- お役立ち記事
- 在庫増を指示する管理者が物流負荷を理解していない現象
在庫増を指示する管理者が物流負荷を理解していない現象

目次
はじめに ― なぜ「在庫増指示」が現場の物流負荷を引き起こすのか
メーカー現場に身を置くと、「とにかく在庫を増やせ」という指示を、上層部や管理者から受けることがあります。
この指示は一見、欠品トラブルの抑制や顧客満足度の向上を目的として正当化されがちです。
しかし、現場を深く知る方なら肌感覚で理解している通り、単純な在庫増加は物流負荷の増大に直結し、思わぬ管理コストや諸問題をも招きます。
まだ昭和時代の「大量生産・大量在庫」の成功体験から抜け出せていない業界では、こうした本質的な課題への“気付き”が不足しています。
本記事では、在庫増加の現場への影響をプロの目線で紐解き、サプライヤー、バイヤー、そしてメーカー関係者すべてが押さえておくべき本質とその対応策について深掘りします。
よくある「在庫増やせ」指示の背景
欠品トラブル恐怖と顧客満足プレッシャー
メーカー現場で在庫増が叫ばれる主な理由の一つが、納期遅延や欠品への恐怖です。
「お客様からクレームを受けたくない」「生産ラインを止めてはならない」といった心理が働きます。
こうした心情は、日本の“お客様第一主義”の文化が根強く残る背景が大きいです。
昭和型マインドの残存
バブル期から続く「持っていれば安心」「在庫で勝負」という考え方の名残も払拭しきれていません。
管理層が現場から離れて久しい場合、こうした過去の成功体験が指示の背景となっていることをよく目にします。
KPI・評価制度と在庫指示
多くの組織では、納期達成率、販売機会損失ゼロ、緊急対応件数など定量的目標が管理指標となっています。
これらのKPIが、「在庫増やせば丸く収まる」と短絡的な指示につながっている現状も無視できません。
在庫増加が引き起こす物流負荷とは
物理的スペースの逼迫
在庫が増えるということは、保管するスペースが必ず必要になります。
既存の倉庫や現場は、設計段階で“適正”な在庫量を想定しています。
過剰在庫によりパレット・ラックの空きがなくなり、結果として一時置きや仮置き、場合によっては床置きなど、作業効率を大きく損なう事態に陥ります。
ピッキング・現場作業量の増加
在庫が多いほどピッキングや出庫の工数は増加します。
また、間違った在庫配置や仮置きが増えると、必要な部材や製品を探す「探し物時間」が激増し、人的無駄とミスの原因となります。
実際、「出庫に倍の時間が掛かるようになった」「取り違いで誤出荷が発生」などの声は現場から多数聞こえてきます。
棚卸・管理コストの上昇
在庫が多いほど、棚卸の手間は大幅に増大します。
照合作業や現品確認の手間、帳簿と物品の突合作業に割かれる労働時間はあなどれません。
未経験者ほどこの“隠れたムダ”に無頓着ですが、現場の疲弊感は確実に積み重なります。
品質劣化、デッドストックリスク
適切なサイクルで動かない在庫は、“死蔵”在庫や経年劣化リスクを生みます。
電子部品に代表されるように、保管期間が延びることで自然劣化を起こす部材も多く、最悪の場合、廃棄や追加検査などのコストを発生させます。
なぜ管理層は物流負荷に無頓着なのか
現場との“感覚乖離”
製造業の多くでは、管理層が現場を離れて久しく、現場感覚を失っている例が目立ちます。
机上の在庫データだけでは、「増やせば安心」の名残に陥りやすく、実作業の変化や負荷増に気付くことができません。
物流部門と調達・生産管理部門の分断
部門間の壁が厚い場合、物流部門の悲鳴が他部署に届きづらい構造的問題もあります。
「とにかく物を揃えればOK」といった生産部門と、「本当に捌けるのか」と頭を抱える物流部門、それぞれのKPIや課題が上手く融合していないケースです。
“在庫=資産”という誤解
在庫は財務上、短絡的には“資産”として計上されます。
ですが市場変化や在庫劣化リスクを加味すると、「流動性の低い資産=将来負債」として認識すべきものです。
この認識甘さも、在庫増加指示を助長しています。
バイヤー・サプライヤーが押さえるべき本質とは
総合的コスト意識の浸透
サプライヤーから見れば、「早めに納品して保管してくれるメーカーは助かる」と思いがちです。
ですが、そのツケは製造・物流現場に跳ね返ります。
バイヤーもサプライヤーも、部品単価だけでなく、“物流コスト”と“現場負荷”を価格に織り込む相互理解が肝要です。
在庫レス&Just In Timeの理想と現実
トヨタ生産方式などに学ぶ“在庫レス”や“ジャストインタイム”は今なお理想です。
しかし、緊急事態や自然災害時には在庫の“セーフティネット”も重要です。
現実的には「安全在庫の最適化」と「緊急時対応力の両立」が求められます。
机上論ではなく、リアルな現場リスクを織り込んだ在庫戦略が真のプロの視点です。
サプライチェーン全体最適化の眼差し
単一企業の都合で在庫を抱えるのではなく、サプライチェーン全体での“見える化”や“共通在庫情報の共有”が急務です。
IT技術は進化しても、FAX・電話・紙の帳票が主流の業界では、ここが大きな足枷となっています。
まずは小さな可視化・連携の一歩を、現場主導で着実に積み重ねていくべきです。
現場から始める在庫適正化・物流負荷軽減の具体策
現場主導の“定期物流勉強会”の実施
物流部門とバイヤー、調達・生産部門の現場担当が、定期的に集まり課題共有・現物確認・意見交換を実施します。
「この指示の結果、現場でこうなっている」という実話共有が、最も有効な啓発策となります。
物流KPIの“見える化”と経営層への報告
物流負荷を具体的数値(ピッキング工数、出荷ミス件数、棚卸時間など)で可視化し、管理層と問題意識を共有します。
単なる社内フォーマットでなく、写真や動画を用いた“現場のリアル”も取り入れ、机上判断に一石を投じましょう。
IT活用による“在庫場所・動き”の見える化
WMS(倉庫管理システム)、バーコードやRFIDによる在庫管理導入で、現場の「探し物時間」や「誤出庫」を大幅に削減できます。
難しく感じるIT導入も、小規模スタートで現場の熱意を起点とするのがポイントです。
“正しい安全在庫基準”の再構築
これまでの“慣例”や“過去最大使用量”ではなく、需要変動データを元にした安全在庫基準の見直しを実践しましょう。
急な指示や外的要因にも耐えうる基準設計こそが、未来志向の現場力となります。
まとめ ― 変わる現場、変わらなければならない意識
在庫増を安易に指示する管理層が物流負荷や現場の実情を理解していない現象は、昭和型アナログ業界の“現代病”とすら言えます。
サプライチェーンが複雑化し、製造現場に今までにない速さの変化・混乱が求められている現代、バイヤーもサプライヤーも「物流負荷=競争力の源泉」という認識を持つべきです。
机上の理屈・過去の成功体験から一歩踏み出し、現場主導の改善サイクルこそが、真の最適化と強靭なものづくり現場を生む原点です。
小さな改善と本質を語り合うコミュニケーションから始めましょう。
これからの時代、現場の声に真摯に耳を傾け、次の100年につながる製造業の現場を、一緒に築いていきましょう。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。