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コンプレッサーで使うケーブルグランド部材の製法と密閉性問題

目次
はじめに:ケーブルグランドの重要性を現場目線で考える
コンプレッサーは多くの製造業で不可欠な設備です。
中でも、電気系の配線を外部から機器内部に導入する「ケーブルグランド」の性能は、安定した運用や装置の長寿命化に直結しています。
筆者は20年以上現場で現物と格闘し、時代遅れのアナログ現場から先進的な自動化工場までさまざまな製造現場を見てきました。
その経験から言えるのは、「ケーブルグランド部材の選定と密閉性こそが設備トラブル削減とコスト削減の分岐点である」ということです。
この記事では、ケーブルグランドの製法や密閉性の問題について、現場目線で掘り下げ、バイヤーやメーカーが見落としがちなリスクや選定ポイントを具体的に解説します。
ケーブルグランドとは?現場での役割と課題
コンプレッサーの要「ケーブルグランド」
ケーブルグランドは、電源や信号ケーブルをコンプレッサーや制御盤に取り込む際に使用される防水・防塵パーツです。
装置内部の精密機構や電子回路を水やほこり、油侵入から守る役割があります。
工場全体の停止や高額なトラブルの大部分は、意外にもこのような小さな部材の不備から発生することも少なくありません。
なぜ「密閉性」が現場で問題になるのか
近年、工場のオイルミスト・水分対策が厳しくなりました。
しかし、バイヤーや設計者が密閉性の規格値(IP規格など)だけを見て部材を選定し、現場で「カタログスペック通りに使えない」「経年劣化でゆるみやすい」といった問題が多発しています。
昭和時代のような「適当なグランドを付けておけばOK」という時代は終わりました。
現場では「本当に水・油を通さないのか?」が試されます。
選び方を誤るとケーブル周辺から漏洩し、重大な機械停止や事故に繋がるのです。
ケーブルグランドの主な製法と特性
1. 樹脂成形タイプ(プラスチック系)
樹脂(PA、PP、ナイロンなど)で成形されるグランド部材は、安価で加工しやすく、軽量という特徴があります。
曲面になじみやすく、コンプレッサーの小型・デスク型機種などによく使われます。
しかし紫外線・高温・油分による経年劣化や、締め付け部の「バカ穴化」などが起こりやすい点も現場では見逃せません。
設置から数年後、油で膨潤したケーブルグランドから油滲みや水侵入が発生し、コントロールユニットが故障する事例を多く見てきました。
2. 金属削り出しタイプ(真鍮、ステンレス)
金属削り出しのグランド部材は、耐久性と強度で樹脂製に優ります。
特に、腐食環境や高温領域での採用が増えています。
現場レベルでは異物混入や外的衝撃への耐性も高く、複雑な圧力環境でも安定して密閉性能を維持します。
しかし、コスト面と重量、フレキシブル性の劣位や、アース性能不全などの「思わぬ落とし穴」も。
また、締めすぎによるケーブル被膜損傷や、職人の「手締め加減」によるばらつきにも注意が必要です。
3. ハイブリッド型(樹脂+金属)
近年増加しているのが、金属製ボディに樹脂シールを組み合わせたハイブリッド型ケーブルグランドです。
双方のメリットを活かし、軽量・高耐久・高密閉を実現しています。
ただし、部品点数が増えた分、組立ミスや現場での分解・再利用時のシールロスなど、人為的なエラーのリスクにも注意が必要です。
サプライヤーは部材単体より「現場の組付けやすさ」「保守の簡便性」にまで配慮することが、差別化のカギです。
現場で生きる「密閉性」を高める工夫と落とし穴
IP規格(国際保護等級)の「落とし穴」
バイヤーや設計担当者がよく見る数値に「IP68」や「IP54」などの規格値があります。
しかし、これは実験室レベルの「新品・正しい施工」前提の値です。
現場では、接地面の傷や鉄板変形、経年劣化、油分などさまざまなマイナス要素が加わります。
実際の密閉性能はカタログ値から大きく低減します。
大切なのは、IP値の比較だけでなく「現場での再現性」や「簡単に正しい施工ができるか?」です。
締め付けトルク管理とメンテナンス現場の実情
グランドパーツは、適切なトルクで締めることで初めて最高性能を発揮します。
しかし、現場作業では「手締め」「インパクト締め」など職人の感覚任せになりがちです。
とくに量産ラインの現場や、電気業者の応援作業ではこの「トルク管理」が徹底できていない場合が多いものです。
筆者の経験では、据付時の作業ミス(増し締め不足やゴムパッキンの脱落)によるトラブルがあとを絶ちません。
部品選定からメンテナンスマニュアルに至るまで「締めつけやすさ」「メンテしやすさ」を評価基準に入れるべきです。
新旧製法・安価品の落とし穴
近年はアジア製などの安価な汎用グランド部材の流通が拡大しています。
安い分、寸法バラツキや樹脂・ゴムの材質管理が甘い製品も見受けられます。
「とりあえずコスト最優先で…」と発注した案件で、1~2年後のトラブルが多発し、
「安物買いの銭失い」、「故障頻度と修理コスト増」で結局損をする現場も少なくありません。
バイヤーとしては、確かなサプライヤー選定、ロット間品質バラツキの定期的なチェックも組み込むべきです。
昭和から令和までのケーブルグランド進化史と業界動向
アナログ現場の伝統と今なお根強い慣習
いまだに「職人の勘で締めれば大丈夫」「ケーブルの太ささえ合っていれば良い」という現場慣習が根強いのが日本のアナログ製造業のリアルです。
また、装置メーカーごとの「独自ルール」「独特サイズ」が多いため、バイヤーもサプライヤーも「現場対応力」「図面解読・現地対応」が重要な評価ポイントとなっています。
DX化とグローバル化の波
一方で、DX推進・スマートファクトリー化が急速に進む現代では、これまでの慣習ベースでは太刀打ちできない時代が到来しています。
グローバル仕様のIEC・UL規格対応や、データによるトレーサビリティ管理、現場画像解析による自動監視技術なども登場しつつあります。
ケーブルグランドも、単なる「部品」から「重要な機能パーツ」へと進化が求められています。
バイヤー・サプライヤーが押さえるべき選定・調達の新視点
「現場目線+多職種連携」での選定が不可欠
バイヤーや設計者は、単に規格値や価格比較、納期の短さだけで判断せず、現場作業者・保守担当者まで交えて
「使いやすさ」「施工しやすさ」「トラブル時の復旧しやすさ」を総合評価することが重要です。
サプライヤー側も、現場同行や実体験に基づいた提案、社内テスト結果のフィードバックを提供し、現場視点での信頼を勝ち取ることが差別化のカギです。
新技術対応:シール剤、コーティング、自己修復型材料の提案
今後は、グランド部材自体の進化(ナノコーティング・自己修復性シール・AI検知センサ付きグランドなど)や、
即席補修資材(現場で塗布できるシール剤など)も選択肢に入れるべきです。
バイヤーも「標準部品」に加えて、トラブル時の即応アイテム提案ができるよう知識をアップデートしてください。
まとめ:製造現場が求めるのは現場適応型の「最適解」
コンプレッサーで使うケーブルグランド部材は、単なるパーツ選びの問題ではありません。
密閉性というカタログ値の裏側、現場での施工・保守の現実、そしてバイヤーとサプライヤー双方の現場感覚と問題解決力が、工場の生産性・効率性・安全性を大きく左右します。
昭和から続く現場目線・暗黙知を活かしながら、令和の新技術も積極的に取り入れ、進化する現場に迅速に適応していくことが競争力につながります。
バイヤーや現場技術者、サプライヤーが「固定観念」に縛られず、ラテラルシンキング(水平思考)でケーブルグランド部材の最適化に挑戦してください。
それが、日本の製造業全体を次のステージに押し上げる一歩となるはずです。
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