かく変えています。
極薄素材では針穴が目立たないよう注意する一方、厚手デニムでは強力な送り機構や大型針を導入します。
このノウハウこそが、日本のアパレル製造現場が世界的に高い評価を維持する秘訣といえるでしょう。
デジタル化の波と昭和的アナログ手法が混在する現状
デジタル縫製機の導入、自動化、小ロット化、省人化など時代の要請は強まっていますが、衣料品製造現場は今なお「熟練工の手仕事」やアナログ手法が根強く残っています。
背景には、
・生地の個体差や繊細な色合わせ
・パターンごとの小ロット生産
・取引先ごとに違う仕様
などの“現場事情”があります。
完全自動化が進んでいない理由の一つは、こうした多品種小ロット・多様化する市場ニーズへの対応です。
一方でデジタル制御ミシンによる作業の均一化、生産データの管理・分析、省エネ機器の導入も徐々に進みつつあります。
今後は現場スタッフの力量と、最新設備の融合が求められています。
ミシン選びと縫製現場の未来
生産管理や調達購買の視点では、ミシンを単なる「設備」ではなく、「生産性と品質を左右する資産」と位置付けています。
耐久性や修理サポート、消耗品の入手性も選定基準です。
バイヤー(購買担当)は、製造現場の声に耳を傾け、新しい設備の試作導入や情報収集を進めています。
一方、サプライヤー(ミシンメーカー)は、現場の課題ヒアリングを通じて製品開発やサービス向上を図る必要があります。
現場からのフィードバックや実際の生産データが、今後のミシン開発や縫い技術の進化を後押しするのです。
まとめ:縫製品質は「機械×人×管理」で決まる
衣料品製造におけるミシンの選び方は、製品仕様や品質目標、量産体制、生地の特性によって大きく変わります。
優れた機械を用意するだけでなく、熟練のオペレーターによる目利きや工夫、そして効果的な生産管理が不可欠です。
昭和時代から受け継いできた伝統的手法と、最新の自動化・デジタル化設備を両立できる現場力が、日本の縫製業界の強みといえるでしょう。
製造・購買・サプライヤー、それぞれの立場で相互理解を深め、より高品質で効率的なモノづくりの未来を共に切り拓いていきましょう。
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