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人手不足対策の相談で必ず噛み合わなくなる経営と現場の視点

目次
はじめに:人手不足は製造業の「永遠の課題」
近年、製造業における人手不足は深刻さを増しています。
高度経済成長期を支えた昭和モデルの働き方が通用しなくなりつつある一方で、現場では依然としてオペレーションの多くを熟練工の手作業に頼りがちです。
自動化やデジタル化が叫ばれる現代においても、抜本的な解決に至らない現場が多くあります。
その背景には「経営」と「現場」での視点の大きなギャップが存在します。
人手不足対策をめぐる経営と現場のすれ違い。
この問題を掘り下げ、両者が協働して持続可能な解決策を見出すヒントを、現場経験を元に解説します。
人手不足の理由は「昭和的アナログ文化」にあり
属人化・丸投げ・俺の背中を見て学べ文化
多くの工場には、長年現場を支えたベテラン社員がいます。
彼らの知見やノウハウは間違いなく貴重ですが、その多くは「暗黙知」として共有されていません。
仕事はベテランが「見守る」、新人は「見て覚える」といった昭和的な文化が根強く残っているのが現実です。
この状況が、若手や転職者にとって障壁となり、生産性低下や人材流出につながっています。
時代に追いつかないアナログ運用
生産計画の作成や進捗管理、調達購買の発注業務など、多くのプロセスで未だに紙や手書き帳票が多用されています。
ITシステムの導入や自動化の提案は経営層からなされても、現場では「前例がない」「システム変更にリスクがある」と反発も根強いです。
この保守的な姿勢が、現場における人手不足の解消をさらに困難にしています。
経営層が期待する「AI・自動化」と現場の現実
経営トップは「省人化」を至上命題とするが
少子高齢化社会が進む中で、経営層にとって人手不足対策は喫緊の経営課題です。
多くの企業がAIやIoT、自動化設備などの導入を検討し、社内外での「働き方改革」も盛んです。
経営層の思いは「できるだけ人に頼らず、効率的で安定した生産体制を実現したい」というものでしょう。
現場は「今すぐには回せない」現実に直面
現場担当者の本音は異なります。
日々の生産量を確保しながら、新人の育成や業務改善、新システムの導入に人員や時間を割く余裕がありません。
また、新たな自動機やITツールも実際にはトラブル対応が増えたり、習熟するまでの「負担増」の時間が必要です。
現場としては「自動化やAIで本当に人手不足が解消できるのか」という半信半疑の気持ちが根強く残っています。
「噛み合わない」相談のよくあるパターンと本質
パターン1:「機械を入れれば解決できる」 vs 「機械を入れても動かす人がいない」
経営層が「人手不足なら機械化を」と考え、投資判断を進める一方、現場では「運用を理解する人材やメンテナンスする人材が不足している」「導入までの教育・移行コストが膨大」といった不安が出てきます。
特に中小企業や下請けメーカーでは、1台の現場のキーマンの退職が致命的なリスクとなることも多いです。
パターン2:「マニュアル化・標準化で新人でも即戦力に」 vs 「現場独自のノウハウは簡単にまとめられない」
多能工化やマニュアル整備、OJT強化は重要ですが、現場の職人技を短い期間で「誰でもできる」状態にするのは容易ではありません。
特に日本の製造現場では「目で見て覚える」独特の技能伝承文化が、標準化や形式知化の壁になりやすいという現状があります。
パターン3:「外部から人を入れて多様化を」 vs 「熟練工どうしのコミュニティに溶け込めない」
派遣社員や外国人実習生の活用は、物理的な人手不足対策として増加しています。
しかし、職人気質の強い現場では「外から来た人」が職場文化になじみきれずに定着率が上がらず、計画倒れになる事例も見られます。
現場目線の人手不足対策とは?
業務棚卸しと「価値ある仕事」への集中
まず、現場で本当に「人でしかできない業務」と「代替可能な業務」を棚卸しすることが大切です。
工数分析により業務の洗い出しを行い、手順や作業ごとに自動化・省力化できる余地を探ります。
また、熟練工が担当する業務については、標準化が難しい場合でも動画や写真による記録、作業工程の可視化などから始めることが有効です。
「多能工化」は強要でなく、適材適所の育成を
一人当たりの業務範囲を拡げる「多能工化」は人材不足には有効ですが、誰にでも同じ負担を強いるやり方は逆効果です。
個人の適性や希望をふまえ、段階的かつ小単位でのスキル拡張が成功の秘訣です。
人事考課や教育制度と連動し、現場リーダーと連携して「できるところから」始めるのが最も現実的です。
デジタル人材の育成と融合型運用
これから必要なのは、現場経験とITリテラシーを合わせ持つ「融合人材」の育成です。
たとえば、生産管理や購買の担当者がIoTやデータ分析に詳しくなるだけで業務改善の余地が大きく広がります。
既存の現場社員と、外部から来たデジタル人材が相互に交流し、ノウハウとテクノロジーを掛け合わせ「現場課題を自分ごと化」できる環境整備がポイントとなります。
経営層が現場と本音で話し合うためには
現場リーダーを「経営の翻訳者」にする
部長や工場長クラスが、経営者の思いを咀嚼し、現場目線の言葉で咀嚼して伝える「翻訳力」が今後ますます重要です。
また、現場の意見を「経営への提案」として発信できる力も大切です。
この「伴走者」的役割を果たせるマネージャーの存在が、隙間を埋める架け橋となります。
PDCAでなく「OODAループ」で試す文化を
計画と実行を繰り返すPDCAサイクルは大切ですが、人手不足問題のように先が読めない課題では機動力重視の「OODAループ」(観察=Observe、状況判断=Orient、意思決定=Decide、行動=Act)が機能します。
まず現場で試し、すぐにフィードバックしながら変えていく柔軟性が必要です。
トップの意思に「現場の実感」を組み込み、失敗を責めない文化づくりも大切です。
バイヤー/サプライヤーの立場から見える視点
バイヤーが語る「人手不足」は自社だけの問題ではない
調達や購買の担当者として、取引先の人手不足も自社の納期・品質・価格に直結するため、現場感覚に基づく状況把握が重要です。
「今月は予定数量納品できない」「いつもと同じ品質維持が難しい」といった課題は、サプライヤー側でも必死に現場が踏ん張っている証拠です。
バイヤー目線でも「サプライヤーの現場」に寄り添い、課題解決に伴走する姿勢が信頼の礎となります。
サプライヤーとしてバイヤーの「本音」を理解する
バイヤーからの要望(価格・納期・品質)は厳しくなる一方ですが、その背景には「自社でも人手不足対応のストレスが蓄積している」実情が多々あります。
サプライヤーとしては、バイヤー発信の現場課題や、人手不足で想定外のトラブル・変化が起きた場合でも「正直な情報共有」「納期や品質のリスク早期報告」が望まれています。
誠実なコミュニケーションは、調達先の選定や長期取引にも大きく影響します。
まとめ:視点の「すり合わせ」が未来をひらく
人手不足対策において最も大切なのは、「経営」対「現場」のどちらか一方の論理やイシューに固執しないことです。
理想を語る経営、現状を知る現場。
それぞれの「現実」を深く理解し、経験と新技術の融合で一歩一歩、最適解を模索していくプロセスが肝要です。
これからの製造業は「人手不足との持久戦」が続きます。
現場に根付いた文化と、経営からもたらされる変革の波。
このふたつのアイデアと情熱が交わったとき、初めて持続可能な成長が実現できます。
現場を知るプロフェッショナルとして、今後も実践的な知」「共創による課題解決」を発信し続けていきます。
皆様もぜひ自社・自職場のリアル課題に照らし合わせ、ご意見をシェアいただけますと幸いです。