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Web広告と展示会施策が分断される製造業

目次
Web広告と展示会施策が分断される製造業の現場
製造業のマーケティング活動は、長らく伝統的な手法とデジタル化の狭間で揺れ動いています。
特に、Web広告と展示会施策の分断は、現場で実務を担う私たちにとっても避けて通れない大きな課題です。
この記事では、私の20年以上の現場経験をもとに、なぜこの分断が生まれ、どんな課題があるのか、そしてその壁をどのように乗り越えていくべきかを、現場のリアルな視点から深堀りしていきます。
製造業マーケティングの実態:昭和からの遺産と現状のギャップ
展示会という「現場の名刺交換文化」
製造業において展示会は今なお「商談の場」として重視されています。
実際、図面を手渡し、部品のサンプルを相手に見せながら、仕様や課題について直接対話することで、一晩で信頼関係を築くことも珍しくありません。
この「現場で顔を合わせる」文化は、購買担当者やバイヤーの行動様式、あるいはサプライヤーが持つ情報感度とも密接に結びついています。
たとえば、ある昭和から続く部品メーカーでは、「名刺交換したことのない会社とは協業しない」という不文律すら残っています。
この伝統的なネットワーキングと、最新のWeb広告施策がどう噛み合うのか――ここに大きなヒントが潜んでいます。
Web広告施策の導入の壁:なぜ抵抗感が根強いのか
ここ数年でBtoB製造業も「リード獲得」や「オンライン展示会」に力を入れ始めました。
しかし、現場ではWeb広告=新規顧客開拓の補助ツールという程度の認識に留まっていることがほとんどです。
大きな理由は二つあります。
一つは、「モノづくりの複雑さや図面・工法の強みがデジタルだけでは伝わらない」という感覚です。
もう一つは、「ウェブ経由のリードは意思決定権者に届きにくく、受注までの期間が長い」という実体験に根差しています。
このため、営業部門とマーケティング部門、はたまた生産や品質管理の現場まで、Web広告と展示会は分断されたまま、各々で施策が進められてしまうのです。
現場担当者に起きている「温度差」と「もどかしさ」
受発注現場のジレンマ
現場で調達や生産管理を担う方々は、既存サプライヤーとの強い信頼関係がある一方、次世代の新技術やコスト競争力の高いパートナーを探し続けなければなりません。
工場長や生産責任者は、「展示会でピンとくるメーカーが見つかれば話を聞く」という反面、社内ポータルやWeb広告経由で紹介されたサプライヤーに対して警戒心を持つケースが多く見受けられます。
また、Webからの問い合わせは「担当者が忙しいので既存業務で精一杯」により、適切なフォローができない・案件化しにくいといった現場のもどかしさも積み重なっています。
バイヤー側の「合理性」とサプライヤー側の「訴求方法」の壁
これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーとして営業を掛けたい方にとっても、この分断の本質を知ることは非常に重要です。
バイヤーは工場や現場の安定稼働を最優先しますので、Web広告で得られる匿名性やスピード感より、過去の取引実績や対面での信頼の積み重ねを優先しがちです。
一方、サプライヤー側は「ウチの技術をもっと見てほしい」「ウェブ経由で知ってもらえるきっかけを増やしたい」と考えがちですが、品目選定・組織決裁の流れや中長期的なパートナーシップの考え方に十分な理解と訴求ができていない場合がよくあります。
なぜWeb広告と展示会施策が分断されたままなのか
ITリテラシーとKPIのミスマッチ
昭和的な現場主義が根付く製造業では、経営層や現場リーダーのITリテラシーの差が著しい場面も多くあります。
マーケティング部門がWeb広告のリード数や流入数といったKPI管理を強化しようとしても、製品サンプルや部品の物性データなど「現物」を基準とした現場管理とは、そもそも計測・評価軸が噛み合いません。
そのため、Web広告で興味を持った見込み顧客が、実際の展示会で現場担当者に「話は聞いたが事情がよくわからない」と門前払いされてしまう。
または、「どの部門が最初の問い合わせに対応すべきかわからず、結果的に機会損失となる」という事例は後を絶ちません。
データ活用の意識の壁:「感覚」と「数値」のすれ違い
製造業現場には、「数値管理・データ管理が命」といいながらも、意思決定は感覚や経験値で行う文化が根強く残っています。
Web広告側でどれだけ詳細なターゲティングや流入分析をしても、「結局、どのファーストコンタクト(展示会・商談・現場見学など)が最も優れているのか」という問いへの答えが、属人的なものに留まっているケースが大半です。
一方、デジタルマーケ担当は、展示会の熱気や現場担当者の危機感・モチベーションの高さを数値やスコアで管理できないことにも痺れを切らしがちです。
現場で生きる統合マーケティングの突破口
ラテラルシンキングで考える「新たな接点」
この分断の打破には、従来の縦割りを越えたラテラルシンキングが必要です。
例えば、Web広告で関心を持ったリードに対し、
・「現場オンライン見学会」を同時案内し、実際の工場長や技術者の生の声を届ける
・展示会で得た名刺データを、CRMと連携しWeb広告やメールマーケで“継続フォロー”する
・Web広告には「業界の現場あるある」や、リアルな失敗事例、改善ストーリーを訴求して信頼回復型のブランディングを図る
など、多角的な接点創出が現実的です。
私は工場長時代、「リードになりきれなかった案件」からも、現場課題をヒアリングすることで、高額案件につなげた経験が何度となくあります。
デジタルとフィジカルを複合的に組み合わせる発想が、最も強力に働く瞬間です。
製造業らしい信頼の作り方:見える化と共感
現場担当者、バイヤー、営業パーソン、サプライヤー、それぞれが求めているのは「安心・信頼」に他なりません。
そのためには、展示会では「Webで得た知見やピックアップ案件」を必ず会話ネタにする、Web広告では「現場リーダーの声」を積極的に発信する――など、いい意味での“見える化”と“共感”が必要です。
また、取引先へのメールや案内一つ取っても、単なる製品スペックの紹介ではなく、
「こういった失敗が起きやすい」「ここに悩んでいる現場が増えている」など
製造現場の感情や共通体験を言語化して添えることで、既存顧客との関係維持・クロスセルにも効果的に働きます。
これからの製造業に必要な新しい「現場接点」戦略
良質なリード育成=多層的な接点から生まれる本質的信頼
製造業の現場における受発注活動は、情報の“質”と“信頼”が何より重視されます。
ですから、Web広告の流入から展示会までを、「ただ数を追うだけ」で分断的に評価するのではなく、
・問い合わせから展示会までのタッチポイントを可視化し
・各部門担当者ごとの“声”や“実際のやり取り”を社内知見として蓄積し
・マーケティング/営業/技術各部門で「本音の事例共有」を徹底する
といった、高解像度な“接点の積み重ね”こそが顧客からの信頼やリピート購入につながっていきます。
分断を超えるために現場が今すぐやるべき三つのアクション
1. 展示会で得たリアルな声やニーズを、必ずWebマーケ部門やインサイドセールスと共有する。
2. Web広告やSNS配信後も、一定期間は「現場担当による突破口づくり」を意識し、会話やフォローを人の温度感で実施する。
3. 問い合わせ対応や案件管理を単一部門任せにせず、多部門横断のチーム(タスクフォース型)でKPIではなく「質的な成果」も評価する。
私の経験上、これらを実践するだけでも、驚くほど現場とデジタルの連携スピードが変わります。
まとめ:分断を補うのは「現場主導の共創」
Web広告と展示会施策の分断は、決して製造業だけの問題ではありません。
しかし、昭和の現場感覚や信頼ネットワークが今も息づくからこそ、“組織を横断する共創”が潜在力となります。
自分の現場や実体験に根ざした提案や、小さな「改善活動」を積み重ね、部署や階層の枠を軽やかに乗り越えていく――。
それこそが、これからの製造業マーケティングにおける、「分断なき未来」を創り出す最短ルートです。
バイヤーもサプライヤーも、そして現場担当者も。
「現場のリアル」と「デジタル最前線」をつなぎ合わせ、製造業にしかできない強い価値を、一緒に育てていきましょう。