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設備保守が特定社員依存で停止リスクが高まる問題

目次
はじめに:設備保守と「特定社員依存」の危うさ
製造業の現場で長年働いていると、設備保守がいかに現場の命綱であるかを痛感します。
日々の生産ラインを安定して稼働させるためには、定期的な点検やトラブル時の迅速な対応が欠かせません。
ところが、多くの工場ではこの重要業務が特定のベテラン社員、時には「名人」と呼ばれるような人材に依存してしまう傾向があります。
この「特定社員依存」こそが、昨今の日本のものづくり現場にとって、最大のリスクの一つとなっているのは間違いありません。
一見すると安定して回っている製造現場も、名人の休職、転職、あるいは定年退職によって、突然生産ラインが止まってしまうリスクに直面します。
それはまさに、「属人化」という昭和時代から続く製造業のアキレス腱とも言える問題です。
この記事では、設備保守が特定社員に依存することによるリスク、それが引き起こす実際のトラブルや業界動向、そして現場の視点から見た課題解決のアプローチを詳しく解説します。
また、調達購買、生産管理、品質管理などの周辺職種とどう連携すべきかにも触れ、業界全体の進化に繋がるヒントを提示します。
設備保守の「属人化」がもたらす実態
なぜ属人化が起きるのか?
設備保守が属人化してしまう背景には、いくつかの共通要因があります。
まず、技術伝承の難しさ。
熟練者が長年の経験で得たノウハウは、マニュアルや図面だけでは全て伝えきれません。
「音や振動」「におい」といった五感を駆使した診断や、機械のちょっとした挙動の違いに気付く感覚的スキルが大きなウェイトを占めるためです。
また、現場特有の文化として、ベテラン社員が自身の技術を「自分の城」と捉える傾向も未だに強くあります。
結果として、教える側も学ぶ側も、体系的なナレッジ共有を怠ってしまいがちです。
未だに「見て盗め」「食らいつけ」といった体育会的な指導方法が通用してしまう職場も散見されます。
さらに、設備メーカーごとの独自仕様や、機種ごとに異なる保守サイクルなど、取り扱う機械設備が多様化・複雑化している現在、「人の勘」に頼らざるを得ない場面が増えていることも現実です。
属人化が招いたトラブルの実例
実際に私が工場長を務めていた大手部品メーカーでは、50代後半のベテラン保全担当者が、長期間体調を崩し休職せざるを得ない事態が発生しました。
その担当者しか把握していなかったライン設備のカスタム改造履歴や、トラブル時の暫定対処法が袋小路となり、ライン復旧に通常の3倍以上の時間を要しました。
また、サプライヤーである地場部品メーカーでは、キー設備のシーケンス改造を得意とする社員が退職した後、緊急停止発生時の初動対応ができず、完成品納期に大幅な遅延が発生。
結果、バイヤー(調達担当者)から厳しい是正要求を受けることとなりました。
このように属人化は、日常業務では見えにくい「至近爆弾」のような存在であり、一度爆発すると多大な損失を生むリスクとなります。
アナログ思考からの脱却:自動化・デジタル化の実際
デジタル化が進みにくい現場の本音
生産設備のIOT化や遠隔監視システムの導入など、デジタル化の流れは確実に進んできています。
しかし、現場では「昔ながらのやり方が一番安心」「複雑なシステムにするほど現場が混乱する」といった声も根強く残っています。
未だに紙の点検表や口頭伝承が健在の職場は珍しくありません。
また、デジタルによって全てを管理できるという「過信」も危険です。
最新のクラウド保守システムを入れたものの、現場が十分活用できず、結局ベテラン社員の“記憶”に頼る運用に逆戻りしたという例もあります。
アナログとデジタルのハイブリッドが生む最適解
今求められているのは、「完全自動化」でも「昭和の人海戦術」でもない、その中間、いわばハイブリッド型の運用です。
例えば、ベテラン社員が持つ“暗黙知”をデジタル化できる範囲で動画や音声、写真を用いて記録し、それをナレッジ共有プラットフォームで若手カテゴリ別に整理する。
現場で使い倒せるレベルでマニュアルを「見える化」し、タブレットで簡単に検索・閲覧できるといった仕組みづくりが有効です。
また、稼働データのセンサー入力や遠隔監視、AIによる異常検知は、「人の勘」を補助する目的で導入する。
最終判断は人間が行い、その記録をまたシステムにフィードバックすることが推奨されます。
属人化脱却のカギ:現場、調達、サプライヤーを結ぶ連携術
現場主導のナレッジマネジメント
属人化を解消するためには、現場社員一人ひとりの「自分事化」が重要です。
管理職や現場リーダーは、定期的な技術勉強会やOJTを実施し、ベテランの成功体験・失敗体験を若手と共有する場を計画的に設けるべきです。
単なるマニュアル作成だけでなく、現実のトラブル事例や仮想事例を基にした実践的なナレッジ共有が鍵となります。
また、若手社員が実際に機械に触り、仮想故障を設定した上で自ら点検・修理にチャレンジするといったトレーニングも効果的です。
その経験の蓄積が、“現場で使える知恵”として全員に根付くからです。
調達購買と連携した「標準化」「共通化」の推進
調達購買部門との連携も属人化対策では非常に重要なポイントです。
たとえば設備の新規導入や更新時には、「誰がやってもメンテナンスしやすい構造」「市販の汎用部品で極力対応できる仕様」といった方向性で調達仕様を詰めなければなりません。
サプライヤーに対しても、「メンテナンスの標準化・共通化」「図面やパーツリスト、エラーコード解説などメンテツールの明示的な納入」を要求することが、リスク低減に直結します。
設備メーカー各社との情報交換会を開催し、現場の課題を直接伝えることも属人化脱却には有效です。
サプライヤーとしてバイヤー思考を知る
サプライヤーの立場では自社の設備保守体制が、バイヤー(顧客の調達担当者)からどのような目線で評価されるかを理解することも重要です。
「納入品のトラブルで工場が2日止まる」時、問われるのはスピード対応力と誰でも修理できる“仕組み”です。
これを可能にするのは、結局ナレッジの共有と属人化の回避です。
バイヤーが安心できるサプライヤー評価基準の一つに、「保守技術面の標準化・ドキュメント力」が加わる時代。
いくら安価な部品を供給できても、ライン停止リスクが高ければ総コストは跳ね上がる。
「仕組みで品質を安定させている」アピールが、今後はますます重要となるでしょう。
今後の製造現場の進化と、求められる人材像
これからの製造現場では、設備保守において「技術×IT×マネジメント力」の三位一体の人材育成が急務です。
これまでのように「現場一筋」「IT専業」「管理職オンリー」といった分業を突き詰めるのではなく、現場に強く、ITにも通じ、かつ人と知識をつなげるファシリテート力を持つ人材が求められています。
工場装置のデジタルツイン化や、AIによるトラブル予兆管理技術も日々進化しています。
これらを活用しながら、現場オペレーターの働き方そのものを進化させる中心人物となることが、今後のキャリアアップのカギとなるはずです。
まとめ:製造業の「真の競争力」は、現場から生まれる
属人化が生む設備停止リスクは、決して対岸の火事ではありません。
むしろ「すぐそこにある危機」であり、現場の“アナログな知恵”と“デジタルな仕組み”の融合こそが、日本のものづくりを守る真の競争力になります。
現場のベテランが持つ知恵を如何にして体系化し、現場全体の知的財産として定着させるか。
調達、品質、サプライヤーと連携し、誰もが「自分事」として保守体制を高めていくこと。
それこそが、令和時代の製造業にとっての突破口であり、“昭和の呪縛”から脱却する唯一の道です。
あらゆる現場、職種、企業で、いまこそ一歩踏み出すべき時です。
現場目線の知見と新しい発想を掛け合わせ、攻めの製造業を一緒に作っていきましょう。
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